第29話 アピール?




 「じゃじゃ~ん! 私は〝メスガキ系〟魔法

 少女でぇ~す♡ 穢なんてよわよわぁ~笑」


 『お、おぉ~お‥‥』パチパチ


 

 と言う訳で始まりました。見るからにガチガチの金持ち令嬢れいじょう兼、連盟のつかいこと金条さんへのお披露目自己紹介。

 果たして、ゼラニウムの皆さんはどんな個性的なアピールをしてくれるのでしょう。

 おっと! 先頭を切ったのは藍浦ちゃんか!



 「ふふ、対象年齢は高そうですわね

 うーん‥‥7点」

 


 おぉ? どっから出たんだその得点板w

 そう言えば、まじまじと見たことなかったし丁度いい機会かもしれない。

 藍浦ちゃんは光と共に着ていた私服から一転し、可愛らしい衣装へと姿を変えた。

 フリフリとしたミニスカート、薄い桃色の薄い生地の服に身を包み、ほくそ笑む彼女からは人間を舐めている感じが伝わってくる。

 自分が思っていたような日曜日の朝ごろのようなキャピキャピ(?)じゃないんだな、時代も時代かぁ‥‥



 「んじゃ次ウチねぇ~♪

 〝ギャル系〟魔法少女でぇーす! よろ~」


 『おぉ~』

 


 八重さんは見たこと無かったな。

 制服がモチーフなのか、ベージュの制服に丈の短いスカート、更には薄めの金髪‥‥それにルーズソックスや!

 ギャルと判断するのは容易なまでにギャルだろう、おぉん。



 「意気揚々とした雰囲気、素敵ですわね。

 ルーズソックスって今も息をしてますのね。

 ‥‥ちょっと古めかしいですわね、7点」


 「なっ‥‥! 古‥‥!?」



 もうファッションショーか何かか?

 果たしてこれを越える子は居るのだろうか。



 「つっ、次私です!!」

 「次、私いきましゅ!!」


 「「あっ‥‥」」


 「えぇ、じゃあお二人ともどうぞ」



 なんと笹山ちゃんと小栗ちゃんが一斉にエントリー! 果たして金条さんの目にはどう映るか!!



 「〝元気系〟魔法少女です!!」

 「〝ドジっ子系〟魔法少女ですっ!」

 


 笹山ちゃんの出で立ちはと言うと、1つにまとめた髪、Tシャツに薄そうな上着、それに短いズボン! たぶんスポーツ系で揃えてるのだろう、ジャージかもしれない。

 今もそこらで走っていそうな元気さが伝わってくる。

 一方、小栗ちゃんは癖の入った髪、袖が長くオレンジっぽい色がちらつく服に、薄茶色の膝丈くらいのスカート。

 そして多分、ボタンがズレていた。ドジっ子ってそういうもんか?



 「みんなに笑顔を届けちゃうぞぉ~っ!

 なん‥てね‥‥へへ」


 「えと‥‥えっと! 萌えキュンキュン!?

 ど、どぅですか‥‥」


 「‥‥‥‥‥‥‥‥」





……………………




 「次、私ね」



 おぉ今度は白石さんか。

 端っこでお山座りの二人(4点)には悪いけど、続行させてもらおう。確か高校生でアレはキツいとか言われとったな。まぁ、俺はいいと思うんだけどなぁ~笑



 「一応、〝お姉さん系〟魔法少女です♪︎

 どうですか?」


 『おぉ~!』


 

 足が少し見えるぐらいの丈のロングスカート? と言えばいいかな、ひらひらせずに纏っているようなやつ。細く可愛らしい腕時計や長くすらりと伸びた髪、そして後ろで手を組む仕草、素晴らしいぃ~!



 「あら、とても雰囲気が似合ってますわ

 これは8点ですわね♪︎」


 『おぉ~!!』


 「やった~♪︎」



 さすが白石さんはやるなぁ、最高得点じゃあないか。なんか食事とかでお皿に盛ってくれそうだよね。



 『えっと‥‥んじゃ次は‥‥』


 「あらっ、少々お待ち下さいまし」


 

 個人的に見てみたかった宇江原ちゃんを呼ぼうと思ったが、金条さんの携帯が鳴ったようだ。



 「えぇはい、分かりましたわ、丁度よい機会

 ですので向かいますわ」



 あー、やっぱり忙しいのかな、偉い人って。

 て言うかこの人絶対大人じゃねぇよな? 

背丈もみんなと同じくらいだし。なのにそんな若い人が連盟の遣い? そんなことあるかぁ?



 「すみません、まだ途中でしたが一旦切り上

 げさせて頂きますわね。近くで穢の発生報

 告がありましたの、実戦指導も兼ねて行きま

 すわよ!」


 『ほ、本当ですか‥‥!?』


 

 うげぇ‥‥大丈夫か? 万が一この人にケガでもさせたらヤバいんじゃ‥‥そしたら普通に明日は無いだろうけど‥‥。



 「ですが‥‥もう少し待てとの事です。

 しばらくしたらもう一度連絡が来ますような

 ので、今は待機ですわ」

 

 『え? わ、分かりました‥‥』



 何だよそれ、早く行った方がいいんじゃねえかな? まぁ俺はよく分からんから従っておくしかない、権力的な理由も‥‥込みで!



 「あ、質問! 実戦指導って何するんですか

 ー?」

 

 『うぉい!?』



 敬語のケの字も無い八重さんの言葉が飛んでいった。これは流石に肝が氷点下だった。



 「そうですね‥‥貴女方の戦闘能力を把握する

 必要があるんですの、どれ程の力が有るの

 か‥‥乗り越える力が有るのか‥‥」


 「えぇ~何がぁ?」


 「ちょっと凛奈‥‥!」


 

 あのギャルは鳥か! もう緊張解けたんか!流石に藍浦ちゃんも危険と思ったのか、小声で注意する。

 無駄に育ちのいいメスガキだなぁ、おい。



 「そうですね‥‥」



 一瞬、金条さんの口角が下がったような気がした。






 「貴女たちも‥‥この先いつか、を超えて

 いかなければならない時が来るかもしれませ

 んから‥‥」






 えぇ?



 『死線‥‥ですか?』


 

 今までのお楽しみ的な空気は、彼女の言葉とその悲しげで諦観的な表情によって一掃された。

 今まで見ていた金条さんのふわりとした雰囲気が冷たさを増す。



 「えぇ‥‥文字通り、危機的状況のことです

 わ‥‥」



 更には低くなった彼女の声が、この場に急激な緊張感をもたらしていく。

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