第8話夏休み-夏期講習でばったり
【夏休み-夏期講習でばったり】
明日からは夏期講習、栞は今日泊まって明日2人で一緒に出掛ける。
俺は朝から栞と一緒でわくわくなんだけど、このままだとにやけてしまうので、隣の栞に気づかれないように、うーっと歯を食いしばっていると、
「かっく、どうしたの?」
「えっ?何が?」
「なんかすっごくつらそう」
「そんな事ないよ、眠いな~って」
「そう?」
「うん」
「それならいいけど、具合が悪いなら言ってね」
「うん、大丈夫」
「ほんと?」
「うん」
「一緒に勉強だね♡」
「うん、一緒だね」
「同じ授業に出るのって小学校以来だね」
「そういえば、そうだな、なつかしいな~」
「うん、でもいいかも」
「うん、いいかも」
「フフフ」
いよいよ今日から夏期講習、朝、じいちゃんに見つかったけど、タイミングよく栞が話しかけてくれて、なんとか朝錬を免れた。
「ほらかっくん、こっちの眼鏡かけて」
「うん」そう言ってこの前買った眼鏡を渡された
この眼鏡はなぜか栞が保管していて、2人で出かけるときに渡してくれる。
コンタクトも1度してみたけど、まだ慣れなくてすぐに目がしょぼしょぼしちゃってから、少しづつなれるようにしようねって言って、ちょっと出かけるようなときだけにしている。
「じっとしててね」
そう言って、ワックスを両手にとって、俺の髪をいじり始めた。
「栞、何やってるの?」
「うっうん、ほら夏期講習って教室が広いじゃない、だから、後ろの席でも前が良く見れるように前髪をかき分けてるのよ」
「そっか、いつも悪いね」
「いいの、それくらい、だってかっくんの夢をかなえるためのお手伝いと思えば、これくらいたいしたことないわよ」
「ありがとう」
「どういたしまして」
そう言いながら俺の髪をいろいろいじって、
「さあ、これで準備OK、行きましょうか」
「うん」
服は、栞と一緒に眼鏡を買ったとき、ついでに
「かっくんって夏服も持ってないんじゃないの?」って言われて、同じショップングモールの中にある洋服屋で俺の服も見る事になり、この前みたいに栞が選んでくれた服を着ていく。
XYZ会は新宿にあって、学校の帰りはそのままの恰好だけど、今は夏休み。
俺の高校も栞の高校も私服OK、だけど俺は面倒だから制服(標準服)を買ってずーっとそれを着ている。
栞もなんちゃって制服で紺ブレやカーデガンやスカートを数種類、いろいろ工夫しているらしいけど、あれからバクドで一緒に勉強していて、栞が私服の時があったんだけどほんとびっくりする。
見とれていると真っ赤な顔をした栞に突っつかれて
「はずかしいからそんなにじろじろ見ないで」って
だって、ほんと綺麗なんだもの。
夏休みだけど、塾なんだから、俺は学校に行くときと同じ服のままで、って思っていたら、そういうことになって俺も栞が選んでくれた私服で出かける。
新宿駅で降りて、塾に向かって歩いていると、結構いろいろな人に振り向かれて、落ち着かないんだ。
時々「モデル? 何かの撮影?」って声がするんだけど、栞があまりに綺麗なものだから、皆振り向くんだろうなって、ぼっちの俺が栞と一緒じゃ釣り合わないだろうって思いながら塾の方へ。
塾の入り口でも、結構人が集まってきて、
『塾のポスター撮り?』
『モデル?』
って、うんわかる、うん
そんな中を通って、教室に入ると、結構皆が振り向いてヒソヒソ、まあ栞があれだからこんなもんだろうって思いながら、栞と2人並んで座ってテキストを出していると
「高木君?おっ、おはよう」
ん?何故か齋藤さんがいた。
///////////////////////
斎藤さんが、テキストを持って俺の方に向かって……
通路をはさんで俺の隣に移ってきて、俺に話しかけてきた。
「高木君も同じクラスなんだね」って……ちょっとパニック、せっかく学校の陽キャの1人=斎藤さんから離れる事ができたのに、その対策を夏休みをかけて栞と相談する予定でいたのに、夏季講習でばったり会ってしまった。
