また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記

一色 遥

第一章『広がる世界』

第1話 キャラメイク!

「ねえ、雪奈もやろうよー! フリフロ、面白そうだよー?」


「ええー? でも私、ゲームとか苦手だよ?」


「大丈夫。ゲームだけどVRゲームだから、運動神経抜群の雪奈なら問題ないって!」


「そうかなぁ……いろいろ難しそうだけど……」


 私こと、緋石雪奈あかしゆきなはベッドに寝転びながら、友人である猿渡圭さわたりけいと電話していた。

 圭は小学校からの友達で、体を動かすことが好きな私とは逆に根っからのインドア派で、趣味は全然違うのにも関わらず、なんだかんだと話かけてくれる貴重な友達だった。


 でも、そんな圭に勧められるまま少し前にシンギュリアVR機器は買ってたんだけど、私の部屋の置物になってるんだよね。


「システム面なら私が教えるから! 私、雪奈と一緒にゲームしたいなー?」


「……もう。分かったわよ」


「ホント!? ホント!? 雪奈大好き!」


 スマホのスピーカー越しに大きな声が響き、私はスマホを耳から離しつつも、分かりやすい圭の反応に笑ってしまう。

 ともあれ、そんなわけで私は圭と一緒に、フリフロこと新作VRゲーム『Freelife Frontier』をプレイすることになったのだった。



 あの電話から数日経ち、夏休みを満喫していたころ、ついにフリフロのサービスが開始された。

 サービス開始前にシンギュリアへインストールしておいた私は、シンギュリアをかぶり、ベッドへと横になった。

 あとはフリフロを起動すれば、大丈ぶ……ぅ……。



 ふっと眠りから覚めるような感覚で目を開くと、そこにはどこまでも続く草原と、淀みの無い綺麗な青空が広がっていた。

 頬を撫でる風もとても優しくて、ここが本当にゲームの中なのかと疑ってしまうほどにリアリティに溢れていた。


『こんにちは。新たなる旅人よ』


 そんななか、急に声が響く。

 声質は機械音声だけど、妙に流暢で、機械で変換してるだけの声っぽいかも。


「えっと、誰?」


『私は、旅立ちの準備をお手伝いする者です。まず最初に、Freelife Frontierで過ごすあなたの名前を教えてください』


「名前? そのままはダメって圭も言ってたし、んーせつな? カタカナのセツナにしたらちょっとカッコいいかも」


 私がそう呟いた瞬間、目の前にウィンドウが開き、セツナと大きく表示された。

 その名前で問題ないと思ったのを認識したのか、少ししてウィンドウは静かに消えていき、『では次に、アバターの作成に入ります』と声が響く。

 すると今度は目の前に、鏡らしきものと、項目が並んだウィンドウが現れた。


『各項目を変更すると、すぐあなたの姿へと反映されます。鏡を見ながら、姿の調整を行ってください』


 なるほど、次は外見の設定。

 でもなんというか、とても機械的なシステムで、ちょっと怖いかも。

 もう少し柔らかい感じにならないかな。


『かしこまりました。フレンドリー設定へ切り替えます』


「……え?」


『じゃあ、外見の設定をしちゃいましょう! 大きく変化をつけることも可能ですよ!』


「え、えっと……はい?」


 急に変わっちゃうと、それはそれで困っちゃうんだけど。

 でも、外見設定かぁ……。


『ちなみにセツナ様、ゲームのなかで誰かと待ち合わせなどされていたりしませんか?』


「え? うん、友達と」


『なるほど。でしたら、大きく変えない方が良いかもしれませんね。お互い気づきにくくなってしまう他、“えっ、そういう趣味があったの……?”ってドン引きされちゃうかもしれませんし』


