第66話
「……貴女、自分が一体何をしているか分かっているの?」
「はぁ? 何言ってんの? 私は皆の意見を代表してこの子に注意してただけよ」
「何故、ローラを目の敵にするのよ」
「だって目障りなんだもの。それに私は身の程を弁えた方がいいって親切に教えてあげているだけでしょう!?」
マロリーの態度は荒々しくなっていく。
『自分が正しい』『皆の為に』と、この行為を正当化しているようだが、明らかに良い事ではないし、周囲の令嬢達に利用されているようにも見えた。
マロリーを置いて平然と自分達だけ逃げていく令嬢たちでは、以前のトリニティが断罪された時のように、問題が大きくなれば全てを彼女の所為にされるのでは、と安易に想像出来た。
「ローラ、向こうにデュランが居るから合流して頂戴」
「えっ……? でもトリニティ様は……!」
「わたくしはマロリー様とお話があるの……さぁ、早く行って」
「……は、はい!」
「ちょっと……! 話はまだ終わってないわよ!」
ローラはペコリと頭を下げると、指を差した方向へと走っていった。
「このクソ女、邪魔ばっかりすんな!」
「あら、随分と余裕がないみたいね? ケールとサイモンがAクラスになった途端、肩身が狭くなったのかしら?」
「はぁ!? そんな訳ないじゃない」
「ダリルとコンラッドに相手にされてないのも、流石に気付いているんでしょう?」
「ち、違うわよ! お前とあの元平民のヒロインが、私の邪魔をしてるだけでしょう!?」
「…………本当にそう思う?」
その問いにマロリーは押し黙る。
唇を噛んで手のひらに力が篭っている姿を見るに、本人も薄々は気づいているのだろう。
「っ、それに貴女が私に嘘ついた所為でしょう? ダリルとコンラッドの性格が違う事も黙っていたから、私が恥をかいたじゃないっ! 二人とあんなに仲良いなんて! シナリオやキャラまで勝手にぐちゃぐちゃにするなんて信じられないわ……ッ!」
シナリオを壊そうとしたのもお互い様で、ケールとサイモンの性格も大分違ったような気がするが……と突っ込みたくなった。
しかしこの状態のマロリーに何を言っても無駄だろう。
「言わせてもらうけど……」
「私を貶めようとしたって、そうはいかないんだから! さっきだって、あんなムカつくヒロインを守ろうとして何考えてんのよ! このままヒロインを放っておいたら私達は酷い目に合うって知っているでしょう!?」
相変わらず人の話を聞かないマロリーは早口で此方を責め立てている。
「はぁ……わたくしは断罪を回避しようとして、結果的にこうなったって前にも言ったでしょう? それにローラはそんな事をする子じゃないわ」
「ーーー嘘よッ! アンタのせいで私の計画がめちゃくちゃよ! ケールとサイモンだって、Aクラスになった途端におかしくなったんだからっ!」
「本当にわたくしの所為かしら……? ケールとサイモンは貴女と離れて自分の正しい未来に向かって歩き出したようだけど。貴女はどうするの?マロリー・ニリーナ」
「うるさいっ、煩い! 何でアンタにそんな事言われなきゃいけないのよ!」
「因みにローラが好意を寄せているのは、ダリルの兄であるデュランよ。だからローラに何をしても無意味なの」
「違うわ! あの女は全てを手に入れようとしている……! 私を邪魔する気なのッ」
マロリーは手を握りしめて震えている。
重い溜息を吐いた後、この状況を見て思っていたことを口にする。
「貴女……まるでヒロインを虐める悪役令嬢ね」
「……悪役、令嬢!?」
「わたくしにはヒロインを虐める悪役令嬢に見えたけど」
「はぁ!? 悪役……? 私が悪役な訳ないじゃないっ!」
その言葉にマロリーの瞳が大きく見開かれる。
物事が上手く進まないことに苛立ち、ヒロインであるローラに怒りをぶつけて苛める悪役令嬢にしか見えなかった。
そのやり方は乙女ゲームのトリニティのようだ。理由はダリルとヒロインの仲への嫉妬ではなく、マロリーの場合は自分が愛される為なのだろう。
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