第14話夏季講習前半最終日
【夏季講習前半最終日】
翌日、今日行けば明日から1週間お休み
いつものように、栞と2人で塾へ、今日は齋藤さんが先に席を取っておいてくれたので、そこに3人、どの順番で並ぶか、2人並ぶと揉めそうなので俺が真ん中に。
いつものように、近くのカフェでランチを頼み、いつものように食べながら、
「高木君、明日から1週間お休みでしょ、何か予定あるの?」
「いいや、明後日のプール以外、今のところないけど」
「プール?」
「ああ、栞と忍と3人で行くことになったんだ」
「プール?忍?誰?初めて聞くんだけど、栞ちゃんどういう事?」
「あ~あ、そうよね~、かっくんの従姉よ」
「従姉?プール?」
「そう、昨晩突然やってきて、そういう事になったの」
「……私も行く」
「……そうなるわよね~」
「ねえ、高木君、明日なんだけど暇?」
「いや、明日は栞と海パン階に行く」
「栞ちゃん?そういう事?」
「そうよ、だって忍ちゃんが急に来てそういうことになったんだからしょうがないじゃない」
「そうなんだ……私も水着買うから一緒に行く」
「はあ、しょうがないわね」
この日は講義が終わると、明日の約束をして、そのまままっすぐ家に帰る。
SIDE―栞
もう、本当ならかっくんと2人だけでプールに行くつもりだったのに。
忍ちゃんの事しっかり忘れてた、
まさかこのタイミングで来るなんて。
忍ちゃんはもう大学1年生だし、よく高校時代から男子校の生徒と合コンとかカラオケとかボーリングとか行ってたからかっくんのことはあきらめて、てっきり彼氏がいると思ってたのに。
1回くらい齋藤さんと3人で遊んでもいいかなっては思ってたけど、4人でプール?
どうしよう、忍ちゃんって女子力磨くことにすっごい一生懸命だし、胸は・・・齋藤さんには負けるけど、忍ちゃんに勝ってるし……、でもすっごく大人っぽくて……もう、あの2人に負けないような水着買うんだ。
/////////////////
―SIDE裕子
えーっ、高木君に従姉?聞いてないよ
一緒にプール?何それ、ひょっとして従姉も高木君狙い?
栞ちゃんだけでも強敵なのに、もう1人って……絶対2人に負けないような水着買って……がんばる!
でも、明日楽しみ、本当は2人っきりでデートしたかったんだけど最初のうちはしょうがないっか、学校が始まったら栞ちゃんは違う高校だから……フフフ
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―SIDE忍
そんなの聞いてないよ、栞ちゃんが一緒に住んでるの?
何それ、私のかっくんが栞ちゃんに汚染されてる
なんとか栞ちゃんから奪い取らなきゃ
私が小学生でかっくんが幼稚園児の頃、1人っ子の私はかっくんが弟みたいで、かわいくて2人でよく公園で遊んでいた。
私と同じクラスの男子が、それを見て、私にちょっかいをかけてきたとき、ちっちゃいかっくんが一生懸命、私を守ってくれて、でも幼稚園児が小学生数人に勝てるわけなくって、そうしたらかっくんは「忍ねえちゃんは俺が守る!」って言って、おじいちゃんとパパの所で空手を習うようになって、それからの何かあればかっくんが私を守ってくれて、かわいくてかわいくて、頼もしくって、よく一緒に寝たりもしてた。
かっくんは、小学校、中学校とどんどんかっこよくなってきて、思えばそのころからかっくんの事が好きになってたんだと思う。
そうなると、どんな男子が現れても、かっくんほどかっこよくないし、かっくんは何があっても私の事を絶対守ってくれるっていう安心感と信頼があるから、益々他の男子なんかに目が行くわけはない。
かっくんが小学生の時、栞ちゃんが転校してきてから、最初の頃は3人で遊んでいたけれど、だんだんかっくんは栞ちゃんとばかり遊ぶようになって、まあ私はすぐに中学生になったから、今までのようには遊べないけど、それでもパパが誘って4人でお出かけしたり、ご飯食べに行ったり、旅行にも行ったわよね、そういう時は私と一緒だったのに、いつのまにかそれまでも栞ちゃんといるようになって、せっかく大学生になったんだから時間もたっぷりあるし、かっくんが卒業するまでにしっかりかっくんを育てて、私のものにする・・・・・・・女子大生と高校男子のカップル、年下の彼氏♡ って思ってたのに、もうっ!
