第13話 傷付け合う様すらプリティで





 『あぁ、はぁ‥この辺りか‥!』


 「慎重に‥きっともうすぐ近く‥。」


 「おっけー!」

 「了解です!」


 連盟から連絡を受け、俺たちは示された場所へとやって来た。

 どうやらここは何かの工場? の裏のようだ。もう勤務時間は終わったのだろうか、明かりは無く、さっきからこの付近では人影1つ無かったように感じた。

 4人で来たが、心の奥底にはどうしても不安が根付いて離れない。


 「‥‥! みんな、多分あれだよ‥。

  集中していこう!」


 宇江原ちゃんが指差す方向を見てみる。

 あれは‥‥人だよな?

 変だな‥もう勤務時間終わってそうなのに。


 「桃弥くん‥ライセンスお願いね‥。」


 「私も頼みます‥!」

 「おねがい‥!」


 『よし‥任せて、今すぐか?』


 「ううん‥ちょっと時間差で。もしかした

 ら関係ない人かもしれないし、そうでなく

 ても警戒されちゃうから‥。」


 『あぁ‥見てからって感じだな。』


 「うん‥それじゃ、3人で行ってみるから

 ここで隠れててね‥。」


 『え? あぁ‥分かった‥。』


 俺サポーターなのに何にもしないの? なんかこう‥指示を出すとかさ‥。


 「行こう‥みんな‥。」


 「了解!」

 「がんばろうね!」


 あぁ‥行っちゃった‥。

 彼女らの目的は少し先に居る怪しい人だ。とりあえず、いつでもライセンス読み込めるように構えておこう。

 にしても怪しいなぁ‥あの人。なんか歩き方もガタガタだしキョロキョロしてるしなぁ。

 そう思っていても彼女たちは足を止めず、前進していく。


 『あぁ‥大丈夫かなぁ‥?』


 超絶他人事風味な事言ってるなと思い、頭を垂れていたとき‥。


   ガシャン! ガラガラ‥‥!


 「ヴぅうがァあ‥‥うぅヴ‥うう‥。」


 うわ! なんだよあの人! 急に木箱投げて奇声上げはじめたぞ‥?


 「やっぱり‥‥! 桃弥くん‥お願い!」


 え‥‥? まさか‥本当にそうだったのか?

というか何の目的でここへ来たんだっけ‥? 


 『よし‥とりあえず‥。』ピッピッ


 3人のライセンスを読み込み、パスワードを打っていく。


  ガラガラッ‥! ガシャ!


 うおっ‥なんだよ‥またか?

 もう一度顔を上げ、あの怪しい人を見る。


 『え‥居ない?』


 そう、あの怪しい人は居なくなっていた。

 代わりに、人とは言い難い存在がそこには居る。


 『な‥なんだよアレ‥!』


 あれは確実に人ではない、そう識別できる程に恐ろしい。

 不規則に伸びた指と爪、腫れ上がった瞳、バランスを失った左右非対称の顔面。

 誰かどう見ても‥‥‥‥‥‥化物。


   [ 承認されました ]

 

 少し遅れて3人のシステム同期が承認される。


 「サポーターさん、ナイス!」

 「いっくよぉ~!」

 「気をつけて‥‥来る‥!」


 「へへへっ‥ガァあ‥!」


 俺の目に写るのは、可愛げな魔法少女のキラキラした魔法などではない。

 これから彼女たちは化物と争い、傷つけ合うんだと直感が語りかけてくる。


 


ーーーーーーーー




 『気をつけて‥‥来る‥!』


 「へへへっ‥ガァあ‥!」


 こっちに向かって来た‥。

 見た感じ、そこまで危険じゃないみたい。


 「くらえ! 

   キューティー・サンダー!」


 千咲がステッキをかざす。

 千咲の先制‥! どれくらいのダメージになるか‥。


 「へへッ! 当たってねぇ~よ!」


 まずい、外した‥!

 化物が手を振り回し、千咲の右腕を狙った。

 

 「ぐぅっ‥! 痛ぁ‥‥!」


 『千咲!』


 しまった‥‥当たっちゃってる‥!

