第4話 どんな活動してんだろ?




 今日は土曜日、チームの集まりは午後2時からなので、お昼のたまごサンドを片手にメンバーの情報を表にまとめる。

 ちなみにあと二人いるようだから、下の二行は開けておいてある。

 現在時刻は1時10分、そろそろ出よう。


 『いってきまーす』


 「? お兄ちゃん珍しいね、どしたの。」


 『あー‥、新しいバイトだよ』

 「えっ!もう見つかったの? 退職の次の

 日って早すぎでしょ‥! っていうか何のバ

 イト?」

 『え、えぁ、うん、あのーあれだよ、クラ

 ブチームのサポーター‥‥。』

 「うそっ! 何のチームの?」

 『えっと‥あれ、あれだよ‥バレーの!』

 「へぇ‥‥‥お疲れ様、頑張りすぎないように

 ね。」

 『あ、あぁ! いってきます!』

 

 慌てて足早に玄関を飛び出す。

 そりゃあ魔法少女たちのサポーターになったなんて言えんだろ!きっとこの先も一生な!


 いかんいかん、そろそろ向かうか。就きたての仕事に遅刻なんてアウトだからな。

 ちなみに自転車で向こうまで行っている。

初日も35分くらいで間に合ったからな、まぁ大丈夫だろ。

 


……………

 

   ガチャ‥


 『こんにちはー‥‥』


 反応が無い、そりゃ俺がカギ開けとるしな、当たり前か。

 いいんじゃないか、誰よりも先に職場に入る。我ながらやる気があると思うぞ。

 

 さて、表の続きを書ききろう。全員分スペース残ってるし、補足情報をいれていけるといいが‥‥。

 そう思い、ペンとメモ帳を取り出そうとしていると‥。


 「こんにちは~」


 おっ!ドア越しに声が聞こえる。

 さあ誰だ(ワクワク!)昨日の夜、全員の名前覚えてきたんだぞ!


  ガチャ


 「こんにちは‥‥。」


 『こんにちは~』


 「あ、どうもサポーターさん‥。」


 『小栗おぐりちゃん、どうも。』


 「早いんですね‥」


 『いやいや、君らのサポーターだから

 ね。示しをつけていかなきゃと思ったん

 だ。』


 「‥‥‥! ありがとうございますっ!」

 

   ガタッ!


 「いだっ!」


 そう言いながら彼女は部屋のホワイトボードに足を引っ掛けた。

 うーん‥‥やっぱり〝ドジっ子〟って感じだな‥‥。


 「いたた‥‥うぅ‥」


 『大丈夫か‥‥?』

 

 「はいぃ‥、ケガはないですぅ‥!」


 『ああ‥良かった‥‥。』


 この仕事に就いてすぐだが、思ったことがある。これ距離感どうすればいいの?

 一応、親しみを込めてちゃん付けで呼んでいるが、キモがられていたらどうしよ‥‥。

 

 「あ、もういたんだ。こんにちは~」


 ん、あれは‥みおうちゃんだな。

 ふと思ったが、あの子フルネームなんていうんだろうな。また聞いとこ。


 『こんにちは。』

 

 「あ、早めに来てくれたんだ。お勤めご苦

 労様ー。」


 『どうも‥!』


 あっちから話しかけてくれるとは!

 幸先いいぞ~!


  『ねぇ、今日からはどんな活動するん

 だ?魔法少女って言うくらいだから‥‥あれ

 かな、撮影とか?』

 

 きっとこの子らの魔法少女ってのは、なんかのイメージビデオとかなんだろう。

 なんなら子ども向けのショーとかかな。


 「は?何言ってんのw今日はトレーニングと

 かね。きっと小羽ちゃんが教えてくれる

 よ。」


 どゆこと‥?演技にはやっぱり筋肉とかるんだろうか。

 て言うか小羽こはね?藍浦ちゃんのことかな?なんでや‥。


 『えっ、それってどういう‥‥』


   ガチャ


 「こんちは~」


 また誰か来たな‥。

 

 「あ、サポーター来てるじゃん笑

 はやーい笑、勤勉♡つよつよ~w」


 藍浦メスガキちゃん‥だな。

 なにこれ?められてるのかな‥。


 「ごめーん遅れちゃった~笑、まだ二人

 は来てないかなぁ?」

 

 「そーだねー。千咲ちゃんとみなみちゃん

 は来ないって~」

 

 たったの3人ぽっちか、俺も入れたら4人だけどな。

 なんかまだ二人来るらしいけど。


 「じゃ始めよっか。てかさー、黄藤4丁

 目の情報って本当なのかな?だとしたら

 先行っといた方がいいんじゃない‥‥?」


 「そうですよね‥まだ連盟からも連絡ありま

 せんし‥。」


 4丁目? 連盟?

