また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記
一色 遥
第一章『広がる世界』
第1話 キャラメイク!
「ねえ、雪奈もやろうよー! フリフロ、面白そうだよー?」
「ええー? でも私、ゲームとか苦手だよ?」
「大丈夫。ゲームだけどVRゲームだから、運動神経抜群の雪奈なら問題ないって!」
「そうかなぁ……いろいろ難しそうだけど……」
私こと、
圭は小学校からの友達で、体を動かすことが好きな私とは逆に根っからのインドア派で、趣味は全然違うのにも関わらず、なんだかんだと話かけてくれる貴重な友達だった。
でも、そんな圭に勧められるまま少し前に
「システム面なら私が教えるから! 私、雪奈と一緒にゲームしたいなー?」
「……もう。分かったわよ」
「ホント!? ホント!? 雪奈大好き!」
スマホのスピーカー越しに大きな声が響き、私はスマホを耳から離しつつも、分かりやすい圭の反応に笑ってしまう。
ともあれ、そんなわけで私は圭と一緒に、フリフロこと新作VRゲーム『Freelife Frontier』をプレイすることになったのだった。
◇
あの電話から数日経ち、夏休みを満喫していたころ、ついにフリフロのサービスが開始された。
サービス開始前にシンギュリアへインストールしておいた私は、シンギュリアをかぶり、ベッドへと横になった。
あとはフリフロを起動すれば、大丈ぶ……ぅ……。
ふっと眠りから覚めるような感覚で目を開くと、そこにはどこまでも続く草原と、淀みの無い綺麗な青空が広がっていた。
頬を撫でる風もとても優しくて、ここが本当にゲームの中なのかと疑ってしまうほどにリアリティに溢れていた。
『こんにちは。新たなる旅人よ』
そんななか、急に声が響く。
声質は機械音声だけど、妙に流暢で、機械で変換してるだけの声っぽいかも。
「えっと、誰?」
『私は、旅立ちの準備をお手伝いする者です。まず最初に、Freelife Frontierで過ごすあなたの名前を教えてください』
「名前? そのままはダメって圭も言ってたし、んーせつな? カタカナのセツナにしたらちょっとカッコいいかも」
私がそう呟いた瞬間、目の前にウィンドウが開き、セツナと大きく表示された。
その名前で問題ないと思ったのを認識したのか、少ししてウィンドウは静かに消えていき、『では次に、アバターの作成に入ります』と声が響く。
すると今度は目の前に、鏡らしきものと、項目が並んだウィンドウが現れた。
『各項目を変更すると、すぐあなたの姿へと反映されます。鏡を見ながら、姿の調整を行ってください』
なるほど、次は外見の設定。
でもなんというか、とても機械的なシステムで、ちょっと怖いかも。
もう少し柔らかい感じにならないかな。
『かしこまりました。フレンドリー設定へ切り替えます』
「……え?」
『じゃあ、外見の設定をしちゃいましょう! 大きく変化をつけることも可能ですよ!』
「え、えっと……はい?」
急に変わっちゃうと、それはそれで困っちゃうんだけど。
でも、外見設定かぁ……。
『ちなみにセツナ様、ゲームのなかで誰かと待ち合わせなどされていたりしませんか?』
「え? うん、友達と」
『なるほど。でしたら、大きく変えない方が良いかもしれませんね。お互い気づきにくくなってしまう他、“えっ、そういう趣味があったの……?”ってドン引きされちゃうかもしれませんし』
「そ、そうなんだ……。なら、元の自分に近い姿にすることにしようかな」
あ、でも圭は「そのままはやめた方がいいよ! リアルバレとかもあるし」って言ってたかも。
うーん……髪の色とか長さとかだけ変えようかな。
それだけでも結構イメージって変わるし。
『分かりました! では、ちぇーんじ!』
「えっ!?」
『イメージを読み取ってみました! どうですか?』
「へー髪が長いのも結構似合ってるかも。リアルでは邪魔で短いから新鮮だし」
目の前の鏡に映る、白銀の髪色をした私のアバターが、私の動きに合わせて頭を動かしたり、体を動かしたり。
イメージも結構違うから、リアルバレする確率は結構低くなりそうな気がする。
胸はーまぁ弄ったのがバレたら恥ずかしいし、絶壁ではないから良いよね……いいんだ、運動しやすいから……。
でも、すごいなぁ……イメージを読み取って反映まで出来ちゃうんだ。
『手動で動かすよりもスムーズに反映できるので、開発時から結構評判が良いんですよ』
「じゃあもしかして、サポートさんのイメージを想像したりしたら……むむむむむ……」
『あはは。じゃあイメージ通りにていっ!』
掛け声と共に、ポンッと高校生くらいの美少女が現れ、私に笑顔を見せる。
