第15話「副官の不満」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 旗艦アロンズダイトに戻り、僕の私室にて――


「何なんですか地球人と言う種族は!? 我々が下手に出ていれば――失礼にも程がある!!」


 と、副官のジーナが不満タラタラに言う。


「まあそれが普通の反応だよね」


「ディノ皇子は優しすぎます!! 寛容すぎです!! それが美徳でもあるんですけど限度があります!!」


「大丈夫。手を下さなくても勝手に自滅していくから。特にあの司令官や女性記者に関しては」


 地球ってそう言う星だかんね。

 恐いよねほんと。


「ですが――」


「まあ納得できないよね。ジーナの言う事が正しいんだろうけど」


「ならば何かしらの制裁を」


「でも信じたいんだ。人はそこまで愚かじゃないって」


「え?」


 突然の言葉に戸惑うジーナ。


「確かに今迄出会った地球の人達はそう言う悪印象が目立つ人が多かったけど、けどそう言う人達が目立つだけで良い地球人もいるんだよ」


「ですが――」


「それは理想論だと笑うかい?」


「そ、それは――」


「それとも嫌らしい言葉だけど今迄の相手の揚げ足をとって戦争仕掛けるかい?」


「そんな意地悪な事言わないけでください」


 あ、ちょっと涙目になってる。


「ごめんね――だけど、それでも自分の意見を言いたかったんだ」


「では殿下は地球人を素晴らしい種族だとお考えで?」


「ううん」


「え?」


「本質的な、根っこの部分はたぶん僕達とあまり変わらないと思うよ」


「なっ」


 そりゃ驚くよね。

 あれだけ無礼を働いてきた地球人が僕たちと変わらないと言うんだから。

 と言うかさっきから何か自分、〇ルトラマンみたいな事言ってるな。


「たぶんこれから先も愚かな人間と沢山出会う事になると思う。けどそれとは違う地球人とも出会う事もあると思うんだ」


「ユンと言う工作員が言っていた人のようにですか?」


「そうだよ」


 と返してこう続ける。


「まだまだ出会って間もないんだ。これまでの事で地球人を評価するのは早すぎるよ」

 

 とは言うが、ジーナのように不満は高まっているのは無視できない。

 どうにか出来ないもんかと思う。



 Side ジーナ・ヴェルティーユ


 ディノ皇子。


 あなたは皇帝たちと同じく慈悲深いお方だ。


 だからこそ多くの人達が付いてきた。

 

 同時にそれが不安になる。


 だからこそ私が傍で支えようとも思う。


 だけど時折それ以上の想いが私の体を駆け巡る時がある。


 皇子とそれを支えるだけでしかない副官。


 婚約者のシェフィール様には「それでいいの?」と言われた事があるが――


「あの? 大丈夫?」


「ああ、すいません。ちょっと、その――」


 心配そうに皇子から声を掛けられた。

 いけない事を考えてましたとはいえない。

 

「顔真っ赤だよ? 大丈夫?」


「だだだ、大丈夫です!」


「大丈夫じゃないでしょ……」


 ああ、心配されてしまった。

 副官として何たる失態。


「ともかく、今後について改めてじっくり話し合おう? ね?」


「ひゃ、ひゃい!?」


「ひゃいって――やっぱり疲れてるでしょ。今日はもう休みなさい」


 皇子にそう言われてしまった。 

 大人しく休むことにしよう。


  

 Side ディノ・ゼラヴィア


 婚約者のシェフィールにも言われたけど、ジーナって僕の事――


 だけど婚約者がいる手前、そんな事も出来ないし。


 でも側室とかハーレムとかOKなのがウチの帝国だし。


 ああもう、このままじゃどんどん兄さんみたいになっていくよ……


 将来どうなるのかな自分――


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