 何言ってるのかさっぱりなんだか‥。


 「とりあえず~、トレーニング室つかえる

 からぁ~、そっち行こー笑」


 トレーニング室なんてあるのか、このスポ

ーツセンター。てか、マジて色々聞いとかないと‥‥置いてきぼりだぞ!

 

 『あ、あのさぁ‥サポーターのくせに俺、な

 んにも知らないんだ‥。普段何するか教え

 て貰えないかな‥‥。』


 「ざぁーこ♡無知すぎw教えてあげるから

 ちょっとまっててね笑」


 「なんだかんだで優しいですよね‥、藍浦先

 輩。リーダーだけありますよね‥。」

 

 こいつリーダーなのか!

 てっきり白石さんかと‥‥。


 「着いてきて~笑」


 ほんとかよ‥。



……………



 おぉ…トレーニング室ってまぁまぁ広いんだな。

 

 「なんにも連絡無い日はトレーニングして

 るの、だからサポーターらしくさっさと仕

 事おぼえてね~笑」  バサッ


 『うおっ…!』


 ナイスキャッチ。藍浦ちゃんからパスされたのは、どうやら練習メニューみたいな物とここら辺の地図のようだ。

 地図はけっこう新しいが練習メニューはかなりボロくなっている、ここはサポーターの腕の見せ所だな、イイ感じに直してみるぞ!


 「ちょっと道具取ってくる~」


 あらら‥、みおうちゃんとセットで三人ともどこかへ行ってしまった。

 なるほど、トレーニング器具の準備も仕事の1つだよな。

 これからはもうちょい早めに来よう。


 今日はさすがみんな制服じゃなかったな、

なんかチームの服?みたいなの着てたわ。


 さて‥直すって言っても今までどんなのこなしてきてるんだろ。

 

      【メニュー】


 1:柔軟じゅうなん→アップ→センター外周×3

 2:腹筋・背筋・スクワット・腕立て伏せ

   (全て×120)

    〈休憩〉

 3:マット運動20分

             etc‥‥

 

 えぇ‥?キツすぎないか?

こんなの年頃の女の子たちがやるようなメニューじゃなくね?

 あと3枚くらいレパートリーあるし、どうなってんだよ‥。

 魔法少女のショーとかってそんなにキツイ練習しないといけないんだろうか。

 

 

 ピロリロリロリー♪ ピロリロリロリー♪


 うぉっ!ビビった‥。

 誰かのスマホ‥‥?着信だろうか。


 手に取って確認してみる。

 どうやら笹山ちゃんからの着信だ。

 これ出ていいのか‥?まぁ、3人の誰かだろうし大丈夫だろ。

 そう思い、スマホの画面をスワイプする。


 『もしもーし』


 [もしもし藍浦ちゃん?黄藤4丁目の情報、

本当だったみたい‥!

 今、りんな先輩とゆいちゃんが交戦中なの‥、七奈美先輩も向かってるみたいなんだけど、そっちも来れるかな?]

 

 あ、これ藍浦ちゃんのスマホだったのか。

 随分ずいぶんと慌てているようだけれど何かあったんだろうか。

 あとこの電話、俺宛てじゃなかったな。


 『笹山ちゃん?サポーターの満木だけど』


 [えっ!サポーターさんですか!すいませ

 ん、近くにメンバーの誰か居ますか!]


 『んえっ‥あー、ええと‥‥』


 

 「どうしたのー!」


 「マヂで‥?」

 「本当だったみたいですね‥‥!」


 運良く3人が帰って来た。

 すぐに藍浦ちゃんにスマホを渡す。


 「もしもし、みなちゃん!

 もしかして黄藤4丁目のやつ?!」


 [そうなの!りんな先輩とゆいちゃんが交戦

 中で応援頼みたいの!七奈美先輩も向かっ

 てるっぽい!]


 「分かった、こないだの所でしょ‥!」


 [お願いね!じゃ、切るよ]

 

 「すぐ行く!」


   ピロン‥‥


 通話が終了したようだ。

 藍浦ちゃんがいつになく焦っている、それも口調が変わる程に。


 「行こう、みんな!」


 「おっけー!」

 「分かりました‥!」


 「サポーター君も着いてきて!自転車な

 ら付いてこれるはず‥!」


 どういう状況‥?何が起こってるんだ‥?


 『え‥あ、』

 「いいから早く!あと、これ持ってき

 て!」


 なんかの箱?みたいな物を受け取る。

 彼女たちは荷物を持って一斉にトレーニング室を飛び出し、センターの入り口を勢いよく出ていった。

 よくわからんが俺も付いてけばいいんだろうか?

 俺も急ぎ足で自転車の施錠せじょうを外し、自転車に乗って彼女たちを追いかける。



 

 何が起きてるんだ‥?

 分からないまま、彼女たちを追っていく。



 


 

 


 



 

 

 


 

 

 

 

 



 


 


 

 

 

 


 

 


 


 


 



 


 


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る