第17話 後を追うモノの姿

 新装備に身を包み、街を歩く私達は……めちゃくちゃ注目されていた。

 もう、付近の人がみんな見てるんじゃないかってくらいに見られてる。


「け、ケート、すごい見られてるよー」


「そりゃーねー。まだサービス始まったばかりなのに、こんな完成度の装備してれば、そりゃ見られるよねー。決して似合ってないとかじゃないから、そこは安心するのだ」


「それは、そうかもだけどー」


 注目の中を我関せずと闊歩していくケートはすごい。

 私なんて、もう変な汗出てきた気がするし。


「もしかして緊張してるんでちゅかー? セツナちゃん、おててちゅなぎまちゅかー?」


「ば、ばか……!」


「って、怒りつつも手を繋いじゃうところが可愛いよねぇ、うひひたっ」


 にやにやし始めたケートに少しイラッとして、手をギリギリと握りしめてやった。

 ふふん、調子にのるからだ。


「ま、まあ、こうなるのは予想してたんだけどねー。ただ、ちょっと早く動いておかないと、第二層の一番乗りが難しくなりそうだったから」


「え、そうなの?」


「うん。第一層が思ったよりも狭かったみたいで、ゲーム内今朝の時点で、すでにフィールドボスが全て発見されてたんだよねー」


 『アルテラ平原』のボスモンスター『グレートウルフ』。

 『アルテラ湿原』のボスモンスター『キングフロッグ』。

 そして『東アルテラ森林』のボスモンスター『ナイトメアバット』。


 どうやら、この3体が第一層のフィールドボスモンスターらしい。

 ただ、今倒されてるのは、私達が倒したキングフロッグだけだって。


「戦わずにマップを埋めるためにフィールドを走りつづけたプレイヤーがいて、そのプレイヤーが言うには、東の森の先から北の山を抜けて西の湿原の先までは、高い山で囲まれていて、南の平原の先は切り立った崖になってるってさー」


「なるほど。そこが層の終わりなんだ」


「そそ。その情報とボスモンスターの情報を合わせると、次の層への入口は北が怪しいでしょ? 唯一フィールドボスが見つかってないし」


 あー、だから一番乗りが難しくなるかもってことかー。

 第二層への入口を守ってるサソリが見つかっちゃう可能性が高いんだねー。


「私達は二人だけど、普通ボスと戦うならフルメンバーで挑むものなのさー。要は五人ってことだぜ」


「数の暴力で押し切れる可能性もあるもんね」


「そゆこと。だから、まだ見つかってないタイミングで、私達は駆け抜けないといけないのだ!」


 繋いでない方の手をグッと握って、ケートは気合いを入れる。

 そんなケートの姿に、私は「しょうがないなー」と笑うのだった。



『アルテラ平原ボスモンスター、グレートウルフが初討伐されました。討伐者はグレンさん、トーマスさん、イチカさん、ゴンザブローさん、ミシェルさん。討伐者には、初討伐成功報酬と、討伐の証として、称号“アルテラ平原の覇者”をお送りいたします』


「あ」


「お、ついにかー。まあ、予想通りかな」


 脳内に直接響いたアナウンスに、私とケートは足を止める。

 内容としては、平原のボスが倒されたってことなんだけど……人数が多かったなぁ……。


「えっと、五人?」


「うん。五人だったねー。やっぱりフルメンバーで挑めば、サービス開始直後でも倒せるレベルの相手で設定されてたかー」


「あと倒されてないのって、森のボスだけだよね?」


「うむー。ただ、ナイトメアバットは厳しいと思うにゃー。暗闇の中での戦いは、かなり技術を要求されるはずだし」


 なんでも、東アルテラ森林のボスモンスター、ナイトメアバットは、暗闇の中から急に襲いかかってくるらしい。

 名前や見た目が判明しているのは、遭遇したプレイヤーさんが、死ぬ間際になんとか確認だけ出来たっていう……。

 うーん、それはちょっと難易度高くない?


「昼間に通れば、兎やリトルボアっていう小さい猪くらいしかいないから、すごい楽なフィールドなんだよね。だから、その分夜が厳しいって感じになってるんじゃないかなー」


「理屈は分かるけど、強襲はひどい」


「にひひ、良い教訓になるじゃろ? たぶん、第一層はチュートリアルみたいなもんだしね。夜は危険って警告みたいな感じじゃないかな?」


 そう言われるとなんとも言えなくなっちゃう。

 でも、第一層はチュートリアル、か……。

 それなら第二層からは、かなり厳しくなるのかな。


「ま、なんにせよ、私達が一番乗り出来る猶予はほとんど無いってことですにゃー。今日で決める気でいくぞい」


「うん。分かってる」


「にひひ、頼もしいですじゃ! というわけで、セツナはん、敵影でっせ! 『プチフレイム』!」


「はいはい」


 ケートの放った火の玉が、暗い洞窟の中に敵の姿を映し出した。

 サソリと蛇の連合隊、数は合計4。

 放っておいても倒せそうだけど、まぁ……一応斬っておこうかな。


「えいっ」


「シャァァ……」


「蛇さんは刃が通りやすくて楽らく~」


「『プチフレイム』あんど『プチフレイム』ゥ!」


 次の蛇へと向かおうとしたところで、合計8つの火の玉が飛んでいく。

 あ、これ終わったかな。


『ケイブスネークの牙を入手しました』


「はやい」


「まあ、ここら辺の敵には苦戦しようがないしねー。MP使っても回復しちゃうし」


「ほんと、カリンさんはおかしい」


「おまいう」


 おまいう?


「さて、そんなわけでもうすぐボス部屋ですぜ、姉御」


「姉御ちがう。まあ、今回で勝つんでしょ?」


「うむ。その予定」


「なら頑張らないとねー。お互いに」


 デデンと鎮座する大きな門の前で、私達は二人並んで息を吐く。

 そして、同じタイミングで門へと手を伸ばした。


-----


 名前:セツナ

 所持金:3,530リブラ


 武器:居合刀『紫煙』

 防具:戦装束『無鎧』


 所持スキル:【見切りLv.1】【抜刀術Lv.8】【幻燈蝶Lv.2】【蹴撃Lv.4】【カウンターLv.5】【蝶舞一刀Lv.2】

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