姿形もイメージ通り、薄いピンク髪の可愛らしい子だね。
身長は私と同じくらいで、その外見はデータと言われないと、本当に人にしか見えないレベル。
天使が着ていそうなポンチョみたいなワンピースを着ているのが、ゲーム感あっていいと思う。
『さてはて、ご好評頂けたところで、次はこのゲームのキモ。スキル選びのお時間です!』
その言葉と同時に私の前から鏡が消え、超巨大なウィンドウが現れる。
ズドーンって感じ。
そこには、全部で100を越えるスキルが表示されていた。
『今表示されてるのは、全部このゲームの中で取得することができるスキルの一覧です』
「すごい量……見るだけでもすごい時間がかかりそう」
『ふっふっふ、驚くのはまだ早いですぞ。……実はここに表示されているのは、ほんの一部。ゲームスタートの時に所持できるスキルなのですから』
驚く私へと向き直り、彼女はドヤァと胸を張る。
ちょっとかわいい。
『ふふん。それでどうでしょう? この中から三個選んでゲームスタートできるんですが、選べそうです?』
「すっごく時間がかかりそう、かな?」
『一応、0.000001%で超レアスキルがゲットできるスーパーランダムモード! があるんですけど、どうします?』
「それって、いわゆるガチャ?」
『はい! ただ、スーパーランダムモードはリセマラ不可です。やろうとしても生体認証で弾いちゃいます』
生体認証で弾くってことは、スーパーランダムモードは一回しかできないってことなんだろうなぁ。
でも、スキルは後からも取れるし、やってみるのもいいのかな?
『このモードは手軽ですが、戦闘スキルが出ない場合もあり、戦うことが大変になる場合もあります。また、使い道の難しいスキルばかり揃ってしまうこともあります……。そして、リセマラ不可なのでデータを作り直しても、スキルは変更不可になるのです……』
「あー……」
『それでも、スーパーランダムモードをやりますか?』
「うーん……」
そう言われるとちょっと怖いんだけど、でもやりたいことも特に決まってないんだよね。
だから、戦闘スキルが出なかったらその時はその時でもいいかな?
長く続くかもわからないし。
「うん。スーパーランダムモードにします!」
『わ、わかりました! では行きますよー!』
彼女が声を上げると、巨大ウィンドウが消えて、代わりによく見るスロットが現れた。
ただ、大きさがすごく大きいんだけど。
『気合いをいれて、レバーを下ろしてください!』
「すぅ……はぁ……よし!」
気合いをいれてから、全身を使って巨大スロットのレバーを下ろす。
すると、ガシャンガシャンガシャンと音がして、スロットが回り始め……パァンと音がしてロールが止まった。
「【見切り】【抜刀術】【
『……うわぁ』
「ど、どうしたの? そんなドン引きするみたいな顔で」
『出しちゃいましたね。0.000001%のスキル……』
「そうなの!?」
『まず最初の【見切り】は戦闘補助用のスキルですね。相手の攻撃の予兆を感じられるようになるスキルです。ピキーンって感じに、なんとなく感じられるとか、閃くみたいな感じです』
彼女の説明に、私は「ふむふむ」と頷いて、次の言葉を待つ。
『次の【抜刀術】は、本来【刀術】から派生するスキルです。居合い専門の戦闘スキルです』
「派生スキル……ってことは、一つ先のスキルってことだよね?」
『その通りです! ちょっと使いにくいスキルですが、見栄えは最高ですよ! そして最後の【幻燈蝶】ですが……』
そこまで口にして、彼女はうーんと言いよどむ。
きっとこれがレアなスキルなんだろうなー。
『【幻燈蝶】は、幻の蝶になるスキルです。アバターが霧散して、実体のない多数の蝶々になります』
「……えっと?」
『使ってみれば分かると思いますので、あとはセツナ様ご自身で体験してみてください!』
あっ、説明を投げられた!
『というわけで、キャラメイクは終了! お疲れ様!』
「えっ、もう!?」
『そうだよー! それじゃ、最初の街“アルテラ”に送るからFreelife Frontierの世界、楽しんでねー、いってらっしゃーい!』
「え、ええー!?」
彼女が言い切るのが先か、私の身体から光が溢れ……足場が消えたような浮遊感と共に、まるで瞼を閉じたみたいに視界が真っ暗に染まり、次に目を開けたときには、ファンタジーな街並みが広がっていた!
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名前:セツナ
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