第9話 できそこないと幸せと



 


 「おつかれぇ~♡」


 きらきらと周りを彩る可愛いらしい光。見た目とは裏腹にその威力は凄まじく、ただ地面がえぐれ、化物の姿は見当たらない。

 あぁ‥きっと一段落したんだろう、みんなお疲れ様。俺はもうついていけないよ。

 なんかボーっとしてきたし、身体が痺れてきた気がする。

 確か俺、やばい感じだったな、生命的に。

 たぶんもう終わりなんだ。そうなんだ。


 「しっかりしてください‥ 諦めちゃダ

 メですよぉ‥‥!」


 小栗ちゃんの声が震えている。

 嬉しいなぁ、俺のこと心配してくれてるんだ。何にもやってないし、お荷物なだけだったのになぁ‥。

 悔しくて、情けなくて、喉の奥が締め付けられる。

 

 「サポーター! 大丈夫‥!?」

 

 藍浦ちゃんか‥、たぶん俺もうダメだわ、ごめんなぁ‥‥。


 「満木君!」

 「サポーターさん!」


 白石さん、笹山ちゃん‥もうあの化物は片付いたのか‥。


 「いける‥急所は避けてるみたい‥!

  サポーター、ゆっくり深呼吸してて‥!」


 何か藍浦ちゃんが言ってるわ‥、もうくらくらしてきてわかんねぇなあ‥。


 「ぉまたせぇ‥」


 ダメだ、幻聴が‥。


 「あ! ゆいちゃん!」

 「きたきた~♡」

 「よがっっだぁぁ~!」

 「もう少しだよ! 満木君!」


 え‥? ゆいちゃん? 瀬々木ちゃんのことか? 幻聴じゃなかったのか‥でも何で‥。


 「おまたせ‥! 何があっ‥ 桃弥くん!」


 本当に瀬々木ちゃんが来てる‥しかも、こっちに来てる‥?


 「よく耐えたね‥でももう大丈夫だから‥

  華‥ライセンスお願い‥!」


 「うん‥ありがとう‥! はいっ!」


   タプタプ


   [ 承認されました ]


   ぽわぁあ


 薄い青白の衣装に身を包む瀬々木ちゃん。

すごく似合っているな‥。

 こんなよい子で可愛い子たちに囲まれて終わる人生なら幸せか‥。


 「桃弥くん‥ゆっくり深呼吸ね‥」


 『っ‥あぁ‥』


 何のつもりか分かんないけど、救急も間に合わないような状態なんだろう‥。

 あれか、みんなで看取みとってくれるのかな‥。

 だが‥てっきり俺は勘違いしていたようだ。


 「‥‥‥ふぅ、よし‥

   手当てあて康寧こうねいせせらぎ‥」


 瀬々木ちゃんの手が背に触れる。傷付いているはずなのに、不思議と痛みを感じない。

 むしろ楽になっていないか?


 「さすがゆいちゃん‥♡

 助け舟♡ 優しい♡ 前髪さらさら♡」

 

 間違いない‥‥傷がえている‥?

 何でだ‥? 

 

 『すごい‥もう起き上がれるぞ‥‥!』


 「うん‥よかった。治ってきたね‥。

 まだ完治じゃないから、少し痛むかも。

 ごめんね‥。」


 『な、なんで‥‥?』


 「これは私の力なの‥簡単に言ったら癒し

 の能力‥。間に合ってよかっ‥‥」 タラ~‥‥


 『せ、瀬々木ちゃん‥? それ‥』


 瀬々木ちゃんの当ててくれた手から流血している。

 あれは俺のではない、確実に彼女から流れているのが目に見える。


 「ゆいちゃん‥ちょっと無理しすぎたかも

 ね‥すぐに変身解こっか」


 『白石さん‥それってどういう‥!』


 「当たり前だけど、こんな人間離れしたこ

 とを何の対価も無しに出来るなんてことは

 ないの。今のゆいちゃんはかなり体力を消

 費しちゃってる‥」


 『そんな‥‥』


 ‥‥‥俺のせいだ。

 俺が足手あしでまといだったせいで‥瀬々木ちゃんに迷惑かけて、血まで流させて‥。

 

