第6話 決闘場の惨劇
ヒュンッとワープしたあと、私とケートは朽ち果てた闘技場の真ん中で向き合っていた。
石で作られた円形ステージを囲む観客席は結構ボロボロで、今にも崩れそうな感じ。
でもコロッセオみたいな雰囲気があって、いい感じだー。
「設定で回復するようになってるから、私の魔法で腕とか攻撃して、どんなスキルなのか確認してみよー! MP消費なら、どのくらい減るのかも見とかないとね!」
「はーい!」
「それじゃ、いっくよー! 『ロックショット』!」
ケートの宣言とともに、石がまっすぐ私の方へと飛んでくる。
それを、受ける!つもりが、なぜか弾いていた。
「あっ」
「……セツナ受けてよー!」
「ご、こめーん!」
「もう! じゃあもう一回、『ロックショット』!」
今度はちゃんと受けるため、私は刀から手を離し、スッと身体を逸らす。
あれ?
「セ~ツ~ナ~?」
「ご、ごめん! 身体が勝手に!」
「もう! 次! 『ロックショット』!」
今度こそ、避けずに当たる!そのために、私は……勢いよく、魔法に手を叩きつけた!
「あっ」
「やっぱり……」
取んできた石に叩きつけた手は、削り取られるように吹っ飛ばされ、空気に溶けるように赤い蝶へと変化した。
そして、すぐさま私の腕の先に集まり、手へと変化していた。
わーお。
「セツナ、MPMP!」
「あ、えっと、5減ってる!」
「手で5かー。胸から上が無くなったときは50くらい減ってたってことは、身代わりになった範囲とかで変わりそうかな! それじゃ今度は肩を打ち抜いて、腕を切り離してみよう!」
「えっ!? やだ……」
「まあまあ、血が飛び散るわけでもないし、いっくよー! 『ロックショット』あんど『ウォーターボール』!」
「きゃー!」
それから、ぐしゃっ、どごっ、めきゃ、ばしゃ! っと音を立てながら、私の体は何度も打ち抜かれた。
MPの回復を見計らって打ち出してくるケートが、もう鬼にしか見えなかったけれど、鬼のおかげで、身代わりの消費MPは判明したみたいだった。
「総合すると、四肢の欠損で15%。首と頭で20%。身体で20%の合計100%っぽいね。MPが満タンだったら、全身を消されても一回は身代わりになってくれるってことだね!」
「う、うん……そうだね……」
「で、欠損以外は、ダメージの大きさで3から10くらい消費ってところかな。ムチャな特攻をしても大丈夫っていうのは、すごいアドバンテージかも」
嬉々として語るケートに、私はなんとも言えない気持ち。
だって、最後の方は楽しそうに魔法を撃ってくるんだよ!?
「まあ、セツナの謎スキルが、半パッシブだったことが分かってよかったよ。謎スキルのままだと、スキル取得を優先しないといけなかったかもだし」
「パッシブ? パッシブって何?」
「ん? えーっと、パッシブっていうのは、装着してるだけで効果が出るスキルのことだよ。【見切り】と同じパッシブスキルだけど、【幻燈蝶】は任意発動もできるから、半パッシブスキルってところかな」
「なるほどー」
説明に納得した私にケートも頷いて、「それじゃ戻ろうか」と決闘を終了させた。
□
シュンッと元の場所にワープして、私達はアルテラへの帰路につく。
そう、元々は帰ろうと思っていたのだ!王様蛙が出てきたから戦ったけど!
「あのスキルがあるなら、セツナの防具は完全に後回しだねー。受けても無効化できるなら、あんまり防具の意味もないし」
「むぅ……」
「うそうそ。優先順位はあるけど、セツナの防具も交換できるならしようね!」
くすくすと笑うケートに、私はむぅっと顔を膨らませてちょっと拗ねてますアピールをしておく。
そんな私を、ケートはまた笑い、「ごめんごめん」と頭を撫でてくるのだった。
ええい、撫でるでない!
「でも、どうしよっかな。さっきも話したけど、サービス開始直後だから生産プレイヤーも少ないんだよね」
「ん? 店売りを買うーって言ってなかった?」
「そう思ってたんだけどね。ボスを倒したから、ボスの素材もあるし……これをただNPCに売るのはもったいないかなって」
その言葉に、私もアイテムボックスを確認すれば、キングフロッグの折れた槍と、キングフロッグの皮が手に入っていた。
ちなみにケートの方は、キングフロッグの王冠と舌、水かきなんかが手に入ったらしい。
あと、折れた槍と王冠は、初討伐成功報酬じゃないかーって。
レアドロップが、確定でもらえるって感じらしいよ?
「他の蛙より硬かったことを考えると、防具に転用すれば、結構良い防御力を持ってそうなんだよね。水かきは
「ほえー……」
「槍とか王冠は溶かして武器とかに転用かなぁ……。なにか効果が付きそうだし」
なんにせよ、入手した素材がボスの素材だから、売らずに利用したいってことらしい。
その辺はわかんないし、お任せかなー。
「で、セツナさえよければ、私の知り合いにお願いしてみようかなって。前のネトゲでも生産メインのプレイヤーだったから、今回も生産メインでやるって言ってたし、口は堅い人だから大丈夫だと思う。ただ……ちょっと変な人なんだよね……」
「変な人って……それ、本当に大丈夫なの?」
「あー、うん。変わった子だけど大丈夫っていうか、変わってるから大丈夫っていうか……まあ、会ってみて考えようよ! 一応先行登録はしておいたから連絡はとれるし、アルテラの噴水前で待ち合わせってことにしとくね!」
「まあ、いいけど……」
こういうときのケートは、人の意見を聞かないので、私はいつも任せることにしてるのだ。
それに、私は詳しいことがわかんないから、元々任せる気だったし……でも変わってるのかー。
ちなみに、先行登録っていうのは、ゲームを始める前に、お互いのシンギュリアコードを登録しておけば、同じゲーム内で連絡がとれるようになるってシステムらしい。
ケートが私に連絡してこれたのも、それが理由だって。
「よし、連絡できた! それじゃアルテラの街にいこー!」
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名前:セツナ
所持金:1,000リブラ
武器:初心者の刀
所持スキル:【見切りLv.1】【抜刀術Lv.4】【幻燈蝶Lv.2】
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