第12話栞と晩御飯
【栞と晩御飯】
「うん」2人でスーパーに買い物に行くんだけど、
栞が手を出してきて、それを見ていると
「ほら、手!」繋ぐの?うれしいけど……
もたもたしている俺の手を栞が握って、
「許嫁なんだからね♡」
栞は優しすぎる、いくらフリでも大好きな栞にそんな事言われたら……
いつか栞にふさわしい男が現れて、栞がそいつとこんな風に手をつないでスーパーにって思うと…….、
だからせめて今だけでもこうしていたいって思うのは……我儘なんだろうけど、これくらい許してくれるよな栞。
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晩御飯の材料を買って、2人で栞のマンションに、栞が晩御飯の準備を、俺はなんとなく栞の横に立って
「俺も手伝うよ」
「ありがと♡」
じゃがいも、ニンジンの皮を剥いて栞に渡すと栞は手慣れた包丁さばきでどんどん野菜を切る。
「カレー?」
「うん、そうすれば明日も食べれるでしょ」
「そうだね」
手際よく鍋で玉ねぎをキャラメル色になるまで炒め、料理酒に付け込んでいた肉、ニンジンそして水を入れひと段落
「あれ?じゃがいもは?」
「はやめに入れると解けちゃうから、フライパンで軽く火を通して、あとから入れるの」
「そうなんだ、だから俺が作るカレーはいもが、ちっちゃっくなるのか」
「あとね、玉ねぎの炒め具合で横須賀海軍カレーにもスープカレーにもなるんだよ」
「それと、お肉も10分くらい料理酒に漬けておくとやわらかくなっておいしいの、本当は圧力鍋があるとそんな手間もいらないんだけどね」
そのほかにも色々、隠し味?を教えてくれた。
「そっか、やっぱ栞ってすごいな」
「そう? じゃあかっくんと結婚したら圧力鍋買ってね♡」
「おお」
冗談でもそんな事言われると、うれしくて思わずおもいっきり抱きしめたくなる、でもそんな事できるわけないし…….
栞のやさしい言葉で、想像してしまう俺。
2人並んで料理をしている姿。
栞と夫婦になってこんな風に、幸せだろうな……
おばさんが帰ってきて
「あら、かっくん?久しぶりね」
「はい、お久しぶりです」
「1年ぶり?そうよね高校生になったんだから、また昔みたいに栞と一緒なのね」
「はい」
「そうそう、私が夜勤の時、栞の面倒を見てくれてありがとうね」
「いえ、じいちゃんがそうしろって」
「あれ? かっくんはイヤなの?」
「……」
「うれしいくせに」
「もう、かっくんをからかわなで!」
「はいはい」
じいちゃんはあの歳になってもおじさんのところや空手道場の人たちや、協会の付き合いで夜も遅くまで家にいないことが多く、昔から栞とおばさんと3人で晩御飯を食べたり、クリスマスや誕生日や初詣……3人一緒が多かったから、約1年ぶりでもすぐになじむ、違うのは、俺も高校生、そういう冗談を意識してしまう。
中学生でも男女の付き合いのある奴もいるけど、俺の周りのほとんどいなかった。
俺は受験でいっぱいいっぱいの連中と一緒だったから、高校受験を制して高校生になったら彼女を作るぞ! おう!
俺はずーっと栞が好きだったから、栞にカレシができないかぎりずーっと栞のそばにいれる、いたい、だからまったくそういうのに関係ない側の男子のフリをして、一緒に『おう!』と言っていた。
栞は女子の中高一貫校に通っているから、学校内で彼氏ができることはないけれど、どんどん綺麗になっていくのを見ていたから、同じような男子校がまわりにたくさんあって、そこの生徒からたくさん告白されていると聞いていたので、高校生になったら、きっと彼氏ができるんだろう。
だから俺は……受験が終わって高校生になっても栞には声をかけなかったんだ。
今までのように幼馴染として栞と一緒にいると、ふと彼氏の話がでるだろう、その時平常心でいられるか自信がなかった。
それがこの前コンビニで栞と久しぶりに話をして・・滅茶苦茶うれしかった。
律儀な性格の栞は昔の恩を感じているんだろうけど、それで小学校の時の約束とか言って俺に気を使って、だから申し訳ないと思ってはいるんだ。
それなのに、俺はそれに甘えて、以前のように一緒に俺の部屋、図書館や、塾も一緒、
おまけにおばさんが夜勤の時は隣の部屋にいるんだよな。
ずーっとこのまま彼氏ができなければ、なんて考えてしまう。
以前のように3人でテーブルを囲んで、
おばさんのいろんな話を聞きながら晩御飯も食べ終わって、一息つくと
「かっくん、私の部屋に行こ」
「うん」
明日もあるので、あまり遅くならないうちに帰る
おばさんも玄関まで見送ってくれ、挨拶すると
「かっくん、これからも栞をよろしくね、それと、くれぐれも避妊だけはちゃんとしてね♡」
「……」
「おかあさん!」
栞とそんな事……俺だってこれでも一応高校男子、大好きな栞と……
「かっくん、」どうしたの?大丈夫、ほらもう1度あがって」
「えっ?」
「鼻血」
「あっ」口の中に生暖かくて鉄臭いのが・・
「もう、お母さん!」
「あら?かっくん、ひょっとして想像しちゃった?」
「いや、そんな・・・」
栞が真っ赤な顔をしながら、薬箱を持ってリビングに。
俺の鼻をつまみながら、しばらくじーっと
鼻血なんて、小さいころ、じいちゃんにしごかれて、鼻をぶつけたとき以来で……
なんとか収まったので、そのまま帰ろうとすると
「鼻の中で血が固まって、むずむずしても、明日まで我慢よ」
「うん、わかってる」
「大丈夫?」
「うん」
自分の部屋、ベッドに寝転がって、今日1日どたばたしたけど、3人での晩御飯は久しぶりでおばさんは、昔のまま俺達2人をからかって・・俺はうれしいんだけど、ちょっと寂しくて、でもその居心地の良さに、しばらくこのままが続くようにって……眠りについた。
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