第28話 調査スタート?



 

 『えぇ~え‥‥‥?』


 「「「えぇ~え‥‥?」」」



 俺たちの口から呆れMAXの声が出る頃、

駐車場の方からエンジン音が鳴り始めた。



 『え? ガチで帰ったの?』


 「ほっ‥‥良かった。でも油断出来ない‥‥!

 あの人また来るって言ってるワケでしょ?」


 

 藍浦ちゃんは顔をしかめたままに言った。

 一応リーダーだっけ? この子は。それだから慎重になってんのか。

 というか、そんな事よりも気になる事が‥‥


 

 『みおうちゃん‥‥? なんかお姉さまとか

 言われてなかったか‥‥!』


 「うえっ‥‥! あの~それは‥‥そう!

 なんかの時に一回会ってたの! なんの時

 だったか忘れちゃったんだけどぉ‥‥」


 『おぉイ! なんだよそれ!! って、お

 っ‥‥?』



 会話を遮るように、制服のズボンのポケットに仕舞っていたスマホが鳴いた。

 メール‥‥か、一体誰って‥‥‥‥‥エ"ェ"!?



 『か、かかっか、金条さんだァ!?』


 「ウソっ!? マジ?」


 『え怖い怖い怖い!! 俺、連絡先なんて

 一言も教えてねぇって!!』



 なんだよマジで! 怖すぎんか!?

 しかも金条さん曰く、〝明後日から調査開始ですので、また今日のように会議室にて昼頃お待ち頂けると幸いですわ〟とのこと。



 『ヤバいヤバい! みんな、明後日の土曜日

 昼頃にまた来るとか言ってんぞ!』


 「ええぇぇェ~!? 嫌ですっ!!」


 『何言ってんだ小栗ちゃん! 嫌とか言いま

 せん!!』


 「だってぇ~!!!」


 『いや、だってじゃなくて! と、とにか

 く何も問題起こさなきゃいい訳だ! 取り敢

 えずは大人しく言うことを聞いとこう‥‥。』


 「そっ‥‥そぉねぇ~!! とにかくっ!

 言われた通り、土曜日ちゃんと集まって

 よ!! みんな!!」



 藍浦ちゃんは何だか焦った形相で全員に呼び掛けた。

 俺の気のせいか、他の全員も緊張していたような、してないような。まぁ、俺もヒザ震えてて人の事言えんけども。






 ‥‥‥‥‥と、言うことで。






 「皆さま‥‥今日からしばらく調査をさせて

 頂きますわ。具体的には上の連絡通り、改善

 点や指導も致しますのでご承知を」


 『ハッ‥‥ハイッぃ!』


 「さて、早速ですけれど‥‥実践指導はまだ

 出来そうにありませんので‥‥」


 『実践‥‥ですか?』


 「えぇ、魔法少女ですものね。穢の撃退にお

 いての観察もさせて頂きますわ」


 

 おぉ‥‥マジかい。

 これもしかして調査メインよりも俺たちの指導が目的じゃねぇか?

 というかこの人、恐らく背丈は俺たち高校生と同じくらいなんだよな。でも、この人が連盟

においての権力者だったりするんだろう。どこぞの令嬢だろうし‥‥。



 「まずは貴女たちへ、幾つか質問させて頂き

 ますわ」


 『ゴクリ‥‥!!』


 「まぁ、そんな堅苦しいものではありません

 のよ、皆さま力を抜いてお答え下さいまし」



 ホッ‥‥と全員の力が抜けるのを肌で感じた。

 金条さんは威圧感も出していなく、余裕の持てたお嬢様といった様子だ。



 「まずシステム同期についてなのですが、

 異常や問題点があったりは致しませんか?

 そうですわね‥‥皆さま、ここでやってみて下

 さいまし?」


 「はっ、はーい‥‥!」


 

 藍浦ちゃんの真っ先に返事、リーダーらしい積極性だな。



 『分かりました、用意します』



 先日、みんなから預けられていたライセンスの束を取り出し、俺も準備をする。



 「ふふ、八人と少々、大人数のチームにも

 関わらず、ちゃんと委託義務を守っていら

 していますのね」




……………………




 『んじゃいきまーす』


 「ちょっと!? お待ちくださいまし?」

 

 『え、はい?』



 久々登場、レジ打ち君ことライセンス承認機器で藍浦ちゃんのライセンスを読み取ろうとした、まさにその時。おもむろに金条さんからのストップが掛かった。



 「そっ、その機器を使用してますの?

 ち、ちょっと‥‥」



 やべ‥‥なんか引かれた? 不味いか‥‥!?

 しかも金条さん、黒服の人に耳打ちしてる

 ぞ?



 「ここは本当に黄藤で合ってますのよね

 ‥‥? 連盟はちゃんと措置を執っています

 の?」ボソ


 「綾音様‥‥黄藤で間違いはありませんが、

 今一度連盟にコンタクトを取らせた方が

 良いかと‥‥」ボソボソ



 何を言っていたかは分からなかったが、金条さんがこちらを睨んでいる。やべ。



 「サポーター様? 只今携帯をお持ちでし

 て?」


 『えぇ‥‥はい』


 「連盟のアプリケーションを用意しておりま

 すの?」


 『あ、アプリ‥‥?』


 「はぁ‥‥‥分かりましたわ、取り敢えず今

 はそちらでやって下さいまし。そして、携帯

 をお貸しください」


 『は、ハイッ』



 ヤバい、めちゃくちゃ印象悪いかもしれん。

でも何でだ‥‥?

 取り敢えず言われた通りにポケットのスマホを手渡した。



 「一応言っておきますけれど、ライセンス

 の承認はアプリで出来ますの。そちらの方

 が簡単で即座に出来ますから‥‥。」



 俺のスマホを呆れた顔でいじり、金条さんは言った。すげー、知らんかったなぁ。



 「よし‥‥、これで良いですわね。しばらく設

 定やらでお時間掛かりますので。」


 『ハイ‥‥承知しました‥‥。』



 金条さんは弄り終えたスマホを机の上にゆっくりと置き、顔を上げた。



 「失礼、話が脱線してしまいましたが、

 システム同期を見せて頂きます。順番に1

 人ずつお願いしますわ」



 変身のことをわざわざシステム同期と堅苦ししく金条さんは言った。つーか何でシステム同期なんて言うんだろうか。

 


 「はい!! 私からやります!」



 そんな俺の疑問も消し飛ばすように、藍浦ちゃんの消えない積極性が返事をした。

 


 「それじゃ、お願いしますわね」

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