あたふたしていると、横から (かっくん、かっくん)って栞が小声で、その声を聞いてなんとか落ち着く
「かっくん、その子は?」
「う、うん、同じクラスの齋藤さん」
「そう、その子がそうなのね」
そう言って、その場から立ち上がり、俺の頭の上から
「はじめまして、かっくんの許嫁の柴田栞と言います。
あなたが齋藤さんね、学校ではかっくんがお世話になってます」
「えっエエエッ?許嫁?高木君、それってどういう事?」
斎藤さんはびっくりした顔で前のめりになって俺に聞いてきたので、学校が始まった時、
『こんなぼっちのくせに許嫁がいる、なまいき!』とか言っていじられるかもしれないと思った俺は、あわてて
「いや、栞は幼馴染で小学生の時、そういう約束したってだけで……」俺を遮って
「かっくん、違うでしょ、小学校の時から今も!ずーっと許嫁でしょ」栞がちょっと怒った顔
「そっかー、小学校の時ね~」
納得したかのように、1人頷きながらニコニコして、俺達を見ると、あいかわらずキッとした顔で栞が、
「そうなの、小学校の時からずーっと一緒で、ついこの間も2人で愛を確かめ合って、将来を誓い合ったの、だから今も継続中、ラブラブなの」
「愛を確かめ合った~?」
それを聞いて驚いた顔をしている斎藤さんに向かって、あわてて俺は
「いやいや栞、その言い方は誤解を招くよ、覚えているか確認しただけだよ」
「えっ、だって『覚えているよ、だからあの時のままだよ』って確かめ合ったじゃない」
「まあ、そうだけど」
それを聞いた齋藤さんは、なぜかそれに張り合って
「そういう事、でも小学校の時って、よく、そういう約束するのよね、『お嫁さんになって』、とか『お嫁さんにしてねっ』とか、うんうん、よくあるよね~」
なんでそんな小学生の時の話を2人で言い争っているんだ、周りが変な目でみてるよ、恥ずかしい。
「なあ、もう少しで講習始まるよ」
「そうね、じゃあこの続きはお昼にでも」と言って齋藤さんが前を向いた。
って、まだこの続きするのかよ~
横に座っている齋藤さんが時々俺の方を見てニッコリするのが気になるけど、でも夏期講習、初日が肝心、ちゃんと講義を聞く。
トイレ休憩は、言い争いはなかったものの2人が男子トイレの前にべったり張り付いて俺が出てくるのを待っているんだけど、2人ともトイレは大丈夫か?
しょうがないから、次のトイレ休憩の時、女子トイレの前まで行って、2人にトイレに行くように、ただ、男子が女子トイレの前に立っているのも……すっごく目立つ、ほとんどの女子が俺を見てはヒソヒソ、中には真っ赤な顔をして俺を見つめる女子もいたりして、すっごく恥ずかしかった。
//////////////////////////
なんとか午前中の講義が終わって、お昼……さっそく齋藤さんが
「高木君、お昼どうする?そこの幼馴染さんも一緒?」
すかさず栞が
「かっくんは私と一緒にお昼に行きますから、齋藤さんは私達のことは気にしないで1人好きにして良いですよ」
「ううん、私は高木君と昼食べるけど、しょうがないから幼馴染さんも一緒でいいわよ」
「齋藤さん?私の話聞いてなかったの?」
「幼馴染さんも、講義が始まる前の私の話を聞いてなかったのかしら? お話の続きはお昼にね って言ったけど?」
「あの~、とりあえずお昼行きませんか?」
「かっくん!」
「そうね、じゃあ幼馴染さんも一緒にどう?」
「もう」そう言って栞が俺の足を蹴った
思わず「ごめん」
栞はいつも以上に俺の腕にぴったりくっついてべったり、その反対側には齋藤さん……齋藤さん、近いよ。
俺は齋藤さんの事、ほとんど知らないし、どっちかというと陽キャ軍団の1人でぼっちの俺をいじって遊ぶんじゃないかって恐怖が……おもわず栞の手を強く握ってしまった。
栞を見ると顔を赤くしながらもニッコリ俺に微笑んでくれ、ちょっと安心
