第10話栞の決心
【栞の決心】
あれから毎日齋藤さんが私たちに絡んでくる。
かっくんは自分がぼっちで、齋藤さんが陽キャグループだから、きっとぼっちをからかって楽しんでいるだろう、みたいに思っているみたい、自己評価低すぎ。
私としてはこのままの方が良いんだけど、かっくんがつらいんじゃないかって思うと……
かっくんのためを思うと、私が齋藤さんとお友達になって、かっくんをからかったりしないから大丈夫っていうところを示さないといけないんだろうな、そうじゃないと夏期講習の期間中だけじゃなくて 夏休み明け、学校が始まってから、学校生活はずーっと怯えて過ごさなきゃいけなくなる、気が気じゃない、本当はかっくんと齋藤さんには仲良くなってほしくない……でも……
講習も3日目を過ぎると、教室の雰囲気にも時間配分にも慣れてきて、講義に集中できるようになっていく、ただ1つを除いて。
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今日も朝から栞と齋藤さんが言い争い?をしていた。
今日のお昼もマクドかこれで3日連続マクド?そろそろ別のところで食べてみたいんだけど……そう思っていたら、栞が
「今日は3人でお昼に行く?」
「??」齋藤さんが驚いた顔で栞を見ている
「ああ」
「じゃあ、この前かっくんと行こうって言ってたところに行こうか」
「うん」
「ハ、はい」
斎藤さんが拍子抜けした感じで、栞と一緒に、俺も後について行くと、夏季講習の初日に言っていた
イタリアンカフェに。
席に案内され、メニューを見ながら
「かっくんは何食べる?私、かっくんと違うもの頼むから1口ずつ交換ね!」
「うん」
「あの・・・私もいい?」
「しょうがないわね、かっくん、それでいい?」
「ああ」
3人それぞれ違うものを頼む、
皆違うものを1口ずつ食べることを前提に、トマト系パスタ、クリーム系フィットチーネ、ラザニア、さすがJK、俺には考え付かなかったオーダー、だってぜーんぶ味が違うんだ。
栞が齋藤さんと俺に指示を出しながら、うまく1口ずつ食べて気に入ったらもう1口おかわり。
斎藤さんがいるので、いつものようにあ~んはさすがにしないけど、あれちょっと恥ずかしいんだ。
それがうれしいんだけど。
食べながら栞が俺に向かって
「かっくん、齋藤さんは大丈夫だよ、私達お友達になったから、私の大切なかっくんをからかったり、いじくったりしないからね」
「そうなの?」
齋藤さんが、俺達の会話を聞いて、何かをさっしたようで、
「そうよ、私、栞ちゃんとお友達になったから、だから高木君には、そんなことしないから、ただ高木君ともお友達になりたいだけだから、だから安心して」
「そう?」
「うん、だから、栞ちゃんも、高木君が学校でぼっちになっていても、ちゃんと私が見てあげる」
「そこまではいいわよ」
「えっ、だって、クラスの人達が何かしてくるかもしれないじゃない」
「いや、齋藤さんが必要以上にかっくんに構わないかぎりそれはないと思うわ」
「でも、もし私みたいに、高木君の眼鏡と髪の毛を……」
急に栞があわてて齋藤さんの話を遮り
「齋藤さん?!」
「あっ、ごめんなさい」
「ううん、いいの」
途中から2人の間で何を話しているのわからない内容だったけど、
まあ、俺にわからないレベルの話をするくらいの友達関係になったんだろうなー、
そう思うと齋藤さんにそう言われてちょっと安心した。
「高木君? もし学校で何か困った事があったら遠慮しないで私に話しかけてね、相談に乗るから」
「うん、ありがとう」
よかったよ、夏季講習の初日からずーっと栞と言い争っていたけど、これで2人の言い争いもなくなる、落ち着いて勉強できる。
「かっくん、よかったね」
「うん」
栞が笑ってるけど、微妙な顔をしている、何かあるのだろうか、ずーっと一緒に過ごしてきた大好きな栞。
顔の表情を見ればすぐにわかる、帰ってから聞いてみよう。
午後からは3人の関係も何事もなく、無事講義が終わって帰るとき、
「高木君の家ってどの駅なの?」
「豊鳥院」
「ちょっと前まで遊園地があった?」
「そう」
「今から何線で帰るの?」
「地下鉄大江戸温線で1本」
「そっか、私、萩久保だから別だね、あっ、でも学校の帰りは途中まで一緒だよね」
「まあ、塾のない日はそうだけど……」
「どうしたの?」
栞が会話を遮るように
「はーい、帰るわよ、齋藤さん、また明日ね」
「……また明日」
「うん、また明日」
休み、夏季講習が始まってからから、ずーっと帰りは栞が俺の部屋で復讐と予習をしている。
今日はおばさんが夜勤だから、となりの部屋に泊まる、完全に栞の部屋。
いつもよりゆっくり、途中晩御飯の準備をするので、そこでいったん休憩して、そのまま3人で晩御飯を食べ、また俺の部屋に、すぐに勉強を始めるわけでもなくだらだらと過ごす。
「なあ、栞、今日の齋藤さんの言ってた事なんだけど」
「なあに?」
「栞と友達になったの?」
「そうよ」
「でも、栞と齋藤さんの間で何かあった?」
「どうして?」
「齋藤さんが俺に向かって話してた時、栞が微妙な顔してたから」
「そう? そんなことないけど?」
「あのさー、俺と栞の仲だろ、栞が何かあった時って俺にはわかるんだぞ」
「そっそうなの?」
「ああ、何かあったの?」
「ううん、別に、ただ、齋藤さんがかっくんの事いじったり、からかったりしないっていうのは本当だけど、学校でかっくんと齋藤さんが話してしたら、周りの人たちはどう思うかなって考えるとちょっと心配になっただけよ」
「そっか、そうだよな、齋藤さんは3大天使、陽キャグループの中心にいるから、俺みたいなぼっちと話してたら周りは変に思うよな」
「そっ、そうなのよ、心配になったのよ、だから、学校でもあまり話しかけないほうが良いかなって」
「うん、わかった」
「ほっ」
「ん?どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
そんな事を話しながら、少しだけ勉強して、お風呂に入ってから、栞はまた俺の部屋に来る、風呂上がりの栞は・・・なんかこう、うっすらピンク色で……そんなぴったりくっつくなよ……やばいよ。
寝る時間ぎりぎりまでたわいもない話をして、
「また明日も講習だから、そろそろ寝る?」
「そうね、じゃあおやすみ」そう言って栞の部屋に。
今日は栞と齋藤さんが友達になって、学校に行っても齋藤さんは俺に何もしないってことがわかってホッとした。
今日は気持ち良いまま眠れそう。
―SIDE栞
あ~、本当は齋藤さんに頼みたくなかった~
私の知らないところでかっくんとの距離が……
でも、私は学校が違うから、学校の中でかっくんを守ってくれる人がいないのは……かっくんのためにはしょうがない。
あ~、もう~、鈍感勝典!
あれだけ許嫁って言ってるのに!
気づけよ!
もう……これだけ好き好きアピールしてるのに、なんで?
学校ではぼっちだし、他に好きな人がいるようには思えないし……
私じゃダメなのかな~
ううん絶対私に振り向かせるんだ。
見てなさい、これからはもっと過激に……
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