第37話妄想する萩原君は覚悟を決める

【妄想しまくる萩原君は覚悟を決める】

 そうか、そこまで見られてたんだ。


高木君の幼馴染の柴田さんは裕子にも会って話してたのか……

あそこまで言われるとは思わなかった、でも言ってる事がどれも正論で、僕1人がただのヘタレで、それがすべての原因で、裕子の幸せを願ってなんて……カッコいい事言ってるけど、そう、その通りただの逃げなんだ。


本当になんとも思っていないなら、幸せを願っているなら、幼馴染として裕子と高木君の応援ができるはず、なのにただこっそり見ているだけ、いや違う、本心はうまくいってほしくない、そう思っているよ。


また昔みたいに2人で一緒に登下校したり、何もなければ裕子の部屋に行ったり、裕子が僕の部屋に来たり、休みの日は2人でどこかに行ったりできたら、そんな事を思っているんだ。

そうだよ僕がしっかりしないからいけないんだ、ケジメもつけずただ逃げているだけ。


本当に裕子の幸せを願っているなら、しっかりケジメをつけて2人とも本当に前を向かなきゃダメなんだ、裕子も僕も。

ヘタレか……そうだよな……


口に出ださなきゃダメだよな。

確かに言葉がすべてじゃないけれど、でも、

『雰囲気でわかるだろ?』 『はっきりは言ってないけど、今までの付き合いで、お互いの気持ちがわかるだろ?』

『言葉に出さなくたって、わかるはずだ!わからない方がおかしい!』・・・なんて、中二病こじらせラノベじゃないんだから。

中途半端な言葉や行動だけでちゃんとした言葉に出さないから、思わせぶり、勘違い、行き違があるくらいなんだし、ましてや告白、プロポーズなんてなおさら言葉が大事だろ。

言葉を持っていないから動物は求愛ダンスとか、直接相手に意思を伝える行動があるんだ。ましてや人間、最大の表現=言葉で伝えなきゃ。

人類600万年のうち半分は言葉がなかった、だからそもそも言葉は全てではない、とかラノベで言っているのもあったけど、それじゃあ主人公達は何原人(げんじん)?って話だよな。

それともエスパー?

なわけないよな。


あっ、まずい、いつもの癖が、こんな事ばかり考えているからダメなんだ。


ちゃんと言葉にして伝えよう……もし裕子が高木君の事が本当に好きだとしても……


 2人が正式につきあってイチャイチャしているのを見て、1人ショックを受け自分の部屋で泣き崩れて学校休んで……優しくてかわいい義妹……なんていない……突然目の前に超絶美人が現れて……ざまあで今更もう遅い……。何非現実的な事を妄想してるんだ?

 高木君が悪いんだ、本当はカッコイイのに、あんな恰好だから、頭が薄くなったサラリーマンのおじんさんがかけているような銀縁眼鏡に、前が全然見えないような長い前髪。中途半端にダボダボで膝が出て最初からO脚?みたいなパンツに中途半端にダボついて肘がテカってるよくわからないブレザーって、どうしてそんな恰好で学校来てるんだよ、そうだ高木君がラノベによく出てくる主人公のまんまだから……

えっ?

 あー妄想が……こんな事だからいけないんだ、別に現実逃避してラノベに走ったわけじゃないけど、そういう経験がまったくないからどうしても非現実的…ラノベ……そんな妄想してしまって……


違うよ、僕は裕子が好きなのに、自分から逃げておきながら高木君のせいにして……最低だよな~……


あ~柴田さんって強いな、見習いたいな、僕もちゃんとしなきゃいけないよな……

うん、ちゃんと言おう。



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(フフフ)


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月曜日、お昼休みにしんちゃんが私の教室に来て

「裕子」

「しんちゃん、どうしたの?」

「久しぶりに一緒に帰らないか」

「うん」

何があるんだろう?そう思いながら最後の授業が終わり帰りのHRが終わって帰りの準備をしていたら、しんちゃんが教室の入り口に立って、私が出てくるのを待っていた。

「どうしたの?」

「ああ」

いつもより言葉が少ないけれど、1年の春までは一緒に帰っていたから、いつもの日常、同じ行動。

一緒に電車に乗って、私をかばうように立って、同じ駅で降りて、同じ道を歩く。

「ねえ、どうしたの?」

「これから裕子の部屋に行っていい?」

「うん、いいよ」

そう、あの時しんちゃんが友達と話していたのを聞くまでは、よく2人お互いの部屋を行き来していた。

ただ、あの時からしんちゃんが私の部屋に来ることがなかったから、そう言う意味では久しぶり。

変わらないな~、ちょっと前まではよくこの部屋でしんちゃんと一緒に何をするわけでもなくただダラダラ、それが心地良かった。


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