ぼっち君は幼馴染と楽しい高校生活のはずが……陽キャ女子が俺に絡んできて大変

高梨克則

第1話はじまり

【はじまり】


チュンチュン

ん~、あれ?・・・やばい、寝坊した、うわ~

「おい、勝典、いつまで寝てるんだ、ほら行くぞ!」

「えっ?」(うわ~、やっぱり)

「えっ? じゃないだろ、ほらさっさと起きろ!

ったく最近は稽古をさぼってばかりだろ、今日は久しぶりだから徹底的に鍛えるぞ!」

「イヤイヤ、今日も学校あるから」

「何言ってる、学校に行くまでも十分時間があるだろうが!ぐだぐだ言ってないで、さっさと着替えて来い!」

「は~い・・・」

「なんだその返事は!」

「はいっ!」

「よし、早くしろ、行くぞ」

稽古が終わり、汗だくになって戻ってからシャワーを浴び、髪を乾かす時間がないから、そのまま、弁当箱に適当にご飯と冷食と昨日のおかずを突っ込んで、俺とじいちゃんの朝ごはんを用意して、急いで食べて出かける。

「じいちゃん、行ってきます」

「おお、帰ったらこの続きをするからな」

「えっ、だって今日は塾だから」

「そうか、じゃあ明日も朝からやるぞ」

「……は~い」

「何?」

「はいっ」

「よし」

「行ってきます」

「おう、行ってこい」


あ~あ、寝坊したばっかりにじいちゃんに捕まってしまった。

いつもなら、じいちゃんに捕まらないように、もう1時間早く起きて、弁当作って、朝ごはんの準備して、自分だけさっさと食べて学校に行くのに、今日は寝坊してしまって、捕まっちゃった。 


今日は、朝寝坊をして、じいちゃんに捕まってしまったせいで、部室で勉強できなかったから、どこかで挽回しなきゃあ、そう思っているうちに朝のHRが始まる。


俺は、一言でいえばぼっち、この朝のことでもわかるように、髪はシャワーで濡れたまま、学校に着くまでに乾けば良い、つまり自然乾燥。


入学式前に切ったっきりで伸び放題だから目が隠れているくらいまで伸びて、目が悪いから眼鏡をかけている、そんな風貌だから、周りの皆は俺がどんな顔をしているかも忘れ去られている。


入学式の時は、おばさんが、「ちゃんとして行くのよ」って言って、入学式の1週間前に髪をカットしてくるように言われ、今風に前髪もそれっぽく整えてもらい、服は、私服OKだけど、毎日変えるなんてことは俺にとって超難関、じいちゃんと2人暮らしという事もあり、なんちゃって制服(標準服)をおばさんが買ってくれ、最初のうちはきっちりとした恰好でいたから、周りの皆も俺に声をかけてくれ、友達ができるかな?って思っていたけど、学校が終わったらじいちゃんのところで稽古しなきゃいけなかったし、将来の夢をかなえるため、入学早々塾にも通うことにしたから、クラスの皆がクラス会やらカラオケ、ボーリング大会なんかで集まっている時、1人さっさと帰っていた。


さっきも言ったように朝はじいちゃんに捕まらないうちに家をでるから、髪は寝ぐせがついたまま、捕まったら朝稽古につきあわされるから、とにかく一刻も早く家を出なきゃいけない。

じいちゃんに捕まって朝稽古すると、今度は学校に間に合わなくなるから、髪は濡れたまま、自然乾燥に任せてる。


制服も最初におばさんに買ってもらった1着をずーっと着ているので、そうなると、見た目もそんなだし、つきあいも悪いから……気づけばぼっちに。

今では、朝、隣や前後の席の人に挨拶をするくらいで、ほとんど会話なし、昼も部室で弁当を食べてそのまま塾の予習をするので、午後の授業が始まるギリギリまで部室にいるから、クラスの皆とはほとんど口をきかない。

たまに同じ図書委員の女子と話すけど一言二言ぐらいで、行く先が図書室のカウンター内だから当然会話はないし……そういう事。


とにかく俺は中学生の時に宣言した自分の夢をかなえるため、一生けん命勉強したいんだけど、じいちゃんがじゃまをするんだ。

だから朝はじいちゃんに捕まらないように早く起きて、学校に行って、部室で勉強したいんだけど、ときどき寝坊してしまって、じいちゃんに……あ~あ。

じいちゃんは、勉強なんかしなくてもいいんだ、それより心と体を鍛えろ、って、そりゃあじいちゃんの財産を相続するから食べていくのに困らないし、人としてならじいちゃんの言う通りなんだろうけど、でも俺には夢があるんだよ。