こんな状況だから、もう……
栞と一緒に行こうと言っていたカフェをやめてマクドに、それぞれセットを頼んで席に
ここでもひと悶着。
「齋藤さん!どうしてかっくんの横に座ろうとするの?!」
「えっ?いいじゃない、高木君とお話したかったから、だって朝、そう言ったでしょ?」
「それは、別に隣にならなくてもいいんじゃない?」
「だって、マクドってザワザワしてお話するのに、近くないと聞き取れないじゃない」
まずい、ここでも揉め始めたので、
「あの~、あっちのカウンターにしようよ」
そう言って、俺はそのまま3席空いているカウンタ―に。
2人揉めながら俺の後ろについてきて、なんとかカウンター席に、俺が真ん中に座って両側に栞と齋藤さん、これで直接揉めることはないだろう
「いただきます」そう言って食べ始めると、栞も、反対側を見ると齋藤さんも食べ始めたので、一安心、マクドだからすぐに食べ終わってポテトをつまみながら、いつもは栞とたわいのない話をするんだけど、今日はなぜか齋藤さんに絡まれて、隣に……俺はポテトを口に入れれるだけ詰め込んで一機に食べ終わると
「かっくんそんなに慌てないでゆっくり食べなよ」
「うん、でも」
「そうよ、高木君、ゆっくり食べながらお話しましょ」
「いや、でも午後の講義があるから……」
「じゃあ教室でお話しましょ、あっ、幼馴染さんはゆっくり食べててもいいのよ、私たち2人で先に教室に戻っているから」
斎藤さんを見ると、ポテトもほとんど食べ終わっているみたいで、それを聞いて、見て、栞が慌ててポテトを食べ始め、なんとか齋藤さんと同時に食べ終わったので、3人一緒に教室に戻った。
栞が苦しそうだったので
「栞、大丈夫?」
「うん、ちょっと急いで食べただけ、平気」
「そっか、いつも悪いね」
「いいの、いつのもことだから」
いつもの事?よくわからないけど
「ねえ、高木君っていつもかっくんって呼ばれてるの?」
「うん、栞は小さいころから、俺の事そう呼んでるんだ」
「ふ~ん、そうなんだ、ねえ、かっくん?」
えーっ? なんだ?どうしたんだ?齋藤さん!!
「あの~、齋藤さん」
「何?どうかしたの?かっくん」
「いやいや、かっくんって」
「うん、私も今日からかっくんって呼ぶことにしたの、だからかっくんも私の事、裕子って呼んでね」
そのやりとりを見て、栞が
「齋藤さん、今日の講義が終わってから、2人だけでお話がしたいんですけど」
「ええいいわよ、私もあなたとお話したかったの」
「じゃあ、そういう事だから、かっくんは先に帰ってて」
「ああ、じゃあ駅前のマクドで待ってるよ」
「うん」
初日からどたばたと大変だったけど、なんとか講義が終わって、2人は「じゃあマクドでね」
「かっくん、明日もね♡」と言って、近くのカフェに入って行った。
俺はそのまま家に帰るため電車に乗って、駅前のマクドで待つことに、一応今日の講義の復讐と明日の講義の範囲に目をとおしていると、栞がマクドに入ってきた
「栞、ごめんね、俺のために許嫁ってうそまでついてくれて、いっつも栞い助けられてばかりだね」
「ううん、いいの、かっくんのためだもの。
ねえ、このまま2人は本当の許嫁ってことにしない?そうすれば今日の齋藤さんのような事も減ると思うの」
「いや~でも、栞に迷惑がかかるし、本当に好きな人ができたとき困るのは栞だろ」
「いいのよ、そんな事、それにあの時言ったでしょ、あの時の約束のままって、かっくん以外に彼氏なんか作るわけないって、だから2人は許嫁!いいわね!」
「ほんとにいつもありがとう、でもなんで俺にかまってくるんだろう、そんなにぼっちをいじりたいのかな~」
「どうなんだろうね、でも今日から2人は正式に許嫁なんだから、明日からは今日みたいにはならないと思うわ」
「そっか」
「うん」
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