第11話 先輩のお誘い
「んふふ~! おーいしい!やっぱカロリ
ーだわ~!」
『そ、そーっすねぇ‥!』
おいしそうにバーガーを頬張る八重さん、ご満悦のようで何よりだ。
立ち込めるいい匂い、ポテトの揚がる音、そう、ここはバーガーショップである。
なぜ俺がここに居るかと? それは
……………………
「ねね! とーや君、今からヒマ? ちょ
っと付き合ってよ。」
『え‥な、何ですか!?』
「いいから、いいから‥笑」
(つ、付き合う!? えと‥これはどういう意
味合いなんだ‥?)
抱いてはいけないタイプの期待が胸をよぎる。
「うち、お腹空いちゃったんだ~、だか
らぁ‥とーや君もどうかな~って。」
あ‥やっぱり‥そんなもんだよ。
「ね~ね~、奢るから行こーよー!」
『あ‥はは‥そうですねぇ‥。』
これはアレだ‥先輩からのお誘いだ‥!
断る訳には‥。
……………………
という訳で今に至る。
だが、来たはいいんだけれど‥。
「なんか静かじゃん? 遠慮せずに食べな
よ?」
『あ、ありがとうございます‥』
彼女0ッ! 交際経験0ッ!
したがって‥俺は急に年上の、しかも異性の先輩と話せるような実力は持ち合わせていない。
正直、今も緊張して冷や汗が出るレベルである。
「なにぃ~笑 とーや君、緊張してん
の?」
図星ィィッ!
どうしよ‥何て会話すればいいんだろ‥。
『はぃ‥ちょっとだけ‥。』
「ふふっ‥ウブで可愛い‥。」
『っつ‥!』
揺れる金髪、少しからかうような笑顔、この人よく見たらけっこう美人‥。
不意打ちにドキッとしてしまった。恐らく、というか確実に俺の頬は赤らんでいるだろうに。顔が熱い‥。
「はははw 顔赤いよ? もーそんな
緊張しなくていいのに~!」
『あっはは‥! さーせん、変ですよね。』
目線がポテトに
は、恥ずい! 経験無いのがバレバレじゃないか‥。
「そーいえばとーや君、もう仕事慣れた
~?」
『まだまだですね‥シャトルランもしょぼ
かったですし‥。』
「マジそれなw 死にかけだったじゃんw
それにサポーターの本業じゃないしww」
また笑われてるなぁ。
ちなみにあなたが言ったからやったんですですよ、八重さん?
「ふふw でも面白い子は好きだよ‥。」
『えっ‥! あ‥!』
妙に色気のある笑み。
どくどくと血が回る感覚、もしかしてこれがトキメキってやつなんだろうか‥。
「かーわいいw‥‥」
すかさず眼を逸らす。
やばいな、顔まで熱くなってきた。
『あ、ははは‥!』
即座に飲み物を口に運ぶが、飲んでも飲んでも口が乾いているようだ。
加えてさっきの八重さんの笑顔が頭から離れない。もぉ~どぉしよォ‥。
「ごちそうさま~! とーや君~早くし
ないと置いてっちゃうぞ~笑」
『なっ! あぁ、待ってください~!』
「やーだよーw べ~w」
『くぐ‥‥急げ‥‥ゲホッ! ゴホッ‥! ゴホ
ッ!』
「wwwww」
今度は膝に手をついて笑われている。
あぁ‥‥サポーターなのに1ミリも格好ついてないや‥。マジ萎えるって感じだな‥ハハ‥。
……………………
『ご馳走さまでした。すいません、奢
って貰っちゃって‥。』
「あー、全然おけ! 誘ったのうちだし、
こっちこそありがとー!」
店を出て、ぼちぼち歩き始める。
「それに立派なサポーターともお話できた
しぃ~!」
『いえいえ‥そんな、俺はまだまだで
す‥。なんもしてないクセに助けてもらっ
てばかりで‥。』
本当に。
まだこの仕事始めて一週間の身だ。
一瞬、あの時の藍浦ちゃんや瀬々木ちゃんの顔が浮かべてしまう。
「でもアレじゃん、頑張ってくれてた
し、私は嬉しいかったけど?」
『え‥、なんで‥。』
「だって始めたばっかでしょ笑 誰だっ
てキツいじゃん? その割にとーや君いろ
いろ頑張ってんじゃん! あと、面白いw」
『‥‥‥!』
「だからさ、なんてゆーか‥これからもよ
ろ! って感じ!」
『あ、ありがとうございます!』
「ふふっw やっぱ律儀、ウケるわ~w
じゃーまた今度、バイバイ~!」
『はいっ‥‥!』
手を振りながら振り返る八重さん。
歩き出す彼女の髪は金髪のせいか、夕暮れの今には一際輝いて見える。
焦がれているのは日の方か俺の方か、嬉しさで知るよしもないようだ。
ーーーーーーーー
「あっ! ななみ~?」
『えっ、りんじゃん! どしたの~?』
珍しい、コンビニでりんと会うなんて。
まぁ、さっきまで一緒にトレーニングしてたんだけどね。
「ちょっととーや君と話してきたー!
やっぱあの子律儀だわ~w」
『ふふ、やっぱり? まぁ、礼儀正しい
ってことだよ。
でも何で? 知り合いとかだったっけ?』
「あー別に、ちょっと話してみたいと思っ
ただけ~」
『そっか、なんだかんだりんって面倒見い
いよね~。いつも新しい子に声かけてる
し、今回はサポーターだけど。』
「そんなことないわ~、てかななみもでし
ょ~〝お姉さん〟だしw」
『はいはい』
「ぜーったい思ってないじゃんww」
『はいはい笑』
りんはこう見えて優しい。
置いてきぼりみたいなのを無くそうとするタイプなんだと思う。
きっと満木君のことを元気づけて来たに違いない‥、あの子はちょっと落ち込んでいたから。
「うちらも、ちゃんとした後輩が増える
と安心だわ~! 受験生だし~。」
『そうそう、その分お勉強しましょうね
ぇ~。』
「げっ‥! そうだわ‥w
じゃ、うちこれから塾だから、バイバイ
~!」
『またね~!』
りんは大きく手を振り帰っていく。
同じ先輩として頑張らなきゃ‥。そうだ、私も満木君と話してみよう。
少しでも支えになれたらいいな‥。
……………………
「ぶえっくしょん!! あーあ‥。走りすぎ
たか‥? もう寝よ‥‥‥。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます