第28話


「……勿論、わたくしのタイプは以前と変わらず、身長が高くてイケメンで包容力があって、家族を大切にして、思いやりがあって、いつも明るくて笑顔が爽やかで、スポーツ万能で、頭が良くて、お金持ちで、わたくしを海のように広い心で優しく見守ってくれる一途な男らしい素敵な男性ですわ!」

「…………」

「でも良く考えて下さいまし、ダリル殿下。あれからもう三年も経ちました。心と体が成長すると共に好きな男性のタイプも変わるのです! ずっと同じなんて事はありえません! わたくしは、常に変化し続けているのです……!」

「……なるほど」


勢いと名言風に言う事で誤魔化す作戦は上手くいったかは微妙なところではあるが、ダリルの気は少し逸れたのではないだろうか。

しかし、此方を疑うようにじっと見つめているダリルの手を取って訴えかけるようにして言った。


「ダリル殿下も、常に進化し続ける方であってくださいね! わたくし、応援しておりますから」

「……トリニティ様は僕を応援してくれるんですか?」

「オホホホ~! 勿論ですわ! では誕生日パーティーへ向かいましょう。主役が居なければパーティーが始まりませんわ」

「はい」


適当に笑い飛ばしてから、ダリルを引っ張って会場へと向かう。

誤魔化すつもりが、何故か手のひらで転がされている感覚が拭えないのは気のせいだろうか。

二人が戻ると、複数人の令嬢から嫉妬の篭った視線がチクチクと背に突き刺さる。

(分かるわ……! トリニティの可愛さが妬ましいのね)


トリニティが可愛いことは分かりきっている。

なので嫉妬に満ちた視線を向けられるのは仕方がない事である。

心配していたマナーも完璧だった……と思う。

緊張が杞憂に終わってホッとしていた。

そしてダリルの誕生日パーティーは無事に終わったのだが、ここである問題に気付く。


(はっ……! ダリル殿下とデュラン殿下以外話してないッ)

ダリルと最後まで一緒に居た為、令息と話す機会を失ってしまったようだ。

けれど帰り際に何人かの令息と目があった際、トリニティのエンジェルスマイルで悩殺しておいたのでこれで、婚約の申し込みが来るだろう……と思っていたのはトリニティだけで、顔を赤らめた令息達は後ろで冷ややかな笑みを浮かべていたダリルに牽制されて、そのフラグはバキバキに折られていたとも知らずに、なんとか任務を達成出来たと安心感で満たされていた。


そして一番の収穫は、目の保養兼友人のデュランをゲットしたことである。

そしてダリルに王家の馬車でフローレス侯爵邸に送ってもらう為に馬車に乗り込んだ。

中ではダリルとトリニティ、そして限りなく影を薄くしたリュートがニコニコと笑顔を浮かべたまま座っている。


「トリニティ様、今日はありがとうございました」

「こちらこそ、ありがとうございます」

「パーティーはどうでしたか?」

「え……?」


正直に言ってしまえば、アール君に会えた時以外、特に楽しさを感じることは無かったが、それをストレートに言えるはずもなく。


「初めてのパーティーだったので、少し緊張しました。この年になっても、あまりお呼ばれされなくて……ふふ、恥ずかしい限りです」

「……」

「それになかなか婚約者も出来なくて……頑張って自分磨きをしているのですが良い縁談もありませんし、お父様とお母様もわたくしが婚約者を作ることに消極的ですのよ? 以前は乗り気だったのに……。あっ……申し訳ございません。こんな話を」

「…………やはりそうか」


何かに納得しているダリルに首を傾げつつも、話を続けた。


「ダリル殿下も婚約者が決まらずに色んな御令嬢をパートナーにしていると聞きましたが如何ですか? 気になる方は出来ましたか? なかなか難しいですよねぇ……わたくしも頑張らないと」


近況を愚痴っていると、考え込んでいるダリルに気付く。

 

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