第44話勝典にカマをかける佐々木彩

【勝典にカマをかける佐々木彩】


今日は図書委員の当番の日


 図書室で受付をしていると、いつものように佐々木さんがやってきて

「ねえ、高木君、この前の校門に立っていた美人のお姉さんって高木君の恋人なの?」


「ああ、俺の恋人」

「へ~、そう、ねえ、どこで知り合ったの?」

「あー、うん、そのー、小さい頃からの知り合いで……」

「小さい頃?」

「……はい」

「そう、幼馴染なんだー」

「ああ、はい、幼馴染です」

「で、恋人?」

「あっ、はい」

「ふ~ん」

「告白したのはどっちから?」

「えーっと・・・・・」

「……フフフやっぱりね、ねえ、彼女さんのお名前は?」

「彼女の名前?」

「そう、高木君の彼女の名前」

「えーっとー」

「あれ?彼女なのに名前知らないの?」

「いえ、知ってるけど・・・・・」

「知ってるけど?言えないの?」

「いえ、そういうわけじゃないんだけど」

「じゃあ、教えてよ、ねえいいでしょ?」

そう言って俺の腕に思いっきり胸を押し付けぴったりくっついて、俺の顔を覗き込む

「……」

「あれー?どうしたのかな?名前わすれちゃったー?その程度の彼女なのかな~?」

「そんな事ない、忘れるわけなんて絶対ない!」

「じゃあ教えて」耳元であま~い声、息が耳に当たって……ゾクゾク

「高木忍……」

「高木?」

「ああ、……はい」

「同じ苗字?」

「……」

「ねえ、本当に恋人? 高木君ってお姉さんとかいるの?」

「いない」

「じゃあ従姉だ」

「……」

「やっぱり、従姉でしょ、なーんだ、そっか従姉なんだー、ふ~ん、そうよね高木君もかっこいいんだから従姉も美人よね~、そっか~」

「……」

しまった……やっちまった、どうしよう、栞と忍に連絡しなきゃ、まずい、こまった

「ねえねえ、学校帰りに従姉と2人で遊んでいるんでしょ?だったら、私とも帰りに遊んでもいいわよね♡」

「イヤ、そのー」

「なーに?どうしたの?学校帰りに一緒に遊ぶだけだよ?」

「……」

「じゃあ決まり!ねえ、今日は従姉のお姉さんは来ないの?」

「……うん」

「じゃあ、今日、図書室を閉めるまで待てるから、一緒に帰ろ♡?」

「でも、今日は早く帰ってオバロの10巻と11巻を見なきゃいけなくて」

「オバロ?』

「アニメが始まるんで、その前にもう1度読んでおかないといけないから」

「アニメ?そっかーでも1時間くらいなら平気だよね?』

「でも電車がー」

「〇寺駅だから、乗り換えるんでしょ?」

「……」

「じゃあ決まり、時間まで、あそこで勉強しているから」


一方的に佐々木さんはそう言って、一番近い席に座って、かばんから問題集とペンケースを出して勉強を始めた。


佐々木さんに言われるまま。


結局そのまま図書室を閉める時間になったけど、その時間は佐々木さん以外は皆帰ってしまい、佐々木さんはニコニコしながら

「一緒にかたずけて帰ろ♡」

鍵を閉めて、先生に返し、2人で帰る事に

「ねえねえ〇寺駅でいいよね?」

「はあ」


佐々木さんに手を掴まれ引っ張られるように、井の頭線の終点で降りると、JR改札に行くことなくアトレを通り過ぎ南口へ出て、入ったこともないカフェへ


「高木君、ここ来た事ある?」


俺は、栞や忍に連れられて色々なカフェに来ているけど、ここは初めて


「いや、初めて」

「そう、いい感じでしょ?ねっ♡」

「うん」


ゆったりしたソファーみたいな椅子に並んで座る変わったカフェ

2人で並んでいるんだけど、佐々木さんはぴったりくっついて俺の腕に胸を……

勘違いしてしまう、こんな事だから男子に勘違いされてトラブルを起こしているのに、本人はわかっているのか?


思わず

「佐々木さん、近い、近すぎるよ」

「うん、わかってるよ♡」


そう言うと、さっきよりもっと近く胸だけじゃなくて体全体を俺にくっつけてきて……ヤバイ、このままだと俺のモッコリ君が……

俺には友達ができた、だから、もうぼっちじゃない、佐々木さんにいじられているばかりじゃだめだ。


佐々木さんの機嫌を損ねて、明日から佐々木さんの取り巻き男子たちから、いじめられるかもしれないけど、佐々木さんとはクラスも違うし、昼休みは3人で部室に行くし、放課後は速攻で帰るから、うん大丈夫、大丈夫、ダイジョウブ……


「佐々木さん、やっぱり近すぎるよ、そんな事やってるから男子に勘違いされるんだよ」

「高木君も勘違いする?」

「俺は・・・・・・」

「高木君が勘違いしてくれるんだったら、他の男子とはちゃんと距離を取るけど、ねえ勘違いしてくれる?」

「えっ?」

「だ・か・ら、かんちがいしてほしいな?」

「 えっ?どういう事?」

「そのまんま、かんちがいしてほしいの」

「かんちがい?」

「そう、高木君が勘違いして、私にせまってきて、そうしたら私はどうすると思う?」

そんな、俺の正面に抱き着くように、思いっきり顔が近い。

やばいよ、やばいよ、やばいよ

「……」

「ねえ、女子にここまで言わせておいて、黙っちゃうの?」

えーっ、なんだこの展開、俺が勘違いするっていう事は?そうしたら佐々木さんは……

「ごめん」

「ふ~ん、でも、そんなにイヤそうじゃやないみたいね、別に今すぐ返事しなくても良いわよ、少しづつ、じっくりその気にさせるから」

そう言って俺の頬を人差し指で突っついた

「まあ、あの従姉のお姉さんも、去年の記念祭に来ていたモデルみたいな子とも何ああるんだろうから、ゆっくりじっくりね♡」

これは……なんだ?……やばいよやばいよ

「高木君、顔が真っ赤、フフフかわいい♡」


今度は掌で俺の頬を撫でてきて、もうダメだモッコリ君が爆発しそうで、胸はドキドキ、頭の中は真白。


佐々木さんが何を言ってるかほとんど頭に入ってこなくって、気づいたら

「今日は、これで帰えろっか」

言われるまま会計をすませて、〇寺駅で

「じゃあ、私ここからバスだから、またね♡」

そう言って別れた。




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