 千咲の右腕から勢いよく出血する。

 かなりの早さだった‥直撃は避けたようだけど、爪が皮膚をかすめていた。

 と、同時に千咲がバランスを崩し、ふらつき始める。


 「キヒヒッ! もらっだぁ!」


 まずい‥この距離、私じゃ間に合わない‥。


 「させない!」


 「ぐおっ‥!?」


 横から飛び出てきたみなみの蹴りが化物の腹部に直撃する。

 よかった‥ナイスみなみ‥! これなら響いてるはず‥助けに行ける!


 『大丈夫? 千咲!』


 「うぅ‥ごめん‥。」


 即座に千咲を抱え、物陰へと走り避難する。

 そこまで深くはないけど、出血はまだ止まっていない‥右腕を抑えて痛がってるし。


 『ちょっとまってて‥

   手当ノ康寧・潺‥』


 千咲を寝かせ、その右腕に手を当てる。


 「ゆいちゃん‥ありがとう‥」


 『ううん‥大丈夫。痛みは引いてきた?』


 「うん‥ありがとう‥!」


 千咲の言う通り、傷は癒えていく。

 よかった‥私もそこそこ力がついてきた‥。


 『どう? もう大丈夫‥?』

 

 「うん、行こう‥! みなみちゃん1人だと

 さすがに危ないよ。」


 『うん‥急ごう‥。』


 どうやら回復できたみたい。千咲は立ち上がり、化物へ向かって走り出す。

 それに続いて私も走り出す。


 「私‥もう1回やってみるね‥!」


 『うん‥期待してる。』


 私は一旦立ち止まり、みなみに聞こえるように言う。


 『すぅ‥‥‥みなみー! 離れて‥!』


 「‥‥!」ザッ‥


 「あァ? んだよ‥?」


 化物と拳で戦っていたみなみが距離を取った。

 よし‥気付いたみたい。あとは‥‥


 「今度は外さないよ~! それっ‥

   キューティー・サンダー!」


 「なぁっ‥!」


 その瞬間、ピカッと光る閃光が化物と繋がり、ビリビリと音を立てて貫いた。


 「ぎゃぁああぁッ!!!!

 ああぁあががぁっ!!!」


 命中‥! 

 化物が膝をついて倒れた‥これなら‥?


 「がァ‥テメぇ、やりやがったなァ‥!」


 まずい‥倒しきってない!

 また来る‥!


 「私が行く!」


 『みなみ‥!』


 みなみ‥いけるの?

 みなみは臆することなく化物の正面に立ち、構えの姿勢を取る。

 みなみは〝元気系〟‥持ち前の体力を活かした肉弾戦が得意‥‥。


 「‥‥蹴脚しゅうきゃく

 

 「ハハッ! こっちから先にやってやる

 よォ‥!」


 やばい‥もう至近距離‥‥! すごいスピードで化物がみなみの方へ向かって振りかぶる。


 「ハハーッ!」

 

 『危ない!』


 触れるか否かのギリギリのタイミング‥その瞬間、みなみはそれを半身で避け‥。


 「合いの手!」


 かけ声と共に凄まじいスピードの蹴りを入れた。


   バシンッ!


 辺りに鋭い音が響き渡り‥


 「うぐぁっ‥! がはっ‥」 バタッ‥


 化物が力無く倒れ込む。


 「よっしゃ!」


 「ナイス~みなみちゃん!」


 『ほっ‥よかった‥。』


 ナイスみなみ‥無傷で仕留めた‥。十分なダメージだったと思う。


 「クソッ‥! こんなんで‥‥こんなところ

 で‥!」 ササーッ‥


 よし‥! 化物が灰になって消えていく。

 ちゃんと倒せたみたい。


 「クソがぁ‥‥‥‥!」


 最期の言葉と共に、化物は完全に灰となって消えていった。


 「ふぅ~お疲れ!」


 「おつかれ~!」

 

 『うん‥今回もよくできた‥。』



 大きなケガもなく、全員無事で倒せた‥。

 また桃弥くんに説明しとかなくちゃ‥。

 


 


 

 

 

 

 


 


 


 


 


 


 


 

 

 


 


 


 


 


 


 


 


 

 

 


 


 


 


 


 

 

 

 

 


 

 


 

 


 


 


 


 


 


 




 

 


 




 

 

 


 

 


 


 



 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る