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本当なら毎朝学校に行く前にしたいんだけど、朝は忙しくて(って言うか、じいちゃんに捕まる前に急いで家を出るから)できないから、家に帰ってきてから必ずする事がある。

今日も帰ってから仏壇の前で手を合わせる。

(とうさん、かあさん、俺頑張ってるよ、絶対とうさんやかあさんみたいになるんだ、だから見守ってくれ)


「おう、とうさんとかあさんに挨拶したのか」

「うん」

「そうか、忘れるなよ」

「うん、わかってるよ、」

「よしよし」

でも、じいちゃんは俺が何を思って、手をあわせているかは知らないんだ、それを言った時、思いっきり反対されるから。

小学生までは俺もじいちゃんにしごかれ一生懸命稽古したから某空手大会の東京地区の小学校低学年の部で優勝したこともあって、でもあの事故(災害)があってから、俺は別の道に進むことを決めたんだ。


今は、館長はおじさんだけど、その前はじいちゃんで、じいちゃんは現役のころはかなり強くて、日本代表としてヨーロッパ支部に指導に行ったり、引退後も協会の理事だったりしている。

でも俺のとうさんは、そういうのに全然興味がなかったし、運動神経もゼロ、代わりにおじさん(とうさんの弟)は興味があったらしく、おまけに体格もでかくて、よく、とうさんの方が弟に、おじさんの方が兄に間違えられていたらしい。


それもあって、じいちゃんのしごきに耐え、メキメキ上達し、そのおかげで高校の時は全国大会の優勝候補として有名になり、大学の空手部の監督から直接勧誘があって、そのまま推薦で大学の空手部に、大学に残るか高校の教師になるか悩んだ末、そのままじいちゃんの跡をついで、館長をやっている。

ただ、おじさんのところの子供は女の子で、そっちにはまったく興味がなく、逆に思いっきり女子力高め、だからじいちゃんもおじさんも俺に跡を継いでもらいたい、って思っていたんだけど、とうさんとかあさんがあんなことになって、おじさんとおばさんに、俺将来はとうさんやかあさんみたいになりたいんだって言ったら、おじさんはあきらめてくれたんだけど、じいちゃんが頑固で全然聞いてくれなくて……だから、毎日、じいちゃんから逃げるようにしてるんだ。


おじさんもじいちゃんには頭があがらないし、だけど俺の夢も認めてくれてるし……板挟みでちょっとかわいそうなんだけど、まあ、俺がじいちゃんより早く起きて、学校に行って、帰りは塾かそうじゃないときは図書室で勉強すればなんとなるからな、うん。

それに、時々はじいちゃんに付き合って道場で練習稽古してるし、でも小学校の時に比べるとはるかに弱くなっているから、跡をついで館長になるなんて無理なんだ。

じいちゃんも薄々は感じているんだろうな……

じいちゃん、ごめんね。


////////////////////////

うちは代々農家で、ここらへん一帯は高木家の畑だった。

それが都市開発やらなんやらで道路ができたり、相続対策なんかもあって、畑はほんの1部しかなくて、それも都民農園として無償貸与して、他は賃貸マンションが6棟と道路沿いに貸しビルが4棟、月極駐車場が何か所かあって、5か所くらいある空き地は都に公園として無償貸与している。

その貸しビルの1つに、2フロアーまるまる道場として使っている。


おじさん曰く、顧問税理士に相談して相続対策もしているので、賃貸マンションや貸しビルと1部の月極駐車場のほとんどそのままとうさんとおじさんが相続することになっていたらしいけど、とうさんが死んでしまって、その分を俺が相続するらしい。

おまけにとうさんとかあさんの事故(災害)?で国から多額の保証金も入って、だからお金には困らないんだけど。

お金じゃないんだよ、ねっ、とうさん、かあさん。

俺はとうさんやかあさんみたいになっていろんな人を助けんるだ!って思ってるんだけど、その結果が……ぼっち。


髪も服に時間をかける余裕がないから、学校は標準服(制服)とジャージ、家ではスウェットだし、あと道着、それ以外は近所のスーパーの2階にある鍋売り場の向こうの洋服コーナーで買ったジーパン1本とTシャツ数枚、パーカーがあれば何とかなると思ってるんだけど、どうもそれがダメみたい。


この前の日曜日、じいちゃんに付き合って道場でしごかれたあと、コンビニでアイスを買って、食べていたら、たまたま幼馴染に出くわした。


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