第17話「記者会見から翌日」
Side ディノ・ゼラヴィア
「おや? 今日は綺羅 ユキナ先生はお休みで?」
今日は変装せずディノ・ゼラヴィアとして対応する。
学園来訪初日に学園を案内してくれた女性教諭が担当してくれている。
学校は緊急的ながらお休みであることを伝えてくれた。
「はい、どうも生徒たちに不安が広がっているせいで授業にならないのでほぼ自習の形になるのだとか」
(まあ記者会見が最後の最後でああなったからな)
今もブラック企業の社員のように働いているか死んだように寝ているのかのどっちかだろう。
ともかくこっち方面で一日暇になったのは事実だ。
☆
今度はユンを連れて変装し、学園内を歩き回る。
場所は死後の屋上だ。
「アイツに友人がいたとは思いもしなかったぜ」
そこには野性味が感じられる金髪の少年がいた。
綺羅 セイジとは正反対の印象の少年だ。
クリス・ヴァレンタイン。
ファミリーネームのせいで2月14日は特に不機嫌になる。
「どうも、ユリウス・ハートネットです」
「テイ〇ズの主人公みたいな名前だな」
「どうもです」
「色々と疑問があるが、今この学園に入学するのはやめといた方がいいぜ。どこもかしこも爆弾、地雷だらけだ」
「みたいですね」
変わってないな、この人はと思う。
「まあ、俺からすればこの学園の連中にはいい薬かもな。ヒデトの奴殺したのもこの学園みたいなもんだし」
「それはどう言う意味で?」
「言葉通りの意味だよ。綺羅 セイジと綺羅 ユキナが主役の学園物語。それ以外は端役、そんな感じの学園だったんだが――」
クリスは目を巨大なゼラヴィア帝国の皇子の旗艦に目をやる。
「アレが来てから見事にその舞台はぶっ壊れた。オリヴィアだっけ? 気に入らない専用機持ちの一人も何をやらかしたのか今も反省房送りだ。アイツぶっちゃけ決闘で丸くなったとか言われてたけど、ただ綺羅 セイジの奴に気に入られたかっただけだしな。他の連中も似たり寄ったりだ」
「よくご存じで」
「不良学生って奴でね。それにこの男子学生少ないからどうしても綺羅 セイジの奴とも関りが増えんのさ。愛坂は――綺羅 セイジと近い立場にいたせいで、学園内に逃げ場を求めていたのさ」
「……」
自分の事をそこまでよく見てくれていたのかと思うと目尻が熱くなるのを感じる。
「話の最中失礼――そこで立ち聞きしているのは誰ですか?」
と、ユンが物陰から出てくるように促す。
現れたのは燃えるような赤い髪の毛でツーテールヘアー(ツインテール+ロングヘア―)の気の強そうな女の子だった。
「チャン・インリンか、何しに来た? 綺羅 セイジはここにはいないぜ?」
挑発気味にクリスはインリンに言葉をぶつけた。
「私が用があるのはそっちの方よ」
と、僕の方に顔を向ける。
「アンタ何者なワケ?」
「何者とはどう言う事です?」
「オリヴィアがアンナ感じなのは前々からよ。特にセイジがいない時はね――だけどアンタにあんな振る舞いをして反省房に送りになった」
「それは誤解ですよ」
「まあそう言う事にしておくわ。何時かこうなるんじゃないかと思ってたし」
(本当はどうだか……)
心の中で僕は呆れた。
「本当にアンタ、愛坂 ヒデトの友人なの?」
「それをどう証明すればいいんですか? 正直に言えば貴方もオリヴィアと五十歩百歩の存在でしょう?」
「ムカつく事言うわね……」
「アンタはセイジの傍には相応しくないと言っておきながら、傍に置いて監視役である事を義務付けていた。他の連中にしてもそうだ。愛坂 ヒデトにとっては一年の専用機持ちの女性連中は大体そう言う連中だった」
思い出しながら言う。
「そう。そんな感じで正論を言ってはエクスアーマーの模擬戦で黙らせてきた。適正値は高いのに――」
「適正値は高くても素人でアンタらみたいな奴のせいでロクにトレーニング出来る時間もなく、更には専用機すら与えられなかった。愛坂 ヒデトは綺羅 セイジの引き立て役でしかなかったんだ」
「本当によく知ってるわね――」
インリンが悔し気に言う。
クリスは「傍からこうして聞くとあらためて最低だな」と口に出した。
「で? 用は済みましたか?」
「この学園では何者だろうと実力が全てよ。エクスアーマーで――」
インリンの話の流れを遮るようにクリスが「はあ? この話の流れで決闘なんてガキの癇癪にすぎねえよ」と遮った。
「ガキの癇癪ですって!?」
「俺から言わせりゃそうだ」
そんな矢先に――
「どいつもこいつも愛坂 ヒデト、愛坂 ヒデトと、どうしてあんな奴が好きなのかね?」と顔を出してきた。
長身で顔だけはいい。
いわゆる陽キャの王様、「王城 シンイチ」のご登場である。
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