第11話
次の日からトリニティ・フローレス、九歳での婚活が始まった。
この世界に転生する前でも婚活などした事はなかったが、確実に婚約を回避する為に必要な事は、いち早くダリル以外の婚約者を作る事。
そして彼と婚約しない事である。
急いで両親の元へと向かった。
将来有望な令息、もしくは結婚していない資産家、商家でもいい。
兎に角、良い男を紹介してもらわねばならないからだ。
早足で父親のマークと母親のイザベラの元へと向かった。
二人はとても仲が良い夫婦であることがトリニティの記憶からも見てとれる。
それにトリニティ自身もダリルと婚約する前は素直で純粋な子供だった。
それがダリルとの婚約をきっかけに徐々に我儘になっていったがマークとイザベラの前では以前のように振る舞っていた。
マークとイザベラも時折、過激なことを言う事を心配してはいたが、多感な時期だからと軽く受け流していたのだ。
マークはトリニティとイザベラを溺愛しており、自分の地位、お金、労力の全てを使って全力で愛を注いでいる。
イザベラはマークの為にいつまでも若々しい外見を保ち、マークとトリニティにはベタ甘な可愛らしい母親である。
ケリーとはまた違った可愛らしさを持っており、以前のトリニティやケリーが人工的な可愛さだとしたら、イザベラは天然の可愛さプラス癒し系である。
そんな二人は今日も仲良く一緒に居るようだった。
「あぁ……トリニティ! 君はイザベラに似てとても可愛らしい」
「本当ね、貴女はマークに似て聡明な感じがするわ」
「イザベラ……」
「……マーク」
互いを褒め合う二人は頭の上にハートを浮かべながら、ケーキを食べさせあっている。
見ているだけで胸焼けがしそうな程のラブラブっぷりである。
「お父様、お母様、実はお願いがあって参りました」
「なんだい、トリニティ?」
「わたくしの婚約者を見繕って下さいッ!」
「「…………」」
「できれば今すぐに」
マークとイザベラは手を合わせながら「え?」と驚いた顔を見せた。
「トリニティ、いきなりどうしたんだ?」
「もしかして昨日のダリル殿下との顔合わせで何かあったのかしら?」
「嫌なことでも言われたのかい?」
マークとイザベラは心配そうに此方を見ている。
「お父様とお母様のご期待に添えず申し訳ないのですが……残念ながら、わたくしはダリル殿下とは上手くいきませんでした」
「「…………」」
「実際に会って気付いてしまったのです……! ダリル殿下とわたくしとは根本的に合わないと!」
「ト、トリニティちゃん、あんなに『ダリル殿下のお嫁さんになれたらいいな』って言っていたのに、一体どうして?」
「お父様とお母様の為にも、と言っていたではないか……!」
「そうなのですが実際に会ってみたら気が変わったのです」
「ふむ……」
「あらあら……そうなの」
確かにトリニティはダリルとの顔合わせをとても楽しみにしていた。
マークに至っては「ついにウチな家から王家に嫁ぐ子が……!」と涙していたし、イザベラも「ダリル殿下は幸せ者だわ! うちの可愛い娘と結婚できるなんて」と泣いていた。
まだ婚約者にもなっていないのに。
溺愛っぷりが凄まじい。
だけど、今は物語の結末を知っている身としてはダリルと婚約する事は絶対に避けたい事なのだ。
「そして、わたくしはお金持ちの方と結婚するのです……!」
「…………へ?」
「トリニティちゃん……それって」
「歳は二十歳までなら離れていて大丈夫ですわ」
「……!?」
「出来れば将来有望な令息がいいですが……勿論、正妻などと贅沢は言いません! 自由に贅沢させて頂けるなら二番目でも後妻でも構いませんから!」
「なっ……! 後妻だと!?」
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