第24話 欲張り短冊
「うっし‥‥これにした!」
『ん、なんにした?』
「やっぱな、〝バイト上手くいきますよう
に〟だろ!」
『あぁ? 彼女できますようにじゃねえのか
よ』
「まぁ俺二枚目だからな、勿論書いたわ」
『えぇ‥‥それはいいの‥‥?』
「誰が言った訳でもないだろ笑、どっかのラ
ンプの妖精は3つまでいけんだ、ちょっとく
らいいいんじゃね?」
『それとこれは違うだろ‥‥』
「つーかお前は? やっぱ彼女?」
業後の学校の昇降口付近、ちょっと色褪せて渋みの増したしおしおの笹に、むき出しの欲望を短冊に乗せて押し付けるこの男。
名前を
なにしろ1年の時も同クラス、そして今も同クラスのために、高校で出来た俺の一番仲の良い友達と言える。
『まぁそれはそうなんだけど、お前みたいに
バイトも上手くいってほしいからなぁ』
「あぁー、なんかお前バイト首になったんだ
っけ? それはもう上手くいくとかはなくな
い?」
『違うわ! 前のバイトは店長が急に店を畳
むとか言い始めたからだよ』
「あ、そーだったんか。じゃあ今なんのバイ
トなんだよ、最近忙そうだったろ?」
『え!? ま、まぁまぁ、ねー、あのー、
あれだよ、バレーのチームのサポーター!
なんかアシスタント的なやつな‥‥ハハ』
「へーそうなん。じゃあお前も二枚書いと
け」
『ロマンねぇなぁ‥‥まぁいっか、短冊余って
るっぽいし』
置くために用意された2つの机の上には、まだ何枚か余った短冊とマッキーが数本。
なんかうちの高校では、体育委員が七夕にちなんで笹と短冊を昇降口付近に用意したそうな。
でも今日はもう9日だというのにまだ居る。
もうロマンの欠片も無いような気はするけどね。あとなんで体育委員なの?
『よし‥‥俺もこれでいっかな』
響と同じように、俺も二枚の短冊に太い方で書き記し、欲張りに吊るした。
「んじゃーなー、また明日ー」
『おー! また明日ー!』
そのまま流れで昇降口から別れの挨拶をし、その日は響と別れた。
なんか今日はみんな休むらしいから、俺も久々に家で録画したドラマ見返そうかなぁ~。
響はバス通らしいけど、俺も自転車置き場へ向かうため、靴に履き替えて歩き出した。
「あっ‥‥やっぱり桃弥くんだ‥‥」
その影を見られていたとも知らずに‥‥。
ーーーーーーーー
「ねぇこれ、満木君が作ってくれたやつ。
ちゃんと仕事してくれててありがたいよね」
七奈美はペラっと差し出して、みつ君の作った募集ポスター的なのを見せた。
「えぇーマジ!? とーや君なんでもやるじ
ゃん! 今度夏休みの課題でも頼んでみよっ
かなぁ~笑」
『扱いが雑でしょー笑』
「ふふっ笑 私も頼んでみようかなー?」
七奈美は冗談半分に微笑みながら言った。
ここの3年たちは悪い先輩だなぁ‥‥。
『同じ先輩でも七奈美ならいけそー』
「七奈美ならとはなんだ! ならとは!」
「『はははっ笑』」
凛奈のフグにも勝るその顔に二人で笑っていると、会議室のドアが開いた。
「ごめん‥ハア‥‥なさーい! ハア‥‥。」
肩を揺らして息を切らしてドアを開いて入ってきたのは華だった。
よく見たら後ろに結も連れている。
「もー遅刻ぅ~♡ おそおそ~♡」
「そーだそーだ! 遅刻だー!」
小羽と千咲は容赦なく責め立てるが、華の解答は‥‥
「ちがうのぉ~! 体育委員の仕事が長引い
ちゃったんですよぉ‥‥!」
「それは華が片付け忘れてたからでしょ‥‥」
「二゜ョ"ッ!!」
「どっから出したのその声‥‥あと私はその手
伝い。」
まぁ、言われるのも無理はない。
珍しく今日は全員集まっているから、それもみつ君をわざわざ呼ばずに。
「じゃあ‥‥早速、アイデアある人ー」
「はいっ! はーい!」
「はい、みなみ!」
七奈美の問いかけに、みなみはいち早く声を上げた。
「もういっそのこと正直に言う! 実は未成
年はサポーターやっちゃダメだったんですぅ
~って!」
「はい、却下、害悪。」
「ウソォ! いいじゃん正直が一番でしょ!」
「もぉ‥‥それが出来たら苦労しないよ。
多分、満木君が気付いてないか言い出さない
だけか分かんないけど、お給料も出してない
し、正式雇用とか言ったけど‥‥」
「連盟からなんの許可も降りてない‥‥まして
や連絡すらしてない‥‥」
七奈美の説明に結が口を挟む。
「結の言う通りっしょ? ねぇこはね」
「うん‥‥なんか最近、連盟からの要請やら
が増えた気がする~」
「うげっ‥‥マジかぁそれ、やばいじゃん‥‥」
珍しく小羽の人間をナメてるようなニヤニヤが苦味を増している。
凛奈も苦笑いを浮かべるレベルだし、それ程の問題なんだ‥‥。
「あっ! はいはーい!」
「ん? はい千咲!」
おぉ~、千咲からもアイデアがあるそうだ。
「手作りケーキを作る!」
「と言うと‥‥?」
「みんなでケーキを作って、真ん中のチョ
コ板に〝満木選手、クビ!〟って書くの!」
「あぁぁ‥‥却下、害悪」
「もー! どういうことぉー!?」
これには七奈美も頭を抱えた。もしかしたら千咲、味噌が詰まってないタイプの頭なのかも知れない。
「ちょっと‥‥ロクな意見が‥‥笑」
七奈美は一周回って笑えてきている。私も堪えるのが精一杯だ。
「はーい‥‥」
「おっ? 結‥‥?」
正直、これには期待が出来る。
どんな作戦なんだろ‥‥?
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