第9話強敵同志

【強敵同志】

――遡ってー-

2人カフェで向かい合ってオーダーしたものを待っている。


紅茶とケーキが置かれ、2人黙ってケーキを、それからゆっくり紅茶を飲んで

「齋藤さん、あなた、何を考えてるの?」

「何って?」

「かっくんから全部聞いたわ、学校の体育が終わってかっくんが顔を洗ってタオルを、ってところからぜーんぶ」

「そう、だったらわかるでしょ、あなた、高木君くんのあの眼鏡と髪型、わかっててあのままにしてるでしょ」

「そうよ、学校ではあのままって、今日みたいな日だけ、あの眼鏡とあの髪型にしてるの。そういうことよ」

「だったら、私がなんで近づいてきたかわかるでしょ」

「やっぱり、そう」

「そうよ」

「あなた、かっくんの事何も知らないでしょ、私は中学から女子高だから共学の事は知らないけど、かっくんから聞いた話だとあなた陽キャのグループの人間でしょ、それでかっくんはぼっち、学校であなたがかっくんと親しくしたらどうなるかわかってるの?

おそらくだけど、陽キャの男子たちが黙っちゃいないわよね、陽キャ連中の勝手な都合でいじられて、最悪かっくんがいじめにあう。

そこまで考えた事ある?

だからお願い、かっくんをそっとしておいてほしいの、かっくんの許嫁として、かっくんを守りたいけど、学校が違うから、だからかっくんをあのままにしてるの。

そこのところわかってほしんだけど」

「そう、そうかもね、わかったわ、でも親しくはするわよ、私達のグループの男子たちに気づかれないようにすれば問題ないでしょ」

「どうかしら、そううまくいくとは思わないけど

「大丈夫、そんなに気になるなら、高木君から学校での様子を聞けばいいじゃない」

「あのね、目立って、いじめやいやがらせがあって、勉強に差支えがあったら、かっくんの夢が……」

「夢?何それ」

「なんでもない」

「教えてくれないの?」

「そうね、まだあなたの事信用してないから」

「そう、わかったわ、そのうち本人から直接聞くから」

「そのうちね、それとかっくんっていうのもやめてほしいの、学校でも思わずそう呼んじゃうと思うから」

「じゃあ、学校以外ならいいんじゃない?」

「そううまく切替ができると思わないけど?」

「まあ見てて」

「もしかっくんがいじられたり、いじめられたり、なにかあったら絶対許さないわよ」

「大丈夫よ、その時は私が責任をもって高木君と一緒にずーっとそばにいてあげるから」

「何それ」

「そういえば、あなた許嫁って言ってるけど、高木君は小学校の時の話って言ってるんだけど?」

「そうよ、小学校のときからずーっと今も許嫁って言ってるわよ」

「ふ~ん、でも高校もまだ2年以上あるし、そのあと大学も、って考えると、いつまでも小学校の時の約束って言っても通らなくなるんじゃない?」

「私たちは他と違うの、だからそれは大丈夫なの」

「そう? でも私、クラス一緒だし、あなたに遠慮しないから」

「いいわよ、そういうことなら私も負けないから」

「そうね、お互いがんばりましょ」

「お互い?……」ちょっと間をおいて、急に真剣な顔で

「齋藤さんにお願いがあるの……

ほんとうは私がかっくんを守りたいんだけど、あなたの言う通り、学校が違うから、近くにいれないから・・・・・

お願い、かっくんの夢をかなえてあげたいの、だからかっくんを守って、本当は頼みたくないんだけど、あなたしか頼めない……」そう言ってふかく頭を下げる。


斎藤さんは栞の態度に一瞬驚いたが、意図を組んで

「わかったわ、大丈夫、高木君は私が責任をもって守ってあげる」

「ありがとう、知ってると思うけど、かっくんって小さいころから空手やってるから暴力的ないじめは、逆に加害者にならないかっていう心配なんだけど、問題は、ぼっちだから、精神的ないじめやいやがらせがあったらと思うとそれも心配で……お願いします」

「大丈夫、ねえ高木君の夢って何なの?」

栞も齋藤さんにお願いした以上は夢について話すしかない


「……かっくんの両親と私の父は医師仲間だったの、それが事故で……それからかっくんも私も医師になろうって……だけどかっくんって不器用で一直線なところがあるから、ぼっちのままなら一生懸命勉強に集中できるんだけど、何かあって勉強が手につかなくなると……だからお願いします」もう1度深々と頭を下げる。

「そう、そういう事、わかった、私も高木君の夢をかなえるため、ちゃんと見守ってあげる」

「ありがとう……でもかっくんは渡さないわよ」

「 ふ~ん、そうはいかないわ、あなたから奪うつもりよ」

「フフフ」「フフフ」


////////////////

―SIDE 齋藤裕子

  ふーっ、今日はいろんなことがあった。


でも夏期講習行って良かったわ、かっこいい高木君が見れた、高木君の事がいろいろわかって、ちょっと驚いた事もあったけど、

幼馴染さんがいて、それもあんな美人とは思わなかった、すっごい強敵。


そうなんだ、ご両親が医師で事故で?

そっか高木君って医師を目指してるんだ。

ふ~んすごいな、ちゃんと目標があって、それにあの幼馴染さん、すっごく高木君の事思ってるのね、 

最初は私に対して敵意丸出しで喧嘩腰だったけど、高木君の事心配でしょうがないのね、本当に好きなんだね……


……幼馴染で大好きな人……か……いいなー


でも負けられない、高木君の夢の話を聞いたらますます幼馴染さんには負けられない……でも……


いいな~、好きな人に対してまっすぐで、正直さ?勇気?すごいな~

あれだけの美人があんなに高木君の事思って、こんな私に頭をさげてお願いしてくるなんて……

うん、私もがんばろ、学校では私が高木君を守ってあげる、そうして私に振り向いてもらうんだ。


……やっぱりあの髪型もあの眼鏡も、そういうことなんだね

うん、そうね、うん。


―SIDE 柴田栞

……ヘヘかっくんの許嫁♡フフフ


ちょっと無理があるかな、でもね5月に会ったとき、言ったじゃない、小学校の時の約束覚えてるって、だからかっくんだけって、かっくんは小さいころの約束だからとか言ってるけど、違うよ 今も有効だよ、あの時ちゃんと言ったからね、気持ちは変わってないって

私のファーストキスかっくんの頬にしっかりあげたんだから♡


 ふーっ、まさか本当に夏期講習に齋藤さんが来るとはね。


かっくんの言う通りの人、3大天使か……すっごい美人であの反則的な胸……強敵。

かっくんと同じクラスって……やばい。

お話ししてみて悪い人ではないことはわかったんだけど……そんなにかっくんがいいの?

顔を見ただけで?


何か引っかかるけど……

でも、獲られるはイヤっ、私はずーっとかっくんだけしか見てなかったのに、かっくんはずーっと一緒なの……離れるなんてイヤだよ、でもあの人にしか頼めない、かっくんを守って、お願い


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