第70話 超機動魚人サッハギーン

「ギョジンソウジュツ『シブキ』!」


「ケート!」


「はいにゃー。『アースウォール』」


 私へと連続して繰り出される銛の突きを、ケートの土壁が遮る。

 その瞬間を逃さず、土壁を蹴上がって魚人へと呪符をかざした。


「『鬼火』!」


「アマイッ!」


「ぶっ壊せ、超『スパイラルシュート』!」


「グヌッ!」


 『鬼火』を銛で薙いで防いだところへ、土壁すら巻き込んだ竜巻が直撃した。

 その一撃で吹っ飛んだ魚人のHPは、目に見えるほどに削られ八割を切る。

 今だっ!


「【蝶舞一刀】『水月』!」


「クッ!?」


「一発入魂! 『フレアバーン』!」


「グアアァァァ!」


 スパンッ、ドゴーンと音を鳴らし、魚人が斬られ燃える。

 やはり魚だけあって火には弱いのか、魚人のHPはゴリゴリ削れ、一気に半分まで削ることができた。


「ギョギョギョ。ヨイツヨサダ。コレナラバ、ワレモホンキヲダセル!」


「セツナ、ここからが本番だぜー」


「はーい」


「ミルガイイ。ワガシンノスガタヲ!」


 そう言って、魚人は銛を地面へと突き立て「ハアッ!」と気合いを入れる。

 

 直後、魚人の身体が変化……いや、変形した!


「え、ええ……?」


「こーゆー変形バンク見たことあるにゃー。新幹線ロボとかのアニメのやつだぜ」


「いや、魚は変形しないでしょ……」


「チッチッチッ。世の中には多数の変形ロボが存在するからにゃ。中には魚だっているぜい!」


 そんな話をしている間に、ガシャーンガシャーンと音が鳴りそうな動きをしながら、魚人の魚部分が変形していく。

 元々の人部分へ装甲のように合体し……魚の顔は胸元に、そしてその上から、メカメカしい顔が現れる。


「超機動魚人サッハギーン、ココニ推参!」


 シャキーンと鳴らんばかりのポーズを決めて、そう名乗る元魚人。

 ……残念だけどこの魚、食べられなさそうだ。


「我ノコノ姿ヲ見タ者ハ、皆死ンデイル! 覚悟スルガイイ!」


「微妙に言葉が流暢になってるの、なんかイラッとする」


「だにゃー。さっきまでの方が、メカメカしかったぜ」


「ソノ余裕、ドコマデ続クカ見セテミロ! 魚人槍術『津波』!」


 元魚人は先ほどまでよりも圧倒的に速い動きで、連続薙払いを放つ。

 それをなんとか避け、払い、弾きと繰り返す私の後ろから、槍が突っ込んできた!?


「モードチェンジ【魔法連結】『スピニングシュート』!」


「ちょっ!?」


「ヌゥッ!?」


 横に飛んで避けた私のすぐ横を、回転する槍が突き抜け、元魚人を吹っ飛ばす。

 いやいや、めちゃくちゃだって。

 アレをしっかり銛で防いで逸らした元魚人もスゴいけどね。


「にゃはは。避けると信じてたぜ」


「厄介ナ魔法使イダナ」


「お褒めにあずかり、こーえーにゃ! モードチェンジ【魔法連結】『ギガントハンマー』!」


「ダガ効カヌ!」


 すぐさま頭上から降ってくるハンマーを、元魚人は銛の一突きで破壊する。

 そして、「魚人槍術『鉄砲』!」と、私へ銛を投げてきた!?


「うぇ!?」


「『アースウォール』!」


「良イ判断ダ! ダガ、自身ガガラ空きダ!」


「にゃ!?」


 銛に気を取られていた瞬間、ケートへと接近していた元魚人が、ケートへと拳を振るう。

 殴り飛ばされたケートが見えた直後、私はアイテムボックスから呪符を取り出していた。


「『炎鎖』!」


「ヌゥッ!?」


 自らの身と相手の身を焼く炎の鎖。

 まるで軽い火傷をしたみたいに、ピリピリする痛みを放つ鎖が、私と元魚人の左足に繋がれていた。


「小癪ナ真似ヲ」


「これ以上、ケートには近づかせない」


 刀の柄で土壁を破壊し、銛を拾い上げた私は、それを元魚人へと放り投げる。

 そして納刀し、腰を落として右手を柄へと添えた。


「ホウ。我ガ魚人槍術トヤリアウツモリカ」


「お互い、その方がしっくり来るでしょ?」


「ギョッギョッギョッ。良イ度胸ニ敬意ヲ表シ、ソノ誘イニ乗ッテヤロウ」


 銛を拾い上げ、間合いを取り、銛を構える。

 ジリジリとダメージを与えてくる『炎鎖』の関係で、私のHPは八割を切った。

 しかし、同時に元魚人のHPも削ってくれていた。


 火に弱いからか、私よりもゴリゴリ削れてる気がする。


「魚人槍術『飛沫シブキ』!」


「――ッ、【蝶舞一刀】『水月』!」


「甘イ! 魚人槍術『打潮ウチシオ』」


「『剛脚』!」


「ヌゥッ!?」


 強化された蹴りで、がら空きの腹を蹴り飛ばす。

 『剛脚』は【蹴撃】レベル8で会得した技であり、強化した一発の蹴りを放つ技だ。

 さすがに蹴り技を持ってるとは思ってなかったからか、綺麗に入って、HPを一割弱削ってくれた。


「ナルホド、自信ヲ持ツニ相応シイ強サダ」


「どーも。それより良いの? 時間がかかればかかるほど、炎が体力を奪っていくよ?」


「ギョッギョッギョッ。ソレモマタ面白イ」


「何が面白いのか全然分かんないけど……」


 話している内にも、私のHPは半分近くまで減る。

 そして、元魚人のHPは……三割を切っていた。

   

 とりあえずMPポーション飲もう……うぇぇ……。


「気力ハ回復デキタカ? ……デハ、ソロソロ終ワリニスルトシヨウ。行クゾ!」


「【蝶舞一刀】『旋花』!」


「ナンノッ!」


「『乱脚』」


「ソノ程度!」


 真下からの斬撃を避けたところに、連続で蹴りをみまう。

 しかし元魚人は、その蹴りを何発か喰らいつつも、さらに前へと攻め、「魚人槍術『飛沫』!」と連続突きを放ってきた。

 ちなみに、元魚人のHPは二割を切っていた。


「あわわ、わっわっ。よけれないよー」


「所詮、人間ハコノ程度ヨ。死ヌガイイ!」


「なんてね【幻燈蝶】」


「ヌ!?」


 銛が刺さる直前に、私は蝶へと姿を変える。

 直後、ドゴーンと火柱が上がった。


「ヌウァァァァ!?」


「タイミングバッチリだぜ、セツナ!」


「人間メ、オノレェェェ……!」


「正義は必ず勝つ! だにゃ」


 いや、どう考えても、今回は私達が卑怯だと思う。

 まあ……勝ったから良いけど、こういう勝ち方はあんまりしたくないなぁ……。


『イーリアス西エリアボスモンスター、サッハギーンが初討伐されました。討伐者はセツナさん、ケートさん。討伐者には、初討伐成功報酬と、討伐の証として、称号“イーリアス西エリアの覇者”をお送りいたします』


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 名前:セツナ

 所持金:105,040リブラ


 武器:居合刀『紫煙』

 防具:戦装束『無鎧』


 所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.5】【蹴撃Lv.8】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】

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