「そ、そうなんだ……。なら、元の自分に近い姿にすることにしようかな」


 あ、でも圭は「そのままはやめた方がいいよ! リアルバレとかもあるし」って言ってたかも。

 うーん……髪の色とか長さとかだけ変えようかな。

 それだけでも結構イメージって変わるし。


『分かりました! では、ちぇーんじ!』


「えっ!?」


『イメージを読み取ってみました! どうですか?』


「へー髪が長いのも結構似合ってるかも。リアルでは邪魔で短いから新鮮だし」


 目の前の鏡に映る、白銀の髪色をした私のアバターが、私の動きに合わせて頭を動かしたり、体を動かしたり。

 イメージも結構違うから、リアルバレする確率は結構低くなりそうな気がする。

 胸はーまぁ弄ったのがバレたら恥ずかしいし、絶壁ではないから良いよね……いいんだ、運動しやすいから……。


 でも、すごいなぁ……イメージを読み取って反映まで出来ちゃうんだ。


『手動で動かすよりもスムーズに反映できるので、開発時から結構評判が良いんですよ』


「じゃあもしかして、サポートさんのイメージを想像したりしたら……むむむむむ……」


『あはは。じゃあイメージ通りにていっ!』


 掛け声と共に、ポンッと高校生くらいの美少女が現れ、私に笑顔を見せる。

 姿形もイメージ通り、薄いピンク髪の可愛らしい子だね。

 身長は私と同じくらいで、その外見はデータと言われないと、本当に人にしか見えないレベル。

 天使が着ていそうなポンチョみたいなワンピースを着ているのが、ゲーム感あっていいと思う。


『さてはて、ご好評頂けたところで、次はこのゲームのキモ。スキル選びのお時間です!』


 その言葉と同時に私の前から鏡が消え、超巨大なウィンドウが現れる。

 ズドーンって感じ。

 そこには、全部で100を越えるスキルが表示されていた。


『今表示されてるのは、全部このゲームの中で取得することができるスキルの一覧です』


「すごい量……見るだけでもすごい時間がかかりそう」


『ふっふっふ、驚くのはまだ早いですぞ。……実はここに表示されているのは、ほんの一部。ゲームスタートの時に所持できるスキルなのですから』


 驚く私へと向き直り、彼女はドヤァと胸を張る。

 ちょっとかわいい。


『ふふん。それでどうでしょう? この中から三個選んでゲームスタートできるんですが、選べそうです?』


「すっごく時間がかかりそう、かな?」


『一応、0.000001%で超レアスキルがゲットできるスーパーランダムモード! があるんですけど、どうします?』


「それって、いわゆるガチャ?」


『はい! ただ、スーパーランダムモードはリセマラ不可です。やろうとしても生体認証で弾いちゃいます』


 生体認証で弾くってことは、スーパーランダムモードは一回しかできないってことなんだろうなぁ。

 でも、スキルは後からも取れるし、やってみるのもいいのかな?


『このモードは手軽ですが、戦闘スキルが出ない場合もあり、戦うことが大変になる場合もあります。また、使い道の難しいスキルばかり揃ってしまうこともあります……。そして、リセマラ不可なのでデータを作り直しても、スキルは変更不可になるのです……』


「あー……」


『それでも、スーパーランダムモードをやりますか?』


「うーん……」


 そう言われるとちょっと怖いんだけど、でもやりたいことも特に決まってないんだよね。

 だから、戦闘スキルが出なかったらその時はその時でもいいかな?

 長く続くかもわからないし。


「うん。スーパーランダムモードにします!」


『わ、わかりました! では行きますよー!』


 彼女が声を上げると、巨大ウィンドウが消えて、代わりによく見るスロットが現れた。

 ただ、大きさがすごく大きいんだけど。


『気合いをいれて、レバーを下ろしてください!』


「すぅ……はぁ……よし!」


 気合いをいれてから、全身を使って巨大スロットのレバーを下ろす。

 すると、ガシャンガシャンガシャンと音がして、スロットが回り始め……パァンと音がしてロールが止まった。


「【見切り】【抜刀術】【幻燈蝶げんとうちょう】?」


『……うわぁ』


「ど、どうしたの? そんなドン引きするみたいな顔で」


『出しちゃいましたね。0.000001%のスキル……』


「そうなの!?」


『まず最初の【見切り】は戦闘補助用のスキルですね。相手の攻撃の予兆を感じられるようになるスキルです。ピキーンって感じに、なんとなく感じられるとか、閃くみたいな感じです』


 彼女の説明に、私は「ふむふむ」と頷いて、次の言葉を待つ。


『次の【抜刀術】は、本来【刀術】から派生するスキルです。居合い専門の戦闘スキルです』


「派生スキル……ってことは、一つ先のスキルってことだよね?」 


『その通りです! ちょっと使いにくいスキルですが、見栄えは最高ですよ! そして最後の【幻燈蝶】ですが……』


 そこまで口にして、彼女はうーんと言いよどむ。

 きっとこれがレアなスキルなんだろうなー。


『【幻燈蝶】は、幻の蝶になるスキルです。アバターが霧散して、実体のない多数の蝶々になります』


「……えっと?」


『使ってみれば分かると思いますので、あとはセツナ様ご自身で体験してみてください!』


 あっ、説明を投げられた!


『というわけで、キャラメイクは終了! お疲れ様!』


「えっ、もう!?」


『そうだよー! それじゃ、最初の街“アルテラ”に送るからFreelife Frontierの世界、楽しんでねー、いってらっしゃーい!』


「え、ええー!?」


 彼女が言い切るのが先か、私の身体から光が溢れ……足場が消えたような浮遊感と共に、まるで瞼を閉じたみたいに視界が真っ暗に染まり、次に目を開けたときには、ファンタジーな街並みが広がっていた!


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 名前:セツナ

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