第23話「愛坂 ヒデトとしての悩みと側室問題」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 私室に戻り、ゆっくりと休憩する。


 一連のゴースト作戦が上手く行ったかどうかは分からない。


 もしかしてまた違った形でやらなければならないかも知れないが――よそう、これ以上の手出しでダメならもう僕に責任の是非はないだろう。


 それよりも副官のジーナだ。


 彼女も今回の作戦の協力者として巻き込んだ。


 ジーナは「どうしてそこまでできるのですか?」と涙目になって語っていた。


「まあ悪戯みたいなもんだし、皇子だってちょっとハメ外したかったと言うか――」


「私だってあの教師みたいな事を言われたいです――あんなの見せられたら殿下の事――あの先生が羨ましいです」


「そ、そう――」


「私も皇子にあんな風な事正直されたいですし――あんな風に正直な気持ちをぶつけて回る皇子をみたら――涙が――」


「はあ――」


「もしかして皇子は愛坂 ヒデトの生まれ変わりなんじゃないかって思えるぐらいの、心に響くものを感じましたね」


(まあ本人だしね)


 僕は苦笑してごまかした。


「今回の作戦は最初はどうかと思いましたが、殿下の心を今迄以上に知れて本当に良かったです」


 ふと僕はこんな言葉を口にしていた。


「ジーナ、こんな僕でも、こんな皇子でも君は仕えてくれるかい?」


「勿論ですとも!!」


 顔を真っ赤にして涙を流しながら返事をしてくれた。

 


 Side ジーナ・ヴェルティーユ


 なぜあそこまでのお慈悲を向けられるのか。


 この方の慈悲は底なしなのか。


 そう思わざるえない今回の騒動。


 だからこそ思う。


(この方の副官になれて良かった――)


 が、同時に皇子の婚約者であるシェフィール様の頭が過ぎる。


(この方の婚約者になられたシェフィール様が羨ましい……デュノ様やシェフィール様に懇願して側室になれないものか……)


 などと考えて慌てて頭を振る。


(いかんいかん。皇子の前でなんて事を考えてるんだ私は!!)


「あの大丈夫!?」


「だだだ、大丈夫です――」


 とは言うが正直に言えば寂しい気持ちで一杯だ。


「……シェフィールに言われたんだ。側室の事について」


「ふぇ!?」


 そそそ、それはどう言うことでしょうか!?


「兄みたいに大勢の女を侍らせる事に抵抗感を持ってる事とか色々と言われたけど、何時か側室を持つんじゃないかって……」


「あの、もしかして私を側室に!? いえ、かまいませんけど――」


 あっ、言っちゃった。


「ははは、シェフィールと相談だね」


「あああ……ししし、しつれいしまひゅ!!」


 なんてことを言ったの私!!

 

 皇子とは言え年下の子供相手に――いや、それもありかも――


 じゃなくて!!


 もう何がなんだか分からないまま!!


 私は皇子の私室を出てワケも分からず駆け出してしまった。



 

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