第36話萩原君、攻められる
【萩原君攻められる】
土曜日12時30分、この前と同じ、俺が改札で待っていると萩原君がやってきた。
「やあ」
「やあ」
すかさず栞が俺の横に
「???」
「あっ、紹介するね、俺の幼馴染の柴田栞」
「こんにちは」
「こんにちは、萩原君ね、はじめましてだよね、でも齋藤さんからはあなたの事聞いているから」
「はあ」
今の状況に理解できていない萩原君は、栞の言うことにもいまいちピンときていない。
「ここじゃなんだから、ニのあたま公園にでも行ってお話しませんか?」
うん、この前の齋藤さんのときと同じだよね
萩原君は、栞に言われるまま、俺は萩原君の横に並んで栞の後ろについて、この前と同じ……と思ったら俺も一緒だった、売店で3人分の飲み物とポテチ、ジャガリコを買って3人でベンチに座る
俺はおまけみたいなものだけど、2人の会話を黙って聞いている
「はじめまして、でこういうこと聞くのもなんだけど、齋藤さんの事で色々聞きたい事があるの」
「はあ」
「あなたの事は齋藤さんからも、かっくんからも聞いているけど、私の事はよくわからないわよね」
「まあ、高木君の幼馴染ということは高木君から聞いているけど、祐子ともそんなに親しい友達だっけ」
「そう、齋藤さんともお友達、だから気になって」
「そう」
「齋藤さんが気になっている男子がかっくんって知ってるわよね」
「ああ」
「あなた、それ聞いてもなんとも思わないの?」
「ああ、高木君はカッコイイし、祐子は3大天使と呼ばれているくらいの美人だし、お似合いだと思うよ、だから……」
「だから?」
「裕子は外見だけじゃなくて性格もとても良い子だから、幼馴染の僕としては、祐子には幸せになってほしいと思っているんだ」
「そう、それで齋藤さんもあなたも幸せになれる?」
「……ああ」
「ふ~ん」
「何か?」
「あのね、別にあなた方がどうなろうと私には関係ないし、あなた達が自分の気持ちに嘘をついて、そうやってかっこつけて、幸せになってほしいとか言って好き勝手するのは自由なんだけど、そのとばっちりで私とかっくんの仲をじゃまするのは勘弁してほしいの」
「はあ?」
「萩原君だっけ?あなた齋藤さん事、好きなんじゃないの?」
「何言ってるんだ?」
「ばればれなんだけど? あなた6月頃、学校でお友達に齋藤さんについて聞かれたとき、ただの幼馴染で好きでもない、なんとも思ってないって言ったでしょ?」
「……」
「本当は齋藤さんが大好きで、同じ高校に行きたくて、でも今の成績でじゃ無理って先生に言われて、それでも同じ学校に行きたいから一生懸命勉強して、晴れて合格できて、朝も帰りも一緒だったのに、急に齋藤さんがよそよそしくなって、『気になる男子がいる、同じ夏季講習に行こうと思う』って言われて、急にかっこつけて幸せになってほしい、とか言い出したんじゃないの?」
「……」
「図星のようね」
「何言ってるんだ、君に僕達の事をとやかく言われる筋合いはない」
「だから、あなた方が何しようと関係ないけど、私たちのじゃまをするから言ってるんじゃない!」
「じゃなまなんか……ただ僕は裕子が…….」
「まだそんな事言ってるの?あのね、君が友達とその話をしていたのを、齋藤さんは廊下で聞いてたの!知ってた? 齋藤さんがよそよそしくなった時期と君が友達に言った時期、考えて見なさいよ」
「……」
「思い当たるでしょ」
「それまでは、高校にはいってからもいつも一緒だったんじゃないの? 朝も帰りもそれ以外でも一緒だったでしょ?!」
「君もかっくんとおんなじ、どううしようもないヘ・タ・レ!
ちゃんと齋藤さんに自分の気持ち言いなさいよ!
周りからちょっとからかわれて、そんな事言ってるからこんな事になるのよ、本当にそれでいいの? 一生後悔するかもしれないのよ?」
「栞―」
「かっくんは黙ってて」
「でも……」
「あっ、ごめん、かっくんとおんなじヘタレがね、うだうだ言ってるからちょっとイラっとしちゃって」
「うん、ごめん」
「そうよ、かっくんもヘタレ! 反省して!」
「ごめん」
「あの~」
「あっ、ごめんなさい、あのね、齋藤さんの事が好きならちゃんと告白すべきよ、断られたら、いままでの関係が壊れるとか思ってるんでしょ、でもね、もう既に齋藤さんがかっくんの事が気になってるって言ってるんでしょ、だったら自分の気持ちを伝えたっていいじゃない、何もしないでいるよりかは気持ちがすっきりするわよ」
「……」
「そうよね、初めて会った人からこんな事言われてもね、はいわかりました、なんてそう簡単にはいかないわよね。
でもね、私は齋藤さんともお友達でかっくんとは幼馴染で許嫁なの、だからあなた達を見ていると、特に君を見ているとね、誰かさんと重なっちゃって、私も、2人には幸せになってほしいの」
「……まあ、言っていることはわかったよ」
「そう、今日はそれだけでもいいわ、でもよ~く考えて、本当にそれで幸せになれるか、後悔しないか。
斎藤さんとは幼馴染なんでしょ?幼稚園から一緒だったんでしょ? そんなに簡単に2人の仲が切れるような事はないんじゃないかな~」
「まあ、考えてみるよ」
「そう? そう言ってくれると助かるわ、せっかくかっくんとデートしたかったのに、こんなことに時間を取られたんだから」
「ああ、悪かった」
「いいえ、わかればいいの、じゃあ本当によく考えてね」
「ああ」
「じゃあ、私たちはこれからデートだから」
「ああ、じゃあ」
一方的に栞がしゃべくり、萩原君は言われるまま、ほとんど何も言い返せなかった。
俺は、栞が……俺も栞にちゃんと言わなきゃ……
このまま萩原君と別れ、栞と2人でデート……
デート!っデートだ!
OO寺駅は街デートには十分すぎるほどの街
2人で色々なお店を回って、雑貨を買ったり、肉屋さんコロッケを買って食べ歩きしたり、大好きな人をこうやっているのって本当に楽しい。
あっと言う間に夕方になって、2人家に帰る、栞が夕食を作って、俺は横でちょっと手伝って、じいちゃんと3人でご飯を食べて・・・・・・こんな日常生活がとても楽しくて。
今日はいろいろあった、俺も身につまされたけど、よかったと思う、2人うまくいけばいいな、なんて思いながら眠りついた。
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