高校の時では、行きたくもない合コンとかボーリングとか皆が私をしつこく誘ってくるし、どうしてもってお願いされるから仕方がなく行くんだけど、そういうのに参加すると決まって男子がしつこく誘ってくる、RINE?電話?アドレス?絶対教えるわけないじゃない。
時々間接的に友達経由で教えてってくるんだけど、そういう奴には特に教えない「そういうセコイ人って大っ嫌い」って言って断っていたのに、
だって私にはかっくんがいるんだから
だから彼氏がいるから、そういうのはダメって言ってるのに、どういうわけか、男子校の生徒が私の名前知ってて指名してくるらしいの、友達付き合いも大切だからって思ってそんな事に付き合ってたから、なかなか時間だとれなかったけど、やっと大学生になって自由にかっくんと!って思ってたのに、いつの間にか栞ちゃんが……くやしい、なんのために女子力磨いてきたと思ってるのよ
……もう!
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―SIDE勝典
忍が、わざわざ俺をプールに誘ってくれた。
いつもいつもありがとう、わざわざ俺のために、申し訳ないよ、やっぱり忍はやさしいな~。
栞が引っ越してくるまで、ずーっと俺の面倒を見てくれて、本当なら、3つも年上だから、同じ年の友達と遊びたいだろうし、こんな小さい子と遊ぶのはつまらないだろけど、それなのに俺に付き合って遊んでくれたんだよな~、
そんな忍をからかってくる男子も結構いて、俺、一生懸命忍を守ろうとしたんだけど、幼稚園児の俺が小学生の男子にかなうわけなくて……でも忍は、そんな俺をほめてくれて、それがとってもうれしくて、忍にべったりだった。
かあさんが夜勤でいないときなんか、わざわざ俺と一緒に寝てくれて、俺が眠るまでずーっと頭を撫でてくれたりして、本当に大好きだった初恋の人。
それから、栞が引っ越してきて、忍も中学生になったから、今までみたいに一緒に遊ぶこともなくなったけど、それでもおじさんやおばさんが俺に気を使って、一緒に旅行や食事なんかに連れて行ってくれる時なんか、ずーっと俺の面倒を見てくれて、前みたいに忍にべったりくっついていたっけ。
とうさんとかあさんが事故で亡くなった時、栞が慰めてくれたけど、栞がいないときは忍が一緒にいてくれて、夜も時々一緒に寝てくれたりして、そう思うと俺、栞と忍の2人のおかげで立ち直れたんだと思う。
それから、俺が医者になるって宣言して勉強始めるころは、忍は既に高校生で、俺からみたらすっごい大人の女の人で、もうそのころは、高校生の友達もたくさんいたようだし、そっちの付き合いもあるし、きっと彼氏もできたんだろうなって思ってた。
それでも、時々俺の事を気にしていてくれて、一緒の晩御飯を食べたりしてくれて、あいかわらず優しかったよな。
ある時、忍ねえちゃん、って呼んだら
「もうかっちゃんも大きくなったんだから、いつまでも忍ねえちゃんじゃなくて、これからは、忍って呼んでね、私もかっくんって呼ぶから」
「うん」
俺にとって忍は初恋の人であり、今でも栞に負けないくらい大切な人。
それが、大学生になったら大人の付き合いもあるだろうし、彼とも一緒にいたいだろう、なのにこうやって俺を誘ってくれるんだよな、ありがとう。
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