第13話従姉 襲来

【従姉 襲来】

夏期講習の前半が終わり後半の授業が始まるまで1週間ほど空きがある。

塾も夏休みということを考慮しての事。

たいていは、この間に学校の課題をしたり、家族旅行をするなど、それぞれ自分の時間を楽しむ。


俺はというと、じいちゃんと2人暮らし、おじさん一家は俺に気を使って○○に一緒に行かないか? と 誘ってくれたけれど、おじさんのところには、忍がいるから、昔はよく一緒に連れて行ってもらったけど、今はもう大人だし、だから遠慮して、俺は塾の夏期講習があるからと言って断ったんだけど、そうしたらその夜、忍が突然家にやってきた

「かっくん」

「こんな夜に1人でどうしたの?」

「こんな夜って言っても、隣なんだから別にいいじゃない」

「まあ、そうなんだけど、おじさんやおばさんは、心配しないの?」

「別に。かっくんの所に行ってくるって言ったから、平気よ」

「そっか、まああがりなよ」

そう言って忍を居間に通すと、よく知った家だから勝手に冷蔵庫から飲み物を取って、適当にソファーに座ると

「ねえ、なんでパパの誘いを断ったの?」

「いや、せっかくの夏休みなんだから家族3人の方が楽しいだろ、それに夏季講習の前半は明日まであるし、1週間後にまた後半が始まるから、何もしないでぼーっと過ごしたいかなって」

「ゴールデンウィークの時も断ったじゃない、春休みの時、高校受かったんだからこれからは、また一緒に遊ぼうねって約束したのに、あれから全然連絡くれないし、心配してたんだよ?」

「ごめん」

「どうせ、その1週間は栞ちゃんと遊ぶんでしょ」

「いや、まだ何も決まってない、それに」と言っていると栞がやってきた

「ただいま~」

あれから、栞はこの家に来るときは「ただいま」と言って入ってくる。

当然鍵も持ってるから、勝手に入って勝手に出ていく。


栞と忍、2人は驚いたあまり挨拶も忘れ、見つめあって、

忍が「どうして?」

栞と忍が固まって向き合ったまま

「どうして?」

「何?」と栞が

「どうして栞ちゃんがこの家にそうやって入ってこれるの?鍵は? ……ただいまって何?」

「忍ちゃんは知らなかったんだ、そうよ、鍵も持ってるし、私の部屋もあるから」

「何それ?!」

「何って、そういう事よ」

「なんで私の知らないうちにそういう事になってるのよ、かっくん、どういう事?」

「どういう事って、じいちゃんとおばさんの間でそういうことになったんだよ」

「何それ、全然知らなかった」

「おじさんも知ってるよ」

「そうなの? パパったら、そんな大事な事、なんで教えてくれないのよ、もう」

「忍ちゃん、あんまりおじさんと話さないでしょ、もう少し会話した方がいいんじゃない?」

「そうだけど……」

「で、どうしたの?」と栞が忍に聞くと

「そう、かっくん!……この前は断ってきたから、夏休みは一緒に遊びに行けると思ってたのに、今回も断って、ひどい……」

「いやいや、俺がいるより、家族3人だけの方が楽しいだろ」

すかさず栞も

「そうよ、身内っていっても、ねえ、やっぱり家族3人の方が楽しいと思うわ」

「栞ちゃん、そういうのってずるくない?」

「そう?」

「もういいわ、かっくん、夏季講習は明日までよね」

「でも、1週間後からまた始まるけど」

「ということは明後日から1週間は自由って事ね」

「まあ、そうだけど」

「じゃあ明後日、私と一緒にプール行かない?」

「「プール?」」

「いや、明後日はさすがに ちょっと」

「どうして?」

「いや、夏季講習が終わった次の日くらいゆっくりしたいし」

「じゃあ3日後、決まりね!」

「イヤイヤ、まだプールに行くって決まってないよ」

「何言ってるの、今まで私に連絡よこさなかった罰、それとパパの誘いを断ったんだから、その代わりかっくんは私と遊ぶの!」

「ちょっと、何1人で勝手に決めてるのよ」と栞が割って入る、

「何よ」

「何よじゃないわよ、かっくんにはかっくんの予定があるの、それを勝手に1人で決めないでよ」

「でも、かっくんは何もないって言ってたわよ」

「あのね、それは私と2人で相談する事になってるから、今は何もないって言ったの」

「かっくん、そうなの?」

「……まあ。そうだけど……」

「何、それ、ははーん、そう、栞ちゃんが勝手に決めてるんでしょ、そんなの許さない、3日後のプールは決まり!」

「ちょっと……いいわ、じゃあ、私も一緒ね、かっくん!それでいいわね!?」

「ああ」

「ちょっと、なんで栞ちゃんが一緒なの?私とかっくんの2人で行くの!」

「じゃあダメ、その日は図書館でお勉強です」

「……もう、じゃあしょうがないから3人でプールね 栞ちゃん……ずるい」

「何言ってるの、私とかっくんでお勉強の予定だったのに、忍ちゃんの希望を入れてあげたんだから、しょうがないから本当なら2人のところ、忍ちゃんも入れてあげるのよ、感謝してほしいわ」

「やっぱりずるい」

「フフフ」

「うわ~、なんかすっごく悪い顔~、もう腹黒栞め」

「あらー、何かしらー」

「もう」1人ぶつぶつ言いながら忍が帰って行った。


「なあ、栞、本当に3日後プール行くの?」

「そうね、忍ちゃんと約束したから、そういうこと」」

「そっか」

「どうしたの?」

「いや~、忍に悪いかなって、それに、俺、海パン、もってないし」

「忍ちゃんはかっくんと行きたいから大丈夫よ、それに私も水着買うつもりだったから、明後日一緒に買いに行きましょうよ」

「うん」

「それに、かっくんの洋服、この前買ったのしか持ってないんでしょ?」

「うん」

「じゃあ、ついでにそれも買うわよ」

「うん、なんかいつも悪いね」

「何言ってるの、許嫁として当然の事よ」

「……」

「何黙ってるの?私はかっくんの許嫁なんだよ!?そこはありがとうでしょ」

「でも、それって齋藤さん対策だろ」

「あのね、それでも許嫁なの!

それにこの前にも言ったでしょ、本当の許嫁のようなものなんだよ?!」

「……まあそういう事か……栞、ありがとう」

「もう、そういうことじゃないの!」


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