第43話 火花散る

「あ、セツナさん、お帰りなさい。グレンさん達の試合、もう終わっちゃいますよ?」


「うん、ちょっとね」


「……えっと、何かありました? その、ケートさんは」


「だーいじょーぶ。ちょっと宣戦布告されただけだから」


 そう言うと「えっ、えっ? 宣戦布告?」と、ワタワタし始めたミトに笑いつつ、試合を眺める。

 すると闘技場では、双剣を持ったミシェルが、グレンに追い詰められていた。

 あー、確かにもうすぐ終わりそうだねー。


「予想してたけど、ミシェルさんじゃグレンさんの防御を突破できなかった感じかな?」


「え、あ、はい。グレンさんが丁寧に一つずつ潰していった感じです」


「相性最悪」


「あはは、その通りかも。ミシェルさんの戦い方って、本来手数で押すタイプだもんね。防御重視のグレンさん相手は相性悪いだろうなぁ……」


 そんなこんな言っていれば、グレンがミシェルを倒し、三位をもぎ取っていた。

 順当順当っと。


「さてと……それじゃ、行ってくるかな」


 戻ってきたばかりだけど、そう言って私は席を立つ。

 すると後ろから「あの、セツナさん」と、ミトの声が掛かった。


「頑張ってきてください。私もカリンさんも、お二人のどちらが勝たれても、嬉しいですし、悔しいですけど……できれば全力で戦って、満足いく結果になって欲しいって思ってます。だから頑張ってきてください」


「ん、頑張れ」


「……うん、やってくる。ケートにも“本気で来い。叩き折ってやる”って言われちゃったしね」


 その返しに、ミトは「え!?」って驚いて、カリンは静かに頷く。

 だから私はちょっと笑っちゃって、締まらない声で「行ってきます」と、部屋を後にした。



 私がゲームでケートに勝ったことは、ただの一度もない。

 それこそ、フリフロ内の決闘システムでの勝利が、本当に初めての勝利だった。


「そういった意味では、本当に、初めてゲームで隣に立ててるのかもね」


 一人で呟いて、一人で笑って、一人で歩く。

 隣には誰もいない、でも、この先にケートがいるのは分かってる。

 だから私は行くんだ……ケートのところまで。



「や、セツナ。さっきぶりだぜい」


「うん、ケートも。作戦は考えてきた?」


「もちろんだにゃー。……足腰立たなくしてあげる」


「わ、こわこわー。……やれるものなら、やってみなさい」


 お互いに笑顔を張り付けながらも、目にだけは熱を灯らせて。

 きっとミトが見たら「あわわわ」と、またワタワタするんだろうなぁ、とか思っちゃう。

 でも、今はきっとそれでいい。


『それでは決勝戦、セツナ対ケートを始めます。両者準備は良いですか? それでは、試合開始です!』


「ふッ!」


「全面展開、『ウィンドウォール』! 【魔法連結】『クリエイトゴーレム』!」


「ふぎっ、風の壁は面倒だっ!」


「ぶん殴れ、ゴーレム!」


 行く手を遮るように発動された風の壁に動きが鈍る。

 ケートはその瞬間を逃さず、生み出したゴーレムを動かし、その土の腕を振るわせた。


「甘いッ! 【蝶舞一刀】水の型『水月』!」


「今ッ、モードチェンジ【魔法連結】『ダブルギガントハンマー』!」


 ゴーレムを両断すべしと振るった刃は、まさかのモードチェンジにて無に帰され、代わりに上下からのハンマー攻撃で返される。


「ちょっ! っととと!」


「ぐげ、あれ避けるの反則じゃん!」


 バックステップでなんとか回避すれば、ケートがムキーと怒りだす。

 いやいや、そんなこと言われても。


「むう。まあセツナ相手に、短期決戦はやっぱり無謀かー」


「そりゃ、すぐにはやられないって」


「なら次々いくべし! モードチェンジ【魔法連結】『ダブルスピニングランス』! シュート!」


 ハンマーから槍に変化したゴーレムが、私めがけて飛んでくる。

 とりあえずそれの片方を避けつつ、もう片方は弾き、回転するように前進。


「今度はこっちの番!」


「させないよ! 『アースウォール』!」


 ケートへと一直線に駆けていけば、目の前に土壁が現れる。

 ならぶっ壊して進むのが一番早い!


「【蝶舞一刀】火の型『発破』!」


「ッ対応が早い! 『ウィンドブロー』あんど、モードチェンジ【魔法連結】『リターンゴーレム』!」


 壁を壊した瞬間を狙うように風の塊が飛んでくる。

 さすがに避けれず、勘を頼りに刀を振るうも、横から攻めてきたゴーレムに吹っ飛ばされた。


「ッ! は、」


「ようやく一発……」


 かなり綺麗に入ったからか、たった一発と言えど、HPは二割ほど持っていかれた。

 ……さすがケートと言うべきか、【幻燈蝶】の弱点をしっかりと突いてきてる。

 しかし、とりあえず近づかないといけないけど……どうするかな?


「まあ、考えたところで、ケートには予想されてるか……」


「そういうこと。それじゃ次行くよ……『フレアバーン』!」


「ッ!」


 一息ついた直後に、足元からの火柱。

 それを咄嗟に前へ飛んで回避し、一気に距離を詰めていく。

  

「ぶっ飛べ、一極集中『ウィンドブロー』!」


「断る! 【蝶舞一刀】風の型『旋花ひるがお』!」


 襲い来る風の塊を、こちらも一点集中した斬撃で叩き割る。

 そして一気に距離を縮め、すれ違い様に斬りつけた。


「うぎッ! 『フレイムウォール』!」


「っと!」


 炎でできた壁を挟み、私とケートはまた距離を開ける。

 さっきの一撃がクリティカルに入って約二割。

 これはホントにキツいなぁ……。


-----


 名前:セツナ

 所持金:11,590リブラ


 武器:居合刀『紫煙』

 防具:戦装束『無鎧』


 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.8】【秘刃Lv.2】

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