第25話 オブラートに包んで




 

 「言わなきゃいいと思う‥‥。」



 「「「「「「「はぁ~!?」」」」」」」





………………………





 『あっ、ねぇねぇ藍浦ちゃん』

 

 「ひゃいっ!?」


 『あぁえーとね、連盟から電話きたわ、

 ハイ』


 「あ、ありがとぉ~笑‥‥」


 『うん‥‥』


 「いける‥‥? 結ちゃん‥‥ゴニョゴニョ‥‥」

 「ウンウン‥‥華、もう言っちゃえ凛奈‥‥」


 『‥‥‥‥‥‥』


 

 おぁ? なんか今日みんな静かだなぁ‥‥

あ、いや! 妙に俺によそよそしいだけか!?

 なんでぇ‥‥? 藍浦ちゃんも焦ってるぽいし、小栗ちゃんと瀬々木ちゃんはコソコソ話してるっぽいし‥‥。

 なんか俺、嫌われるような事したっけ‥‥?



 「ねぇねぇとーやくぅーん!」


 『あぁハイ』


 「ハイっ、これお給料だってー! 頑張っ

 てくれて嬉しいナァ~‥‥!」


 『えぇ今ぁ!?』


 「よかたねェェ~‥‥! これからもヨロシ

 クねぇ~! あぁ! ウチこのあとお勉強

 しなきゃあ~! 受験生ダモンねぇ~ジャア

 ネェ~~~!!!」 バビューン!


 『うぇっ!? あぁぁちょっとぉ!?』


 

 八重さんは早口で俺に茶封筒を渡した後、

すごいスピードで足を竜巻にして帰っていってしまった。

 なんかやけにニコニコしてて、焦ってたか?



 「じ、じゃあ私もぉ~‥‥」


 『!?』


 

 ううんッ!? 藍浦ちゃんまで‥‥?



 「アァ、私学校行かなきゃァ~!」


 「私も門限が‥‥」


 『!!?』



 小栗ちゃんに瀬々木ちゃんまで、ぞろぞろと彼女たちは退出しようとする。

 え、なに、どういうこと?



 『小栗ちゃんッ!? もう業後だr‥‥』



  バタアァァン‥‥



 『‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥行っちゃった‥‥‥。』



 こうして俺しか居ない会議室が出来てしまった。えぇ‥‥何ぃ?

 今日は数人来るって言うから急いで学校から帰って来たというのに、残ったのは手の上のお給料だけ‥‥。



 『うげえええっ! 三万!?』



 誰も居なくなったから封筒を開いてみたけれど、三万円も入っていた。なんじゃあこりゃあ!?

 


 『ウソだろ‥‥てか、なんか不揃いだな』



 なんでか万札三枚でなく、千・五千・万、小銭がいくつか合わさってキレイに構成された三万円。

 流れで応募して、流れで採用されて、流れで働いて。

 冗談半分‥‥いや8割でここまできた結果がこれである。



 『あは‥‥あははァ! 俺も帰ろっ!

 こいつを何に使ってやろうか!』



 突然に起こったことに頭がお猿さんとなりながらも、色んな意味でウキウキして俺も荷物をまとめた。

 裏で起きていることの一つも知らずに‥‥。

 

 

 


ーーーーーーーー




 

 「よし‥‥もう帰ったっぽい‥‥!」



 結が階段を下まで覗き込み、確信を持った声で言った。



 「ひとまず一件落着だね‥‥ふぅ」


 

 さすがに七奈美でも緊張してたみたい、安堵して胸を撫で下ろしている。



 「うわぁ‥‥なんかサポーターさんを騙して

 るみたいだ‥‥!」


 「やめてくださいよぉ~なんか罪悪感あるじ

 ゃないですかぁ!」


 「サポーターの頭がわるわるで助かった‥‥」


 『それは言い過ぎでしょ‥‥!』

 

 「てか、良かったん‥‥? ウチらのお小遣い

 から出しちゃって」


 「いいわよ、どうせサポーターお猿さんで

 前髪も脳味噌もすかすかでしょ‥‥、お金だっ

 ていくら私たちのだからって、報酬として連

 盟から貰ってるだけだし‥‥、出世払いってこ

 とで‥‥」


 「出世払いって! このままとーや君が二十

 はたちになるまで待つの!? あと小羽言い過ぎ

 な‥‥」


 「ううぅ‥‥私のスイーツ代がぁ‥‥」


 「ち、千咲ちゃん‥‥、大丈夫! これあげ

 るから!」


 「アメちゃん! ほんとに!? ありがとぉ

 ~華ちゃーん!」


 「えへ、えへへぇ~」


  

 やっぱり千咲は味噌が詰まってないかも‥‥

 それはそうと、みつ君‥‥は大丈夫か。さっきお猿さんみたいに帰っていったし‥‥。



 「はいっ! もうこれで終わり! この件

 は終わり~!」


 「ちょっ! 小羽!?」


 「仕方ないでしょ~もう、サポーターが居な

 かったら私たち活動できないんだから‥‥。」


 「まぁ‥‥それはそうだけど‥‥でも、ウチ

 らライセンスもロクに預けてないでしょ?」


 「うぅぅぅ~! ライセンス委託義務まで

 無視しちゃってるんですぅ~!?」

 

 「おぉ、落ち着いて華ちゃん~!」


 「でもっ! みなみ先輩‥‥原則ですよね

 ぇ!」


 「そっ、そうだけどさぁ~!」


 「もぉ~! 一回静かにっ!」



 混乱を引き裂くように小羽が口を挟む。



 『こ、小羽‥‥? でも‥‥!』


 「とりあえずっ! 今はサポーターのこと

 22歳で連盟に通してるけど! バレたらま

 ずいでしょ? だからこのまま行くしかない

 の! そうじゃなきゃ私たちも動けない‥‥

 それに‥‥!」

 

 『それに‥‥?』


 「成果を上げれば許して貰えるかもでし  

 ょ‥‥! だから私たちで頑張らなきゃ‥‥!」


 『それ、いけるの‥‥?』


 「やっちゃった以上、仕方ないでしょ‥‥

 サポーターも巻き込んじゃったんだし‥‥!」


 『確かに‥‥私たちのせいで』


 「桃弥くんに迷惑かけるなんて‥‥」


 「ダメだよっ!」


 「ねぇ? だからみんな‥‥」



 全員が身を寄せあって、円を組んで手を合わせる。その中で小羽は、リーダーらしく声を上げた。



 「もっともっと頑張ろう‥‥! 上の人たちが

 許してくれるくらいにっ!」



 その声に続けるように、



 「「「『「「「おぉ~‥‥!」」」』」」」



 私たち八人は後ろめたく小さな声で誓った。

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