第15話 帰ろう





 『はぁ‥! ここだ‥!』


 ちくしょう‥‥なんでもう片方が居るんだよ‥聞いてないぞ‥。いや、見てないだけだな。


 『みんな! 一応俺が先に確認する、少

 し待機で‥。』


 「‥‥うん、了解。」

 「分かりました!」

 「は~い!」


 『よし、行くぞ‥‥。』


 俺は恐る恐る示されたもう片方の場所へ入っていく。

 

 やはり‥‥ここも人気を感じなく、不気味さが溢れている。

 おや? あれは‥‥


 『人‥‥か? しかも二人‥。』


 怪しい‥‥、手に何か持ってるし、話し合っている。

 まさかアイツらも化物と同じ類いの‥‥!?


 「お~い!」


 んやべっ! 目ぇ合ったぞ‥‥。

 もしさっきみたいな化物だったらどうすんだ‥?

 チキンな俺はただちに振り向き、逃げの体制を取ったが‥。


 「とーや君! マジナイス~!」


 あやや? 化物じゃない‥‥八重さん?


 『え、どうして八重さんがここに‥‥?』


 「言ったじゃん、任せてって。」


 「そうそう、私たち二人で片付けたの。」


 白石さんも居たのか!


 『そういうこと!?』


 「そゆこと~」


 マジかよ‥‥という事は、先輩方がもう片方をやっといてくれたのか‥‥。

 

 『でも‥どうして分かったんすか?

 それに今日、お二人ともダメなんじゃ‥?』


 「それがねぇ、こはねちゃんがあらかじめ教えて

 くれてたの。リーダーだから連盟から直で連絡が来るようになってるの。

 だから昨日の時点で連盟から注意喚起を受けてたらしくて、それで私たちに伝えてくれてたの。」


 「だからウチらはライセンスを預けておけ

 たってワケ~。」


 「そして少し前にこはねちゃんから連絡

 があったから、一瞬来てたんだ~。」


 『あ‥‥そういうことでしたか‥‥。』


 そうか、俺は何も出来てない。


 『‥‥‥‥‥‥すいません、何もしてなくて‥‥。』


 「全然おけー! 問題ナシ~」


 「そんなに大変じゃなかったし大丈夫だ

 よ。」


 白石さんも八重さんも高3、すなわち受験生なんだ。本当はこんな事してる場合じゃないんだろう。なのに‥‥。


 「何でそんな暗い顔してんの? とーや

 君?」


 『ほら‥俺、何の役にも立ってないじゃない

 ですか‥。』


 「それは説明してないウチらが悪いわw」


 「その通り‥笑」


 『説明‥‥?』


 何の事だろうか? 

 そう考えていると後ろから声がする。


 「あれ!? 凛奈先輩に七奈美先輩!」

 「驚き‥‥。」

 「なんで二人がいるの~!?」


 あ‥ゴメン! 忘れておった‥。


 「あ、そっちもおつ~!」

 「ちゃんと倒せたんだってね、えらいえら

 い。」

 「でしょ! ありがとー!」

 「びっくりした‥‥桃弥くん死んだかと‥‥。」

 「えぇ! もしかして忘れられてまし

 た‥‥!?」


  …………


 『えと‥ゴメンね‥笑』


 「「むぅ‥‥‥!」」


 瀬々木ちゃんと笹山ちゃんは頬をぷくぅと膨らませ、こちらを少しにらんでいる‥‥‥のか?

 言っちゃいけないが、正直可愛らしく見えてしまった。

 って‥いかん! 年下の子たちをそんな目で見るとは‥しかも俺はサポーターだぞ! 


 「じゃ、帰ろっか~」


 『そ、そうしましょう!』


 通りすがりの助け船‥‥白石さんナイス!


 「逃げられた‥‥。」

 「今回は許します‥!」

 

 不服な表情の二人が俺を見つめる。


 『トホホ‥‥‥。』




……………………


 



 「でさ~! とーや君、急いで食べてむせ

 てたの~w 超変な顔してたわw」


 『ちょっと‥‥恥ずいっすよ‥。』

  

 「見てみたかったなぁ~笑」

 「え、サポーターさんが?」

 「気になる‥。」


 『うぉぉん‥‥。』

 

 もうじき梅雨ですね‥‥。

 まるで自分の気持ちを表すような曇天の中、俺たちは任務? を終えた帰り道を歩いていた。

 もう完全にイジられてんなぁ‥。


 「満木君、ありがとね。お陰ですぐに戦え

 たよ~。 」

 

 『いえ、そんな‥‥でも少しでも役に立ちた

 くて‥。』


 「えらいぞ~! 向上心!」


 『あ、あざす‥。』


 やったぜ。お褒めの言葉を頂いたよ。


 「ほぉんと~笑、えらぁい♡」


 前から聞き覚えのある声、人間という存在をナメてるようなこの口調‥‥さては!


