また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ？ ～ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記

第52話 尊敬されない優勝者

「卑怯っスよぉ！　なんなんスか、アレ！　魔法使いじゃなかったんスか！？」

「勝てば官軍。負ければ雑魚よ」

「ムキー！　勝負っス！　次は勝つっスよぉ！」

　数分ほどして、ケート達の決闘は終了した。

　終わりの方だけ見てたけど、ケートの圧勝って感じかな？

　まあ、私が倒すまでは、誰にも負けてほしくはないし、良し良し。

「イヤっスぅ。私の勝ちっスぅ」

「真似すんなっス！　なんなんスか、アンタ！」

「え？　天才だけど、なにか？　あ、ごめんにゃー天才すぎて圧勝しちゃって」

「ムキー！」

　目の前で繰り広げられる、頭の悪い会話に、私はなんとも言えずため息を吐く。

　しかし全く止まらないバカの応酬に、私は腹を決めて乱入することにした。

「もう一回勝負っス！　勝負っスよ！」

「だーれがやるぎゃ！？　せ、セツナ！？」

「うるさい」

「ひぃっ、暴力反対！　力で押さえ込む国はほろびぎゃっ……」

　なんだか色々言ってたケートの頭に、ゴスゴスと手刀を落とせば、ケートが静かになる。

　そして、それに頷いてから、ナインへと振り返れば……ナインはガタガタと震えたまま土下座していた。

「……踏めばいいのかな？」

「ち、違うっスよぉ！？　なんでそうなるんスか！　あっ」

「……踏んでいい？」

「す、すみません、でしたっス……」

　とりあえず震えたままのナインの前に、サボテンのトゲを置いて、ケートを起こす。

　それから私は「それで揃うだろうし、そろそろ帰ろう」と、荒野を歩き出すのだった。

□

「そういえばケートさん。あのゴーレムってどうやって操作してるんスか？」

「んー？　まあ、【魔力操作】のスキルを使って、魔力で作った骨組みを動かしてるって感じかなー」

「骨組みっスか？」

「うん。モードチェンジを見せたし、なんとなくは想像出来るかもだけど、私のゴーレムは小（・）さ（・）な（・）泥（・）を（・）ゴ（・）ー（・）レ（・）ム（・）に（・）し（・）て（・）る（・）の。だから、ゴーレムとしての骨組みがないと、その場で泥の山になって終わりなんだにゃー」

　なるほど、つまり、魔力の骨組みに対して、泥を肉のように付けてるって感じなのかなー？

　確かにそれなら、骨組みを変えれば形も変わるし、操作イメージもつけやすい。

　結構考えてるんだなー。

「操作する数が少なくて、形状が簡単なやつは、MP消費も少ない。代わりに、形状が複雑だったり、数が多いものはかなり消費するって感じだぜい！」

「なるほどっス！　使い方次第なんスね！　勉強になるっス！」

「ふっふっふっ。天才魔法使いケート様として崇めるがよい」

「あ、それは別にいいっス。むしゅーきょーっス」

　ドヤ顔で胸を張ったケートに対し、ナインはバッサリと切り捨てる。

　あまりにもキレのある切り返しに、私は一瞬、コントでも見せられてるのかと思ったりした。

「でも戦って思ったっスけど、ケートさんよりセツナさんの方が怖かったっス」

「え、そう？　怖くないよー？」

「そういうところも怖いっスけど、なんていうか、理不尽なくらいの暴力が形を成してるって感じがしたっス」

「……それ褒めてる？」

「ほ、褒めてるっスよぉ！　威圧感とか、対応力とか、そういったのがもうなんか凄まじかったっスよ！」

　さっきの一件があってか、ナインが私を妙に怖がってるように感じるなー。

　ふーむ、まあ別に良いんだけど。

　でも、威圧感とか対応力、かー。

「まあ、確かにセツナの対応力はすごいよねー。決勝で戦った時も、アースウォールを目の前に出した直後、技で破壊しようとしたし」

「っスよねぇ。普通、5メートルくらい（中距離程度）で矢を射られて、その矢を斬り落とすとか、ムリっスよ」

「あー、その辺はセツナにとっては普通だから。そこで驚いてたら、この先もたないぜ」

「ど、どういうことっスか！？　それ！？」

　まるで私が普通じゃないみたいな言われ方をしてるけど、そんなことも無いと思う。

　だって、多分グレンやミシェルなら、全然対応できるだろうし……。

　ケートも普通に避けたり、防いだりできるよね？

「何を考えてるのかは、なんとなく分かるけど……普通じゃないからね？　普通っていうのは、私……いや、私じゃなんか伝わらないだろうし……バンドルさん？　くらいの人だよ」

「バンドルさんって、ケートが一回戦で戦った人だっけ？　大槌の」

「そうそう。あの人くらいが、多分普通よりちょっと強いくらいじゃない？」

「そ、そうなんだ……」

　あの人くらいって言われても、ケートに遊ばれて、燃やされて、吹っ飛ばされてたから分からないんだけど……。

　うーん、あの人が普通より強い……うーん……？

「あ、あの。ちょっと気になったんスけど」

「ん？　なにかにゃ？」

「もしかしてお二人って、この間の戦闘イベント、出てたんスか？」

「……え？」

　予想外すぎるナインの質問に、私もケートも間の抜けた声が出てしまう。

　だって、そうでしょ？

　公式のPVとかイベント情報とかに載ってたりするし……。

「あ、すみませんっス。自分、イベントのページを覗いたの、装備をお願いしたい職人さんを探すためだけだったっスから……」

「あ、ああ、なるほどにゃー。いやいや、気付くでしょ！？」

「何がっスか！？」

「……セツナぁ、私、自分が有名だと思ってたけど、思い上がりだったかもしれないよぉ」

「たぶん、ナインが特殊な事例だから、気にしなくて良いと思うけど……」

　よよよ……と崩れていくケートに苦笑しつつ、私は公式のイベントページを表示して、ナインへと見せる。

　不思議そうな顔をしてのぞき込んだナインだったが……次第に表情が変わっていき、最後には「ま、マジっスか？」と、信じられないものを見るような顔になっていた。

　ええ、マジです。

「え、マジでこの人が優勝者なんスか……？　セツナさんじゃないんスか？」

「……不本意ながら」

「へっへっへ。セツナを負かして、トップの座についたのは、この私！　そう、天才魔法使いケートちゃん！」

「うわぁ……っス……」

　沈んでいた顔から一転して、ドヤ顔と共に立ち上がったケートに、私もナインもそっと後ろへと引いてしまう。

　うわぁ……。

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　名前：セツナ

　所持金：211,590リブラ

　武器：居合刀『紫煙』

　防具：戦装束『無鎧』

　所持スキル：【見切りLv.4】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.9】【秘刃Lv.2】