第38話よかった
【よかった】
2人で部屋に入って、鞄を置いて
「何か飲み物持ってくるね」
「うん」
冷蔵庫の麦茶とグラスを持って私の部屋に戻ると、昔のように、しんちゃんがベッドを背もたれにして床に座って私を待っている。
そうなんだ、いつものこんな日常がいつの間にかギクシャクしちゃって、お互い部屋にもこなくなって、
「どうしたの?」
「柴田さんって裕子とどれくらい親しいの?」
柴田さん?栞ちゃんの事?どうして聞くのかな~
「うん、高木君の幼馴染でしょ、夏季講習で一緒だったし、夏に一緒にプールに行ったり、ホテルでお泊りしたりするくらいの仲だよ」
「そっか」
「何?」
「この前の土曜、高木君と柴田さんに会ったんだ」
「しんちゃんが?」
「まあ、会ったって言うか呼び出された感じだけど」
「そっか」私の時とおんなじだ
「すごい勢いで、攻められた……なにも言い返せなかった」
「うん」フフフそっか、
「あのさ、6月ころだっけ、一緒に帰ろうって言って、裕子が先生に用事があるからちょっと待っててって言われて教室で待ってた時、周りの連中から俺と裕子の仲を聞かれたんだけど…….俺その時、裕子はただの幼馴染で好きでも何でもないって言ったんだよ…….裕子はそれ聞いてたんだよな…….」
「……うん……」
「そうだよな……」
沈黙が続いて
「柴田さんに、その事を言われた、ヘタレって」
「栞ちゃんらしいね」
「そうなんだ」
「うん、すっごくしっかりしてるっていうか、ぶれないっていうか、特に高木君の事に関しては
真直ぐで、腹黒で、でも見ていてすっごく気持ち良いの、あれだけ真直ぐに高木君を見れるってうらやましいと思う」
「ああ、確かに見ていても高木君のことが最優先って感じだった」
……
「ごめん」
「何に?」
「周りの連中からあんな風に言われて、裕子の事を何でもないって…….」
「……うん」
「本当は裕子の事がずーっと好きだったんだ、高校も先生には無理って言われたけど、どうしても同じ高校に行きたかったから、死に物狂いで勉強して、受かった時はうれしかった、また裕子と一緒だって、朝も帰りもずーっと一緒だって、それなのに、あんな事言って、裕子は高木君の事が気になるって言ったから、俺はやっぱりただの幼馴染なんだって、だから裕子が幸せになるならって……」
「そう……」
「今更こんな事言ってももう遅いかもしれないけど、裕子が好きだ、裕子と恋人になりたかった……」
「あのね、私も栞ちゃんにヘタレって言われちゃったんだ……しんちゃんが頑張って私と同じ高校に来てくれて……私に告白してくれるって持っていたんだけど、あの時廊下でしんちゃんが友達に言ってるの聞いて……」
「裕子、ゴメン 全部俺が悪いんだ、俺にもっと勇気があれば」
「ううん、私がしんちゃんにちゃんと確かめなかったから、聞けばよかったのにね」
しんちゃんが私を抱きしめて、「ごめん」
「ううん」
しばらくして、ゆっくり私から離れて
「裕子、僕と付き合ってほしい、恋人に……」
「うん」
2人とも半泣き状態で目も赤いけれど、口元が笑っていて、うれしくて
「しんちゃんがやっと告白してくれた」
「うん、やっと告白できた、ごめんね」
「しょうがないな~許してあげる」
「うん」2人思いっきり大声で泣いてしまった。
////////////////////////////
次の日、いつも通り学校に行き、教室に入ると、齋藤さんが俺を見つけニッコリして俺の机のところまできた
「高木君、お昼っていつもどこにいるの?」
「部室」
「どこの部室?」
「読書部(同好会)」
「あ~、あそこか~、今日も?」
「うん」
「そっか、あとで話があるから行っても良い?」
「いいよ」
なんだろう? 栞と一緒にいの頭公園で話してから2週間以上経ってるし、萩原君の事?あの時の栞、結構きつかったからな~
そんな事を考えながらお昼に部室で弁当を食べようと用意していると、斉藤さんと萩原君が入ってきた。
「待った?」
「やあ」
「2人で、どうしたの?」
「あのね、私たち付き合うことになったの」
「そうか~、よかったね、おめでとう」さすが栞
「うん、それで高木君に謝りに来たの」
「ん?」
「私、栞ちゃんや忍さんと一緒に高木君とデートしたり一緒にプールに行ったり色々……その……」
「うん?栞と友達になって皆と一緒に遊んだことで何か謝るような事した?」
「……そっか、うん、なんでもない、あのね栞ちゃんにお礼と詫びしたいって伝えておいてくれる?」
「ああ、いいよ」
「ありあがと」
―SIDE裕子
そっか、高木君、ヘタレで超鈍感の自己評価低すぎ、って栞ちゃんが言ってたものね、私がアプローチしてたの気づかなかったんだ。
栞ちゃんも大変ね~。
でも栞ちゃんのおかげで、しんちゃんと付き合えるようになったんだから本当に感謝しなきゃ、それと高木君にせまって2人の間に割り込もうとした事、謝らなきゃね、本当にありがとう
一応忍さんにも言っておこうかな、でもそうしたらまた栞ちゃんと忍さんが……
―SIDE萩原
高木君も本当にヘタレなんだね、誰が見ても柴田さんは高木君が大好きであれだけアプローチしているのに、幼馴染には幸せになってほしいんだとか言って……まあ僕もそうだったけど、
誰が見てもベストカップルじゃないか、ハハハ、
あの従姉の大人美人のお姉さんも高木君に気があるようだし、これから色々大変だろうけど、がんばってくれ、応援するよ、本当にありがとう。
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それから、齋藤さん達は栞と会って、2人が付き合うことになった事を報告して、お礼を言ってた。
それと何故か謝っていたけど、時々4人で一緒に遊ぼうって約束もしていた。
2人はそのまま読書同好会に入部してくれたので、俺が入学する前、部から同好会へ格下げされ、このままだと春からアニメ同好会に吸収されることになっていたが、その話もなくなり4月から正式に読書部として復活する。
アニメ同好会は俺達を吸収して部に昇格する事を狙っていたようなので申し訳ないけれど、ほとんど空き室状態のこの部室がずーっと使える事に感謝。
2人が付き合う事になってから、斎藤さんの周りがうるさくて萩原君に色々言ってくる連中もいるらしく、いちいち対応するのも面倒だし、そういう連中は何を言っても無駄だからと言って、2人もお昼は部室に来るようになって、毎日3人で食べるようになった。
やっぱり、あの陽キャ?連中が斎藤さんや萩原君に絡んでいるのを見て、栞が俺を心配してくれるのがよく分かった、栞に感謝。
まともな友達がいなかった俺に(学校外で齋藤さんが時々一緒に遊んでくれたけど)、いつの間にか同じ部の友達が2人できた。
なんだかんだ言って栞のおかげ
幼馴染の2人が両想いで、良かった。
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