 「お疲れ‥‥え? みつ君いるじゃん。」

 「お、お疲れさまですっ!」


 『えぇ? 藍浦ちゃん、みおうちゃ

 ん、それに小栗ちゃん‥‥! なんでいるん

 だ?』


 本当になんでいるんだよ‥‥!?

 この子ら今日は担当じゃないだろうに。


 「なーに言ってんのぉ~? 連絡したの

 私なんだけどぉ笑」 


 「迎えにきたんですよぉ‥‥。」


 「マヂお疲れ~。」


 『え、ありがとう‥‥ね。』

 

 はぁ‥? もしかして純粋に優しさで迎えに来た‥‥?

 なんだこの子たち! 変な所で優しいよなぁ‥‥。


 「マジかぁ、来てくれたの! もう大好き

 ~!」


 「りんな‥‥近いぃ。」


 八重さんとみおうちゃんがイチャついておる。仲良いんだなぁ、みんな。


 「ねね! みおう! こないだとーや君が

 さぁw」


 『それはもういい~!』


 「あ、やば‥今思ったけど、まだとーや君に

 説明してなかったわ‥‥。」


 『なんです?』


 「あの、アイツら‥ヤバい化物みたいな

 の。」


 「ちょうどいいから説明しとこっか。」


 『‥はい。』


 思わず身構えてしまう。

 俺だって一応あの化物を何体か見てきた訳だ。そろそろ奴らが何者なのか知りたい所ではある。と言うか何も知らずにサポーターが務まるはずもない‥‥。


 「満木くんもあの化物たちを見てたよ

 ね?」


 『はい、今回もその前も何度か‥‥。』

 

 「あの化物たちはね、〝けがれ〟って言って

 ね。所謂いわゆる、怪物みたいなものなの。」


 ほう‥‥穢か‥‥。

 魔法少女が居れば、対に当たる怪物も居るわけだ。

 

 「私たち魔法少女の目的は穢の撲滅。未然

 に被害者を出さないようにしたりね。」


 「ちょくちょく連絡入れてくる連盟っての

 は、ウチら魔法少女を管理してるとこ。

 基本、連盟から要請来たら行く的な~?」


 『そうだったんですか‥。

 じ、じゃあ魔法少女ってみんなやってる

 んですか!?』


 「ううん、一部の人だけ。間違えても魔法

 少女のサポーターやってるとか言っちゃダ

 メだよ? 変な子だと思われちゃうし笑」


 そう言って白石さんは口に指を当てる。片目を開けて微笑むその仕草は、俺にはまだ少々早かったようだ‥‥顔が熱い。


 「ふふっ、ほんとウブだなぁ笑」


 人の前ですよ‥‥? 恥ずいですよ?

 この人も整った顔立ちしてんな‥やはり先輩方にはかなわん。


 『んじゃ‥! 帰りましょー!!』


 百八十度体を回転させ、誤魔化しながら歩き出す。


 「そーしよっか~。ほら、満木くんも急げ

 ~置いてっちゃうぞぉ~笑」

 

 『ああっ‥‥ちょっとー!』

 

 長く伸びた髪を揺らし、白石さんは歩き出す。

 気付けば俺のそばには白石さんしか居なかった。

 前を確認すれば、楽しそうに談笑しながら帰っていくみんな。あの子ら、歩くの速すぎだ‥‥。


 『ははっ‥‥待って下さいよ~!』

 

 「おーい! とーや君、置いてくぞー!」

 「みつ君、急げ~。」

 「がんばれ~!」

 「ざぁこ♡ 足遅い♡ 前髪すかすか♡」

 「あ、サポーターさん!」

 「置いてきぼりにしてたぁ~!」

 「可哀想な桃弥くん‥‥。」

 

 荷物を抱え、駆け足で進んでいく。

 なんか、こういうのいいな。

 間違いなく、この子たちには暖かさというものを感じる。それもメンバーだけじゃなく、俺に対しても。

 心なしか、前より空は晴れているようだ。


 


 



 




 

 

 

 


 


 

 


 




 



 

 

 

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