第43話
「俺の予想では今日丸め込める予定だったんだが、思わぬ伏兵だな」
「なっ……! 丸め込む!?」
「結局自分達が幸せであれば、此方の気持ちなんてどうでもいいんですよ……王族なんて。あーあ、姉上可哀想に」
「…………」
「コンラッド……!」
此方を守ろうとするコンラッドの姿を見て感動から瞳を潤ませた。
多少ブラックすぎる気もするが、一生懸命可愛がって揉みくちゃにした甲斐があったというものだ。
「あー……分かった、分かった。ダリルに伝えておく。善処しよう」
「約束ですよ?」
「はぁ、今日はお前の弟に免じて引くか」
帰ろうと腰を上げたデュランを見て、コンラッドと共に立ち上がる。
そしてコンラッドの後ろに隠れながらデュランにベーと舌を出す。
「さっさと帰れ、天才ブラコン王子……!」
「もう来なくていいですから。さよなら」
「お前らだけだぞ? この俺にこんな悪態つくのは……」
そう言いつつもデュランはこの会話を楽しんでいるように思えた。
「それに俺とお前は友達なんだろう? トリニティ」
「……っ!?」
「俺の顔を見られなくなってもいいのか?」
「くっ……その顔さえなければ!」
「姉上……」
「ははっ」
こんな時に好みのタイプであるデュランの顔が恨めしい。
どうしてこんなにややこしい展開になってしまったのだろうかと考えても答えが出ない。
ダリルとデュラン相手に勝てる気がしないのは何故だろうか。
それにコンラッドが姉想いの弟になってくれたのは嬉しいが、些か逞し過ぎはしないだろうか?
(可愛く甘えん坊になる予定だったのに、どんどんと男らしくなっていくわ)
コンラッドは数年前より随分と男らしくなったのだが『コンラッドはそのままで可愛いのに』と言うと『僕は姉上を守れるくらいカッコいい男になるんです』と言い張った。
その時は「可愛いなぁ」と、喜んでいたのだが、今となっては勉強もマナーもスポーツも全力投球。
好き嫌いもなくなり、よく食べてよく寝るようになったからか、身長も越されて、体格も良くなり、どんどんと男らしくなっていく。
ねちっこい虐めも嫌がらせもない為か、精神状態も良好。
もうお揃いのドレスも着ることは出来そうにない。
「コンラッドは綺麗なままでいてね。あんなに捻くれちゃダメよ?」
「……おい」
「僕は、男らしくかっこよくなるんで心配しないで下さい」
コンラッドに可愛いままでいて欲しいのだが、どうやら思い通りにならないようだ。
「お嬢様、お茶のおかわりは如何ですかぁ?」
そこにケリーがタイミングよくお代わりのお茶を持ってやってくる。
(……後でケリーに相談してみましょう)
自分の未来を憂いてため息を吐いた時だった。
「ーーケリーナルディ!」
「「「!?」」」
突然、ケリーの肩を掴んだのは、空気のように存在を薄くしてずっと黙って成り行きを見ていたリュートだった。
「え……?」
「ケリー、リュートと知り合いなの……?」
「知りませんっ、離してください!」
「ケリーナルディ……ああ、やはりそうだった! やっと見つけた! 私だよ! 私だ、思い出しておくれッ」
「やっ……やめてくださいッ!」
「ケリーから手を離して!」
リュートを拒むケリーを守るようにリュートの腕を外そうともがく。
しかしリュートにはケリーしか眼中にないようで、突き飛ばされて尻餅をついてしまう。
「……っ」
「お嬢様に何するんですかッ! この変態っ!」
ケリーがリュートを思いきりグーパンチでぶん殴ってから、此方に駆け寄る。
リュートはケリーの鉄拳を受けて吹っ飛んでいく。
「お嬢様ぁ……! 大丈夫ですか!?」
「わたくしは平気よ。だけど……」
「ああ……ケリーナルディ! 私は君をずっと探していたんだ」
リュートは殴られた頬を押さえつつも、とても嬉しそうだ。
涙を浮かべながてケリーを見ている。
(リュートの茶色の瞳が金色に変わってる……!?)
リュートは此方の声が聞こえないようで笑みを浮かべながら此方に近づいて来る。
そんな様子を見てケリーがトリニティの体を守るように抱きしめた時だった。
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