第10話 どキツいトレーニング!?



 


 『うはぁぁあ‥! がァ! もームリ!!』


   ドサッ‥!


 思わず倒れこんでしまう。

 きっと見るに堪えないポーズになっていることだろう‥。


 「はーい、満木君の記録55回ね~。」


 「ちょっとウケる~笑! とーや君へなち

 ょこかよ~!」


 味わったことのない疲労が足に溜まる‥。

 呼吸しているはずなのに逆に苦しくなっているようだ。


 『ハァ‥ハァ‥はっ、うはぁ‥も‥限界‥!』


 「ちょっ笑 大丈夫そ? 笑」


 『ぐっ‥ぬぅう‥! ハァ‥‥‥。』


 「あ、喋れない感じ?」


 『はむ‥さむかむにだ‥‥。』


 「アッハハハw 何言ってんのw」パシパシ


 『‥‥‥‥‥ハァ‥ハァ‥。』


 大きく手を叩きながら笑う彼女は〝ギャル系〟魔法少女こと 八重やえ 凛奈りんなさん。

 同じメニューで練習してるはずが、彼女は疲れた素振りすら見せていない。


 『ちょ‥さーせん‥‥一旦、きゅうけぃ‥。』

 

 「wwwwww」


 今度は腹を抱えて笑われる。も‥こっちは必死なんだぞ‥。


 「急にこのメニューはさすがに厳しいよね

 ぇ‥。」


 その通りでございます、白石さん。

 事の発端は今日のトレーニングを始める時であった‥‥‥。



……………………


 土曜日 AM 10:00


 『というわけで‥これが今日のメニューで

 す‥準備運動したら早速やっていきましょ

 う。』


 今日は土曜日、そこそこ追い込む練習が出来るだろう。


 「はーい、しつもーん。」

 

 ん? 八重さん‥?


 『どうしました?』


 「とーや君はやらなくていいんですか

 ~?」


 『えっ‥? お、俺もですか‥?』


 「ねー! みんな!」


   コクコク‥ コクコク‥


 みんな首を縦に振っているじゃあないか。


 「それにコミュニケーションにもなるっし

 ょ? とりま1つだけでもやろーよー。」


 『あ、はいぃ‥‥頑張ります‥。』


 「やっぱ律儀~w」


 ま、まぁ! 俺だってやる意義は十分にある‥。なにせサポーターという立場だからな、俺が出来なくてどうする!

 俺、別に運動苦手なわけでもないし、それに最近は感化されて俺も筋トレ頑張ってみているんだ‥。

 最初のトレーニングはシャトルランか‥‥どれ、試してみようじゃあないか!



……………………



 『ハァ‥ハァ‥ハァ! ぐ‥ハァハァハァ‥』


 はい、んで今に至る。

 ダメでしたね。なんだろう、この即落ち感は。

 さっきから呼吸だけで精一杯である。胸が息を吸うためだけに動いてるよ‥‥。


 「はい、どーぞ。どう‥? 落ち着いてき

 た?」


 『ハァ‥あ、あざす‥。』


 「あはは‥‥もうちょっと休憩しよっか。」

 

