【電子書籍化発売中】悪役令嬢、モブ目指します!〜最短ルートを突き進もうとした結果、溺愛が止まりません〜
やきいもほくほく
一章
第1話
トリニティ・フローレスはフローレス侯爵家の一人娘だった。
薄桃色の髪にミスティグレーの瞳。
小動物のような大きな瞳、白い肌、笑顔が天使のように可愛らしい少女であった。
トリニティは両親に溺愛されて、それはもう大切に大切に育てられて礼儀を弁える立派な令嬢に成長していた……はずだった。
ーーーしかし、とある王子との出会いを機に全てが変わる。
この国の第二王子であるダリル・テ・エルナンデスに出会った瞬間、トリニティはダリルに執着した。
表向きは以前と変わらず天使のように振る舞うが、裏では悪魔に取り憑かれたように豹変するのである。
可愛らしさとあざとさを武器にして、周りを巻き込みながらヒロインを孤立させて貶めていく。
ネチネチと嫌らしく追い詰めていく『悪役令嬢』それがトリニティだ。
「ダリル殿下は、絶対に渡さないんだから……!」
ダリルはこの国の王族特有のゴールドの髪にサファイアブルーの瞳。
これまた王道で上品で甘いトロトロな王子様フェイス。
俺様系の攻略対象者ではあるが、心の何処かで寂しさや虚しさ、兄に対しての劣等感を感じているのを隠している。
そんなダリルルートの攻略を面白く盛り立てていくのが、ダリルを異常なほどに愛してやまない婚約者のトリニティ・フローレスなのである。
ダリルへの執着は常軌を逸していた。
ダリルがヒロインと親しくしている姿を見たトリニティは、ヒロインを虐め倒すのだが、その方法が過激なのだ。
恐らくヒロインを本気でこの世から消すつもりだったのだろう。
その虐げっぷりはプレイヤーをドン引きさせるほどだった。
他の令嬢達を巻き込んでド派手にヒロインを攻撃していた為、簡単に悪事がバレてしまうのである。
そして、断罪一直線。
「トリニティ・フローレス……お前との婚約を破棄する」
「ダリル殿下ってば、どうされたのですかぁ? そんなに怖い顔をして」
「今まで彼女を虐げたこと、俺にバレてないとでも思っているのか?」
「ーー!?」
トリニティはダリルの背後にいるヒロインを思いきり睨みつけた。
その視線は「お前のせいだ」と訴えかけているようだった。
ヒロインは美しいプラチナブロンドのウェーブのかかった髪と鮮やかなスカイブルーの瞳を持つ、愛らしくて庇護欲を誘う『ローラ』という女の子だった。
ローラは攻略対象者の寄り添いながら心の傷を癒していく。
そんなローラを愛おしそうに見つめているダリルに気付いたトリニティは手のひらを握り込み、血が滲むほど唇を噛んだ。
自分に対するダリルの態度とローラに対する態度が全く違うことを見せつけられたトリニティは愕然とする。
「どうして……どうしてッ! そこはわたくしの場所よッ! 平民の貴女が触れていい方じゃないの!」
「……」
「お前さえ……お前さえ消えれば上手くいったのにッ!」
「それがお前の本性か、トリニティ」
「ぁ……」
「お前を軽蔑する。本当に残念だ」
「嫌……ぃゃっ! ダリル殿下、違うの! わたくしを信じて下さい!」
幼少期は俺様などではなく、実は気弱で自分に自信がなかったダリルが、ローラと出会った事をキッカケに自分を見つめ直して強く逞しくなっていく。
ダリルの心を温かく包み込み、投げやりだった彼を孤独から救い出して導いていくのだ。
「彼女に行った数々の愚行の証拠は押さえている。言い逃れはできないぞ?」
今までトリニティの味方だった令嬢と令息達は、手のひらを返してトリニティがヒロインを過激に虐げていたと証言した。
その他にもダリルに近付いただけでトリニティに追い詰められたのだと他にも被害を受けた令嬢達が声を上げる。
可愛らしい容姿を最大限に活かしてダリルに近づこうとした令嬢を潰すようにトリニティに『お願い』されていた令息達も「トリニティ様に利用された」と悲しげに訴えかける。
次々に明かされるトリニティの罪に会場は騒然としていた。
「わたくしを裏切ったのね……?」
そんな言葉にも耳を傾ける者は居ない。
トリニティは、破滅への階段を駆け上がっていく。
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