第5話 正義のヒロイン





 「いいから早く!」


 藍浦ちゃんの言うままに、俺は彼女たちの後を追っていく。

 いつになく真剣な表情、どうしたどうした‥?何が起きてんだ‥。

 

 「ねぇサポーター君、ここから黄藤4丁

 目までどのくらいかな?」


 みおうちゃんが俺に聞く。


 『ちょっとまってろ、えーと‥‥』

 

 さっき貰った地図を開く、なるほど‥。


 『約1.7kmで20分くらいだ』

 「遅いね、10分でいくよ!」


 そんなに早く行けるか‥?

 そう言うとみおうちゃんは勢いよく走り出す。


 『早っ!』


 俺が50m本気で走った時くらいのスピードで走ってるぞ‥!

 俺は自転車であわてて追いかける。


 「待っててね‥‥。」



……………


 『あと、ハァ‥、600mくらいか、ハァ‥‥。』


 もう少しで黄藤4丁目だ。

 俺が一生懸命、自転車をいでいるのにどんどん彼女たちと差が開いていく。

 

 (まだ視界に収まってはいるが‥俺も体力が‥)


 あんなスピードで走っているのに、あの子たちはゆっくり深呼吸をしている。苦しくないのか‥?

 そんなに急ぎなんだな、もうすぐで撮影なりショーなり始まるのか?


 「2人とも~笑、ちゃんとライセンス持っ

 てる~?」

 

 「うん、もちろーん」

 「はいっ‥!」


 何か喋ってるし‥話す余裕あんのか‥!


 『はぁ‥くそぉ‥』


 サポーターの俺がこんなんでどうする!

もっとスピードを上げるんだ‥。

 ラスト、300m先を曲がれば目的地‥!


 「2人とも準備おっけ~?」

 

 「OK!」

 「大丈夫です!」


 あぁ‥とうとう先に曲がられた‥。

 残念がってないで俺も急がないと‥!


 

……………


 『はぁ‥うぁ‥着いた‥!』


 もう汗だくだ‥。

 だがここを曲がれば目的地、たぶんショーの舞台や撮影のセットが‥‥‥


 

 見えなかった。


 

 『はぁ? ここじゃないのか‥』


 ショーの舞台や撮影のセットらしき物は何処どこにも見当たらない。

 てか‥あの子らはどこ行ったんだ‥?


 そう思っていた矢先‥‥



 

  バキッ!バギバギッ‥ドスッ‥




 何だ? 何の音だ‥!

 地面が少し揺れた‥。


 気味悪く思い、少し周りを歩いてみる。


 俺は〝魔法少女〟と聞いて、悪の怪人と戦う可愛いヒーローだと思っていた。

 半分正解、半分間違い。


 俺の目線の先に

 藍浦ちゃん、みおうちゃん、小栗ちゃん、

そして見知らぬ女の子が2人。


 彼女たちの目線の先には


 そう、なんと形容すればいいのか。


 無数の気味悪い目、細長く伸びた手足が数本、そして半個体の墨汁のような胴体。

 作り物にしてはが過ぎる。


 誰だって足が震える。

 俺は今まさにその1人だ。


 『は‥ど、どうなって‥』


 頭に情報が入ってこない。

 いや、それとも体が受け付けていないのか


 


 

 「サポーター君!」


  『はっ‥‥!』



 混乱する俺の耳に聞き覚えのある声が届く


 「その箱!開けて!」


 そう言いながら誰か近づいてくる‥‥

 藍浦ちゃん‥‥藍浦ちゃんだ‥!


 『な、なんだよアレ!こんなの聞いてない

 ぞ‥!』

 「いいから!」


 慌てて俺は持ってきた箱を開ける。

 緊張か恐怖か、手が震えて開けにくい。


 『なんだこれ‥』


 箱の開けると、カード決済用のレジみたいな小型の機械が顔を出す。


 「これ、スキャンして!」


 藍浦ちゃんが手渡してくる。

 これは‥‥学生証?いや、違う。渡されたカードらしき物には左上に小さくと書かれている。

 

 焦って言われたままに溝にスキャンした。


 「30秒くらいしたら連盟から通知が来るは

 ずだから!そしたらライセンスの裏の認

 証コードを入力して!」


 よく見ると入力にゅうりょくキーらしき物もある。

 は?もう訳わからん。

 

 藍浦ちゃんはそう言いってまた気味悪い物体の方まで戻って行った。



  ビービービー‥‥



 謎の機械から振動があった。

 通知が来ている‥のか?

 画面には



  [ 認証コードを入力してください ]



 の文字。

 言われたままにやってみる。



 『押したけど何も起こらんぞ‥?』


 「決定キー押して!」


 遠くから聞こえた



   タプ‥




    [ 承認されました ]



 

 「ありがとぉー!笑」



 その瞬間、藍浦ちゃんの体が光に包まれた

 

 そして言う。


 「敗北けって~い♡

 だって私つよつよだも~ん笑」



  ‥‥‥‥??




 「あふれる笑顔スマイルで〝わからせて〟

  あ・げ・る♡」

 

 彼女の体を包み込んだ光は可愛らしい衣装へと形を変え、〝魔法少女〟というのが見て分かる。


 

 「おぉっ、こはちゃんきたー!まじ助かる

 んだけど~!」

 「小羽先輩、来てくれましたね‥!」


 さっき見えた見知らぬ2人が言った。


 彼女は勢いよくあの物体へ向かっていった。

 どこから沸いたのか、ステッキ?のような物まで持っている。



 「せーのっ!喰らえ~笑」



 メスガキらしき笑みを浮かべ、藍浦ちゃんはあの物体バケモノに向かってステッキを振りかざす。

 ステッキは強く発光し、ハート型の紋様もんようが浮かび上がった。


 次の瞬間、地面が揺れ動く程の衝撃波と光‥?があの物体バケモノとらえる


 「ガグがギャげくぐグゲェ、!!!」


 物体バケモノは悲鳴を上げながらあばれだす。

 さらに血や体液が溢れ出す。


 「やるじゃん!こはね!」

 「さすがです‥藍浦先輩‥!」


 みおうちゃんも小栗ちゃんも驚いている。


 『えぇ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥』


 開いた口が塞がらないとはこのこと。

 しばらく見ていると物体バケモノの体は溶け始め、気化したりして残骸ざんがいとなった‥。

 

 「ざぁーこ♡よわよわ♡前髪すかすか笑」


 いや前髪は無かっただろ。

 ここまでキャラが完成してるのか‥‥?


 数秒して思う。

 俺、とんでもないことに絡んでしまったと


 「サポーター君~笑、びっくりした~?」


    ポワァ‥‥

 

 今度は藍浦ちゃんの体から光が粒子のように分散していく。

 気付けば藍浦ちゃんは元のチームの服装に戻っていた。


 「あちゃー‥‥遅かったね‥。ごめーん!」


 何故か白石さんまで来ていた‥‥


 「ちょうど良かったね笑

 これが私たち魔法少女の活動。

 どう?すごいでしょ?」


 「ちゃんと見てた~?笑」


 『あ、あぁ、うん‥‥よーく‥見てたよ‥?』





 俺は魔法少女と聞いて何か勘違いしていたようだ。

 文字通り、何にも間違いは無かったのに。


 彼女たちは‥‥〝みんなの笑顔を守る〟、立派な魔法少女だった。



 

 


 


 



 


 

 

 


 




  


 


 

 

 


 

 



 

 


 


 


 


 

 


 






 

 


 

 

 

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