 白石さんがスポーツドリンクを渡してくれる。たぶんこれ俺の仕事だ‥。

 ほんと優しいな、白石さん。マジでお姉さんだなぁ‥。

 何もしてないクセにすするスポーツドリンクはうまいよ。 トホホ‥


 「ちょっと~! とーや君、萎えるのはや

 すぎなんだけどw」


 なんか語弊を招く言い方だなぁ‥。

 まぁ、間違いないんだけどね。


 『さ、さーせん‥。』


 「とーや君、50回目くらいでヘトヘトだっ

 たじゃんか! 高2男子でしょ~?」


 今回やったのは一般的な20m式のシャトルラン。トレーニング室でもモノを動かせば場所は意外にもできるものだ。

 正直もう40回目くらいでキツかったのは言わないでおくべきかな。


 「りんは何回くらいだったの?」


 白石さんが八重さんにもドリンクを渡しながら聞いている。マジでお姉さんだわ‥。


 「あー、最近サボってたから‥けっこう落ち

 てたわー。 えっと‥ひゃく‥‥にじゅー‥‥に

 じゅいち‥。あ、122だと思う。」


 『はぁ!? ひゃっ‥ひゃくにじゅうに!』


 「どぉ~! すごいっしょ!」


 『あわわ‥‥。』


 ちなみに俺の学校のクラスで一番出来たやつが117回である。そいつはサッカー部で3年に混じって練習してるくらいのやつだ。

 つまり‥いくら1年違えども、彼女の身体能力はのゴリゴリのサッカー部にまさるということである。


 「まぁ受験生だし、私たちは仕方ない

 よ。むしろよくそこまで出来るね‥。」


 「そーゆーななみも3桁ならいけるっし

 よ? 変わらんわw」


 ここにはバケモンしかおらんのかね。さすが先輩方といったところだ。

 となると他の年下の子たちはどれくらいなんだろ‥?

 と思っていたところだった‥勢いよくトレーニング室のドアが開く。


 「ただいま~♡」

 「あーマヂきつかった~!」

 「あひゅう‥死ぬ‥。」

 

 お! ちょうど来たな。

 今日来ている残りの3人‥藍浦ちゃん、みおうちゃん、小栗ちゃんが帰って来た。

 あの子らはセンターの外周を走りに行ってたそうな。


 『お疲れ様、はいこれ』


 今度は俺がドリンクをみんなに渡す。

 うんうん、サポーターらしさ出とるぞぉ。


 「え、ありがと‥! みつ君!」

 「あ、ありがどう‥ござぁまず!」

 「ありがとぉ~♡ 気が利く♡」


 『あぁ、おつかれさん!』


 こう感謝されると仕事してる感じがするし、やりがいを感じるよな。まぁ、ドリンク渡したくらいなんだけどね。


 「お! とーや君、回復した感じ? も

 う一回やっとく?」


 『あ‥だ、大丈夫です~。』


 なんか疲れが吹き飛んだようだ、いや‥感謝の力というものはすごいよ。

 さすがにもう一回は死んじゃうけど。


 「そーだ、みつ君は何回いけた?」


 『え‥‥! ご、55です‥。』


 「ざぁこ♡ しょぼい♡ 早すぎ♡」


 うっ‥うっ‥(泣) 俺だって頑張ってるのに‥。 

 ハッ‥! そうだ‥。


 『そ、そういう君らは何回なんだ‥?』


 「121ぐらい~♡」

 「うーん‥109だったと思うけどぉ‥。」

 「私‥はまだ97とかです‥えへへ‥。」


 バシッ! (クソォ‥!) 


 反射的に膝をはたいてしまった。

 もうダメや‥勝てへんよ‥。



……………………


 

 『はい、じゃあこれで今日のトレーニン

 グはおしまい! お疲れ様でした~。』


 「かえろ~♡」

 「はひゅ‥疲れたぁ‥」


 なんか部活っぽくていいよな、こういう風景。このへんは普通のクラブチームって感じだもんなぁ。

 さ、俺も帰ろ~! 疲れたし、久々に昼寝でもしよっかなぁ‥。

 そう思って伸びていた時だった。


 「ねね! とーや君、今からヒマ? ちょ

 っと付き合ってよ?」


 『え‥な、何ですか‥!?』


 「いいから、いいから‥笑」






 ニヤニヤしながら八重さんが言う。その姿に少しドキッとしてしまった自分が居たのは認めざるを得ない。

 いったい何なのだろうか‥。


 


 

 


 


 


 




 

 

 

 

 


 


 

 

 


 



 


 


 


 


 

 


 

 

 





 




 


 

 

 



 

 


 


 


 

 

 

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