最終章
第48話
王妃教育を受けるために王城へと通うのは辞めた。
とはいっても三年間、全力で色んなことに取り組んだせいで全ての過程は終了。
そんな些細な抵抗も殆ど無意味であった。
それにダリルの本来の純粋な性格が表に出てきてからは、更に断りにくくなってしまった。
何より、コンラッドがクールになり可愛さが消えてしまった今、まるで尻尾をブンブンと振る大型犬のように、従順で可愛くて素直で愛らしい姿を見ていると揉みくちゃにしたくて堪らなくなる。
これが作戦とは思いたくないが、見事にストライクゾーンを押さえてくるダリルにたじたじである。
(か、かっ、可愛いよぉ……!)
ダリルとデュランが手を組んだ途端、取り巻く環境は一変した。
恐ろしい知恵の女神と天使の恩恵を受けているエルナンデス兄弟にフローレス姉弟は押されている。
そしてフローレス邸に通ううちに、マークとイザベラのラブラブ過ぎる姿に感銘を受けたダリルは「まさに僕の理想だ」と言って、二人にいい夫婦関係の作り方をインタビューしている。
そんな熱心にトリニティを愛しているダリルの姿に感化されたマークとイザベラは、最近さりげなくダリルを勧めてくるようになった。
ケリーもケリーで「諦めて婚約しちゃえば丸く収まりますし、ケリーもダリル殿下とトリニティ様が結婚してくれたら王妃付き侍女ですよぉ! 出世街道まっしぐらです」と嬉しそうに言っている。
天使様も幸せは『ダリルとの結婚にあり』と手招きしている。
つまりは圧倒的に不利な状況である。
今のダリルは嫌いではない。むしろ可愛がるのを我慢していて胸が苦しい。
だが今まで何の為に頑張ってきたのだろう、と思うとなかなか踏み出せなかった。
徐々に追い詰められていたトリニティではあったが、ナイスなタイミングで学園に入学することになった。
二つ歳下であるダリルと会う機会はグンと減ったことで、これ以上心が靡く前に防げた事に安堵していた。
学園に通い始めれば、ダリルも自然と他のことに目を向けるようになる筈だと思い、思春期の心変わりに期待する事にした。
あとはもう自然に任せようと、半ば諦めモードである。
王立学園は三年制である。
ダリルとコンラッドがヒロインと同じ歳なので、ダリルが一年生、トリニティが最高学年の時に嵐はやってくる。
ということは、逆に言い換えれば二年間は平和が約束されている。
それに二年後に控えた最大の山場に向けて、準備をしなければならない。
最短ルートとは見事にサヨナラしてしまったが、残された道は学園での過ごし方を如何に考えるかである。
ここで突然だが、うろ覚えの乙女ゲームの内容を整理しよう。
ダリルは王道俺様担当で、コンラッドは可愛い系男子担当。
ダリルの場合、ライバル令嬢として立ち塞がるのがトリニティ。
コンラッドの場合、ライバル令嬢として立ち塞がるのがトリニティ。
どれだけトリニティが忙しいんだよと突っ込みたくなるが、そこは乙女ゲームの世界。
悪役令嬢の労働環境は命懸けで過酷なのである。
このあざと可愛さを武器に、ヒロインをネチネチと追い込んでいく。
そのやり方は非道を極めるが、分かりやすいのが特徴である。
残りの攻略対象者達はインテリ眼鏡と無口でクールな体育会系だったような気がするが、名前までは思い出せない。
そちらの二人のライバル令嬢は無表情美人系の令嬢マロリーである。
マロリーは品行方正で周囲からの信頼も厚いし、生徒会にも入っていて頭もいい。
しかし、それは仮の姿……。
序盤はサッパリとした令嬢だと思わせておいて突如メンヘラを発動する。
口癖は『アナタを殺して私も死ぬ』である。
そんなマロリーの狂っていく姿はなかなか斬新であった。
「私の邪魔をする奴は、みんな死んで?」
そう言いながらヒロインを恐怖に陥れながら追い詰めていくのである。
インテリ眼鏡君とマロリーは幼馴染であり、無口でクール君に密かに想いを寄せている設定だ。
因みにマロリーとインテリ眼鏡君、無口クール君とトリニティは同い年である。
無口クール君の時はメンヘラが大爆発。
インテリ眼鏡君の場合は、コンラッドの時同様、ライバルというよりはお邪魔キャラになるのだ。
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