第14話 散りゆく桜の如く




 『こんな感じなのか‥。』


 最近よく、開いた口が塞がらなくなる。

 何でったって、そりゃあそう。非現実にも程がある。

 自分と同い年くらいの少女たちが化物と傷つけ合い、血を流す。

 化物も化物でいびつ‥‥最後には彼女たちの手によって灰となって消えてしまった。


 「ただいま‥」

 「戻りました!」

 「ちゃんと倒せたよ! 褒めて~!」


 『お疲れ様‥! みんな‥ケガはないか?』


 「私は平気‥」

 「私も元気です! でも‥千咲ちゃん‥」

 「えへ‥ちょっとね‥でも大丈‥‥」


 『ちょっと見せて‥!』


 「うええっ‥!? なにサポーターさん!」


 咄嗟とっさに千咲ちゃんの腕に触れる。

 よくよく考えたら距離感ミスったかもな‥でも、それ程彼女の事が心配だった。

 俺は物陰で最初から最後まで彼女たちの戦いを見ていたし、もちろんケガをするとこもはっきりと目に収めていたわけだ。

 

 『もう痛みはないか?』


 「あ‥! う、うん‥。」


 千咲ちゃんの傷はしっかり止血され、もう少しだけ跡が残っているぐらいだ。

 さすが瀬々木ちゃんの力‥。


 「ともかく! ナイス撃破だよみんな!」

 「うん‥‥ちゃんとできた‥。」

 「やったぁーー! いぇい!」


 『よくできた‥すごいぞみんな!』


 みんなこちらを笑顔で向いてくれている。

 俺は何にもしてないクセして達成感すら感じている有り様だ‥。


 『ごめん‥‥俺、何も出来なかった‥。』


 そうだ、その通り。


 「「「‥‥‥‥‥‥‥」」」


 なんか静かにさせちゃったか‥‥。

 そりゃそうか、何にもしてない奴がこんな事言い出して‥‥。


 「‥サポーターさん、なんか鳴ってるよ?」


 『えぇ?』


   ピロリン‥‥ピロリン‥‥


 本当だ! しかも鳴ってるのレジ打ち君じゃないか! 

 どうした‥また連盟から?


 『もしもし‥すいません、なんですか?』


  [もしもし‥失礼ですが、もう片方は撃破な

 さいましたか?]


 『は? もう片方?』


  [えぇ、もう片方です。ナビゲートされて

 いませんか?]


 『あっ‥‥これ、もしや‥‥‥!』


 なんとなく嫌な予感‥‥急いで画面を確認してみる‥。


 『しまった‥! もう1ヶ所ある!』


 「うそ‥‥」

 「ええぇ! 本当ですか!?」

 「あわわわわ‥どーしよ‥」


 画面には、ここからかなり離れた場所にピンが示されている。


  [ご健闘をお祈りしています‥。] プツン‥


 『うええっ!? 切られたし!』


 マジで適当だな! どうなってんだよ‥。

 しかもナビゲートによれば、かなりの距離がある。もしも、さっきみたいな化物がそこにも居るなら様々な被害が出るだろう‥。

 ん? 今度は俺のスマホが‥、マイン通話‥白石さんだと?


 『もしもし‥今ちょっと取り込み中でし

 て‥』


  [あーもしもし! とーや君、ウチだよ!]


 この声‥‥八重さん!? 何事‥‥?


 『えっ! どうしたんすか‥‥?』


  [あー、そこに千咲いるっしょ?

 うちらのライセンス持たせたから~承認よ

 ろ~!]


 『え、あ‥はい! ごめん宇江原ちゃーん!

 八重さんと白石さんのライセンス持ってる

 ー?』


 「えーと‥‥あった! みつけた~!」


 バッと手をかかげ、宇江原ちゃんがポケットから取り出したのは、先輩お二人のライセンスだった。


 『ライセンスありました‥‥!』


  [おけ~! こっちはウチらに任せて!

 んじゃ切るよー。]


 こっち‥‥? どっち!?


 『ああっ! ちょっと待っ‥』


   プツッ‥‥‥‥


 うわ! 切られた‥‥こっちも適当か‥?

 うーむ‥とりあえずライセンスだけやっとくかぁ‥‥?

 やべぇ‥‥もう片方は間に合うのか‥?




ーーーーーーーー



 

 「りん、そろそろ行こう。」


 『おけおけ、とーや君がやってくれてるし

 イケるっしょ!』


 あの子、絶対先輩の言うこと聞くタイプだと思うわ~。

 ちな、私らの目の前にも

 たぶん向こうでも似たようなのが出たんでしょ。

 にしても、こはねのお陰で助かったわ~!

前の日からライセンス千咲に預けるように言ってたし、連絡もらったって言うから、まんま言う通りにして来てみれば‥‥ビンゴ!

 やっぱリーダーすげぇ~わ笑。


 『ななみは大丈夫なん?』


 「私はおっけー、そっちは?」


 『もちのロンw 行くぞ~!』


  ポワン‥


 ナイス! とーや君、ベストタイミングじゃーん!

 

 「あは‥! やるじゃん、満木君。」ダッ!


 隠れていたかどからななみが飛び出した。

 そのまま接近、ナイフみたいな短刀を2本ヤバいやつに向かって投げ飛ばす。


 「投与状態異常・鈍化」


 投げた2本はどっちも命中。ななみの技の効果でヤバいやつの動きが固まる。


 「うヴぐぅ?」


 あー、見た感じあいつ完全に飲まれてる。人間味無かったし、人の言葉じゃない。

 まぁ今からしばくけど‥!


 「りん! 今だよ!」


 『おけー! ちょい待ち‥‥!』


 ウチもあのヤバいやつに近づき、技の範囲内に入れる。

 私の戦闘スタイルは刀による近接戦闘。

 手持ちの刀を握り、抜刀の準備をする。


 『‥‥ふぅーう‥‥‥‥。』


 大きく深呼吸、リラックス‥‥。力を抜いて視線をあいつに定め‥‥


 『八重桜‥‥早々・八分咲はちぶざき


 地面が割れるレベルで踏み込み、抜刀と同時にあいつに向かって刃を横に振る。


 「ナイスりん!」


 ななみの声が聞こえ、一瞬、握った刀が少しだけ重くなった。よし‥‥手応えアリ!

 振り向き様に確認、刀には黒っぽい体液が付いている。

 そして、あいつの体に大きな切れ込み。横腹を持ってけたみたい。証拠にあいつの横腹から黒い汁。


 「ググゥあァァ! ギグェ‥‥!」


 『よっしゃー! うち今日、調子イイか

 も!』


 音を立ててあのヤバいやつが倒れ込み、その体が崩れ、次第に灰と化す。


 「ありがと、りん。」


 『ううん、ななみのお陰だわ~。超狙いや

 すかった!』


 「そう? ご苦労様~。」

 

 2人とも変身を解除する、これで安心~。


 「でも、りんも綺麗だったよ?」


 『えw カッコいいとかじゃなくて?』


 「うん‥なんだか桜みたいだったよ。」


 『たぶんネーミングだわw まぁたぶん、他

 から見たらそんな感じに見えてるでしょ、

 知らんけど!』

 

 実際、自分の技は自分から見えないから分かんない。

 まぁ散ってんのは桜じゃなくて、あいつの方なんだけど。

 

 


 

 

 


 


 


 



 

 


 

 


 


 

 



 


 


 

 

 


 


 

 

 


 


 

 




 

 

 


 


 


 


 


 

 

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