第3話「自分の死後の学園見学」



 Side 綺羅 ユキナ


 異星人の二人が去っていき、代わりの者が学園を案内している最中。

 私はセフィア学園長に詰め寄られていた。


 内容は話題で出た男子学生のイジメと謀殺云々の件だ。

 

「まさかあの話題が出てくるとは思いもよりませんでした」


「え、ええ……」


「エクスアーマーの養成学園であるアークも所詮は十代半ばの少年少女の集まりです。そう言う問題の一つや二つはありますが……想像を遥かに超える最悪な形で耳に触れましたね」


「それは――」


 私には、その言葉は死刑宣告のようにも思えた。


「関わった生徒はアナタの受け持ちの1ーA組。既にしかるべき処罰は済んでいる点を理解してくれるといいのですが……」


「もうしわけ、ありません」


「アナタが謝るのは私ではありません。死んだ愛坂君にですよ」   


 



 Side ディノ・ゼラヴィア



 教師や生徒たちは落ち着きがない様子で此方をチラ見している。


 特に生徒達に関しては思うところはあるが、半ば復讐は達成されているのでどうこう言うつもりはない。


 案内している教師は何かもう緊張しぱなっしで逆に可哀相に思えて来た。


 下手すりゃ外交問題通り越して人類存亡の危機だもんな。そうもなるわ。


 そう言えば見知った顔。


 綺羅 セイジとかその取り巻きの顔は見えないな――


「失礼、エクスアーマーには専用機があると聞いていたのですが――」


「ああ、それはですね――ちょっと色々とありまして――専用機を持っている方々は重い処分を受けているんです」


「重い処分? 男性適正者の死亡絡みの件で、ですか?」


「ご、ご存じなんですか!?」   

 

 案内してくれている女性教諭が驚いた様子を見せた。

 だがこうして聞くと、俺が死んだ後にこの学園で何が起きたのか気になってしまう。

 

「よろしければお話をお伺いしても?」


「え、ええ――この学園に愛坂 ヒデト君と言う男性適正者がいたんですか、その同じ男性適正者である綺羅 セイジ君と、どうしても比較されてしまって――精神的に苦痛だけでなく、謀殺されたなんて言う噂も――真相は分からないんです」


「人の集まりである以上、そう言う事は起こるでしょう。起きてしまった以上は仕方ありませんよ」


「は、はあ……」


「それで、重い処分とは具体的にはどのような物で?」


 それがとても気になったので話を急かす様に尋ねる。


「教職員を含め、学園全体の生徒にも処分が及び、数々の功績を打ち立てた一年A組にすら重たい罰則が与えらえ、特に生徒達の模範である専用機持ちにはエクスアーマーに関する授業の参加禁止、と着用禁止令、さらに謹慎処分令が下される程です」


(確かに重たい罰則だな……)


 専用機持ちはある種の特権階級だった。

 派閥なんて物が出来上がる程に。


 それに学園戦力低下を覚悟でここまで重い仕打ちをするのは余程の覚悟が必要だっただろうに。 


 他の生徒も退学、停学処分すらあったかもしれない。

 

 それを聞いてちょっと救われた気持ちになった。


「綺羅 ユキナさんは教職員として学園に関わる事を停止。綺羅 セイジ君に関してもエクスアーマーの授業参加禁止と着用禁止、謹慎処分が与えられました。やり過ぎだと言う声もあったんですが……」


「ここは教育の場であると同時に人類の模範たる学び舎でしょう? そんな場所でくだらない理由で人が死んでるんですから厳しく叱り飛ばすのは当たり前でしょう」


「は、はあ……」


「正直この学園に関して不安な所はありましたがそれだけの覚悟を持つ学園長なら信用してもよさそうですね」


「そ、そうですか」


 と、学園長を褒めておく。

 副官のジーナが何か言いたげだったが無視しておこう。



 そんな時に学園でアラートが。



 聞き慣れた音だ。


 敵襲。


 つまり人類の天敵、ディセントが襲来したのだ。

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