最終話

マロリーと出会った頃には、もう既にマーベルが『侍女のマリベル』として側に居たのだろうか。

それとも、あれが本当のマロリーなの願いだったのか。

其れを知る術はもうなかった。

何故ならニリーナ侯爵家に聞いても、誰一人『マリベル』を覚えてはいなかったからだ。


デュランは魔王の後継に選ばれているらしく、女神側と魔王率いる魔族の間で『デュラン』の取り合いは続いているらしい。

そんな設定も乙女ゲームの続編に明かされるはずだった伏線なのかもしれないと思うと複雑である。

そんなデュランの事情を、初めて知った国王と王妃は驚いていた。

珍しい髪色にそんな秘密があったとは思わなかったらしい。


そしてデュランが悪魔側に付くということは、絶対に防がなければならないと、エールラン子爵の申し出により年の近いローラが側について護衛することとなった。

女神メーティスも、勇気があり真っ直ぐで純粋なローラを気に入って側にいる事を許しているようだ。

新たな恋の予感を感じつつ、ニヤニヤとしているとデュランに「ばーか」と思いきり額を小突かれたのだった。





学園の卒業パーティーを終えた後、改めてダリルにプロポーズされた。

その時、自分の気持ちを認めざるをえなかった。

ダリルの愛を素直に受け入れたのだ。

今までアピールをして、ガンガンと攻めていたダリルだったが、塩対応から一転、恋人らしく応えると照れて固まってしまう彼を愛おしく思っていた。


「ダリル殿下、たまには手を繋いで門まで行きましょう?」

「ト、トリニティ様……!? ちょっと待ってください! わわっ!」

「フフッ、可愛い」

「はぁ……もう勘弁して下さい」


今までの仕返しとばかりにダリルをブンブン振り回して楽しんでいるのだが、数年後……心も体も成長して耐性を付けたダリルに逆に可愛がられる事になり、今よりも更に溺愛される事になるとは、今は知る由もない。


そしてケリーはというとトリニティとダリルが婚約して、心から結ばれたのを見届けた後に、ゆっくりと記憶を取り戻した。

天界にいる家族が心配しているからと、イデアリュートと共に、ケリーナルディとして天に帰ることとなった。

ケリーとリュートの淡く金色に光る目と、天使の白い羽を見て、本当にケリーが天使だったのだと実感する。

ケリーと別れることが耐えられずに、嗚咽しながら大号泣。

ケリーも涙が止まらなくなって、今世紀最大の別れを経験した。


「ケリィィイィイィ!」

「トリニティ様あぁあぁあぁっ!」

「「「「…………」」」」


結局、コンラッドとダリルに諭されるようにして、ケリーとの別れを受け入れたが枕を濡らして一晩中泣いていた。


その次の日ーーー。

フローレス家の侍女の格好をした『ケリー』が目の前に現れた。


「おはようございますっ! お嬢様」

「…………ん?」


真っ赤に腫れた重たい瞼を擦りながら何度も何度も確認していた。

しかし、やはり目の前に居るのはケリーである。

「てへ、帰って来ちゃいました」とぶりっ子全開で可愛らしく言ったケリーの胸に埋もれて再び嬉し泣きしたのだった。


そしてケリーと一緒に、リュートも再びダリルの側にいることとなった。

理由としては二人が結ばれるのならば、ケリーの側にいる事が出来るのでリュート的には全く問題ないのだそうだ。

そしてこれからも天界を行き来しながら、今までのように側に居てくれるらしい。


いつも側に寄り添ってくれるあざとい侍女。

強い悪魔祓いの力を持った、とても可愛い後輩。

同じブラコンで、一緒にいて飽きない友人。

可愛……イケメンすぎる弟と、相変わらずラブラブな両親。


そして努力家で一生懸命で、嫉妬深くて腹黒くて可愛くて、かっこいい最高な婚約者。

全ての理想を詰め込んだ最高な男は出会った時から、ずっとトリニティに愛を向けている。

日に日に深まる愛情に溶かされている。


そんな完璧で理想の王子様と結ばれる事ができて、これ以上ないくらい幸せだと思う。

ダリルの名前を呼んでから、いつもの仕返しとばかりに首に腕を回して唇にキスをする。

逃さないと言いたげに腰に回された腕、ダリルに寄り添うようにして抱き締めた。


「僕はトリニティ様の理想になれたかな?」

「えぇ、勿論! わたくしの理想過ぎて、ちょっと怖いわ」

「ははっ、これからもずっとずっと大好きだよ。トリニティ様」

「わたくしも大好き」


最短ルートではなかったが、無事に断罪を回避して、幸せを掴むことができたのだった。








Happy end ❤︎


ここまでお付き合いして下さった皆様に感謝を申し上げます!

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【電子書籍化決定】悪役令嬢、モブ目指します!〜最短ルートを突き進もうとした結果、溺愛が止まりません〜 やきいもほくほく @yakiimo_hokuhoku

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