第18話「王城 シンイチ」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 王城 シンイチ。


 何者かと言うと普通の学校なら学園の、クラスの中心になり得た人物だ。

 だが出るジャンルを間違えた人間でもあり、相手が悪かった人間である。


 この学園のクラスの中心は綺羅 セイジだ。


 綺羅 ユキナと言う世界最高戦力の弟であり、ルックスもいいし能力もあるし、まるで神様に愛されているかのように数々の難事件を解決して見せたラノベ主人公でもある。


 王城 シンイチもまた彼の引き立て役だった。


 エクスアーマーの、アークの授業は当然ながら厳しい。

 命のやり取りを学ぶ場だから当然だ。


 ついていけない人間は出てくる。

 そうした落ちこぼれ達を纏め上げて派閥を作り、やがて「頑張らない俺カッコいい」、「頑張ってる連中ダサい」みたいな空気を作り出した。


 それだけならまだ良かったが今度は獲物を求めた。

 それが生前の僕だった


 具体的には嘘告白の刑とかさせられたり、綺羅 セイジの周りに群がる女たちの情報やら綺羅 セイジの弱味を探るように言われた。


 当時の僕は綺羅 セイジに恨みはあれど、そこまで腐っちゃおらず、反抗した。

 その流れでクリス達と仲良くなったのだ。


「何しに来た? 王城くんよぉ? 言っとくが今の状況下でトラブル起こせば冗談抜きでクビが飛ぶぜ?」


 クリス挑発気味に言う。


「なあに、暇してたら偶々面白い会話が聞こえてね」


 王城は言うが本当かどうかは分からない。


「まあ確かに今は暇だわな。で? 何を企んでる?」


 クリスは疑いを持っているようだ。


「今は何も」


「今はか――ここは普通の学園じゃないんだ。精々大人しくておいた方がいいぜ。特に今はな」


「そう言うお前こそどうなんだ? ゼラヴィア帝国が恐いのか?」


「そりゃ恐いさ。つかテメェディセント相手の時も似たような事言って醜態晒して大目玉食らったの忘れてんのか?」


「アレはエクスアーマーの性能が」


「普段から努力もなにもしてない、威張るだけの奴がいっちょ前に一人前気取るんじゃねえよ」


 そう言ってクリスはその場を去ろうとする。


「お、おい! 逃げるつもりか!?」


「お前なんざ相手するだけ無駄だ。特に今はな」


「んだとコラァ!?」


「はっ、化けの皮が簡単に剥がれやがった。そうやって優等生とヤンキーの顔を上手く使い分けて生きてきたんだろうな、お前は」


「ああぁ!? 舐めた口聞いてんじゃねえぞテメェ!!」


 口論がヒートアップしていく。

 それを止めたのは。


「貴方達、いい加減にしなさい!! こんなところで何をやってるの!?」


 と、通りすがりの女性教諭の一人が現れた。


「こ、これはですね――こいつが――」


「あとで監視カメラでも確認すりゃしまいだろうが」


「チッ」


 クリスの言葉に王城が舌打ちする。


「よりにもよって学園の問題児達ね――それと見学者か――貴方達、状況が分かってるの? 今は忙しいから大目に見るけど次はないわよ!」


 そう言ってその場を後にした。


「ちょっと待って! もしかして私も問題児扱い!?」

 

 ここでチャン・インリンがその事に気づいた。


「なんだお前、自覚なかったのか?」


 呆れたようにクリスが言う。


「う、煩いわね! とにかく私はここで失礼するわ――」


 そう言ってチャン・インリンが立ち去っていく。


「クソっ――覚えてろよ」


 王城 シンイチも小物の悪党みたいな捨て台詞を吐いて立ち去っていく。


「ようやく静かになったな――気分直しに溜まり場にでも行くか」


「溜まり場?」


 事態を静観していたユンが疑問をぶつける。

 

「そうだ。まあお堅い女性には向いてないかもな」


 そう言ってクリスはユンの方を見る。

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