第14話「緊急記者会見」

 Side ディノ・ゼラヴィア


 兵士たちにフェンサー級の機動兵器や戦闘機だけでなく、護衛として30m級の量産型特機級「グレイオス」(見た目悪の侵略者のメカみたいなフォルムだな)も投入しての記者会見だ。


 自分の専用機も何時でも旗艦でスタンバイしている。


 場所はアーク――学園の敷地内で行う事にした。


 昨日今日でどれだけの人間が集まるかと思ったら想定を超える規模の記者達が集まった。


 まあ地球がどうなるかどうかが分かる会見だからね。


(しかし学園のすぐ外じゃ団体同士で場外乱闘してるし――本当に大丈夫か?) 


 自分は元地球人だが、まるで今の地球の縮図を見ているとなんだかなぁと思ってしまう。


 学園の広間に設営した壇上に僕は昇る。

 早速フラッシュの嵐だ。


『本当は自己紹介からするべきなのですが、今回は結論を先に言いましょう。我々は不幸なすれ違いで戦争を仕掛けるつもりはありません』


 一瞬にして場は静寂になった。

 煩かったカメラのフラッシュも静かになる。


『では静かになったところで自己紹介を。ゼラヴィア帝国第二皇子、ディノ・ゼラヴィア。遠い宇宙から地球の調査目的で地球に来訪しました』


 そして再びフラッシュの嵐である。


『この地球に来てからの短期間の間に地球の人達の様々な面を見てきました。不幸にも宣戦布告紛いの罵声を浴びせられることもありました。我々の方でもこれを不快に思う人は少なくありません』


 安心させたいのか脅したいのかよく分らんなこれでは。

 だが事実なので伝えておく。


『ですが結論を急ぐにはまだ時期早々だと言うのが僕の判断です』


 本当は自分の故郷の星をこの手で焼け野原にするような真似はしたくないだけなのだがそれは黙っておく。。

 億が一、信じられて悪い方に利用されでもしたら厄介だし。



 そこから質問は多岐に渡った。


「軍事技術の交流については?」


『考えてはいたんですが、現段階ではとても難しいですね』


 実はと言うと軍事技術の提供についてはある程度考えていたが、あの総司令官のせいでご破算となった。


「本当に戦争にならないと言う保証は?」


『それは悪魔の証明と言う奴でしょう。そこは信じてもらうしかありませんね』


 まあ不安なんだろう。

 保証しようがないが信じてもらうしかない。

 

 そうして、記者会見は概ね順調に進んだところで事件が起きた。


 キッカケはとある女性記者の言葉だ。


「そもそも貴方達が地球に来なければこんな事にはならなかったんじゃないでしょうか?」


 会場の温度が急激に冷え込んだ気がする。

 何言ってんだこの記者は。

 

『失礼――想定外の言葉で一瞬思考が麻痺しました。確かに私もこんな厄介ごとには巻き込まれていませんでしたね』


 と、苦笑して返す。


 すると――


「ならさっさと地球から出て行ってください。地球は我々地球人の手で守ります」

 

 さっきから何なんだこの女性記者は。


「大体ご都合主義的なんですよ。もしかして本当はディセントは貴方達が作り出しての自作自演じゃないんですか?」


 この記者会見って何のためにやってるんだっけ?

 地球との全面戦争ルートを避けるためだったよな?

 一周回って笑えて来たわ。


「ちょっと何を笑っているんですか? 質問を――ちょっと何をするんですか!! 放しなさい!! これでも地球のためを思って――」


 あ、連れていかれた。

 さようなら。

 たぶん物理的に人生終わったな、あの人。

 もう二度と会う事はないでしょう。


 会場の雰囲気はまるでお通夜みたいだ。

 そりゃそうだ。

 相手方が星間戦争の回避を努力してくれているのにその努力を無駄にしてしまったのだから。 


『どうやら我々はまだ出会う時が早すぎたのかも知れませんね。ですが出会ってしまった物は仕方がありません。それにこのまま誤解されたまま立ち去りと言うのも我々の名誉に関わる問題ですので』


 ここで言葉を一旦区切り、こう続ける。


『ですが我々は聖人君子と言われる存在でもありません。我々はその気になれば地球を滅ぼせる武力があります。だけど貴方達はそれを使わせようとしてくる。僕はそれは嫌だけれども限度と言う物があります。どうかそのところを考えてください』


 と言って足早に壇上から立ち去った。



 この会談は結局、阿鼻叫喚の大パニックになってしまった。

 

 一体何のための記者会見だったのだろう?


 特にあの女性記者は世界中から非難の言葉が浴びせられて住所や親族、過去の経歴、記事についても特定されて大炎上となった。


 

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