 『ごめん‥瀬々木ちゃん、俺が‥』


 「いいの‥桃弥くんは悪くないよ。」


 そう言いながら微笑ほほえむ瀬々木ちゃん、彼女は流れた血をタオルでぬぐう。

 あぁ、善意が胸に突き刺さる。俺は何のためにここに居るんだろう。


 「立てますか‥?」

 「か、帰って安静にしましょお‥。」


 笹山ちゃんと小栗ちゃんが腕を引っ張ってくれる。なんとか二人の手を借りて立つことが出来た。

 今はもう、ついていたひざの方が痛いくらいだ。


 「まだ完治してないから‥無理しちゃだ

 めだよ?」


 『うん‥ありがとう瀬々木ちゃん‥ おかけ

 ですっかり元気だよ。 ごめんね‥‥迷惑か

 けて‥。』


 「よかった‥。でもそんな暗い顔しない

 で‥ これからも桃弥くんにお世話になるん

 だもん。 私が助けたいって思ったんだか

 ら‥。だから‥ね、笑顔がいちばん‥。」


 『‥‥うん! ありがとう!』


 「うん‥!」


 胸にじーんと広がる暖かさ。 そうだ‥

 この子は〝大人しい系〟だからといって冷たい訳ではないんだ、この子の本質はとても暖かく、優しいものなんだ‥‥。


 「さっ、かえろ~♡」 


 「「「「 うん 」」」」


 「サポーター、もう歩ける?」


 『あぁ‥! もう大丈夫だよ。』


 「ほっ‥よかった」

 「うん、元気ですね!」

 「あぁぁあ! よかったぁ!」

 「あ‥何度も言うけど無理しないでね‥。」


 『‥‥うん。』


  俺はサポーターというより、ただの救ってもらったヤツだったな‥。

 こっちを向く彼女たちの笑顔はまさに、みんなを守る魔法少女だった。




………………………




 『みんな、改めてお礼を言わせてほし

 い‥。本当にありがとう‥!』

 

 「あはは‥やっぱり、でもこれが私たちの仕

 事だからね。」

 「そんな~♡ 大げさ♡ 律儀♡」

 「そうです! 無事でよかったです!」

 「ほんとですよおぉ‥‥」

 「ふふっ‥‥らしいね‥。」


 現在、スポーツセンターの会議室。

 無事、みんな揃って帰ることが出来た。


 『本当‥みんなのおかけだ、なんとお礼を言

 えばいいのか‥、、』


 「ううん、確かにそうかもしれない。

 けど、満木君だって頑張ってくれたよ。」

 

 白石さん‥そんなですよ‥


 「私が変身出来たのもサポーターのおか

 げ! 優秀♡ えらい♡」


 藍色ちゃん‥いや、俺は何にも‥


 「そうです! すごい!」

 「サポーターさんが生きててくれて、本当

 によかったですぅ‥うっううぅ‥」


 笹山ちゃん‥小栗ちゃんまで‥


 「そうだよ‥立派なサポーターだったと思

 う‥‥。」


 せ、瀬々木ちゃんも‥‥


 『みんな‥‥‥!!』


 「これからも頼むよ? 満木君!」

 

 『はいっ‥! どうか‥任せてください!

 よろしくお願いします!』


 「あははは! やっぱり律儀だw」


 「「「「 ぷっ‥‥w あはは!! 」」」」


 

 『あ‥‥あはは‥』



 

 

 眩しすぎる程の笑顔。俺もつられて笑えてきてしまう。

 さっきまで痛みと自己嫌悪で沈んでいた気持ちが嘘のようだった。

 胸の内から溢れ出る幸福感、。

 どうやら俺は、幸せ者なのかも知れない‥。




 




 

 

 


 


 

 

 

 

 


 

 

 



 


 

 


 


 

 


 

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