第42話忍が校門に立っていた
【忍が校門に立っていた】
忍はさっそく講義が2限で終わる日で勝典の塾のない日に、東校の校門の前に。
「この電車に乗るのも久しぶり、この前かっくんの文化祭(記念祭)に来た時は日曜だったから、平日にこの電車に乗るのなんて高校以来よね~、かっくんと歳が近かったら一緒に通学できなのにな~、でもこれから毎週くるからいいっか」
校門の前に年上のモデル並みの綺麗な女性が誰かを待っているかのように立っている。
そんな忍を見て生徒がざわざわ
「何?モデル?OG?」
「うちのOGにモデルとかいたか?」
「なにがあるんだ?」
その中に、陽キャの自信満々な奴らが、校門で忍を見て
『あれ?去年の記念祭に来てた子じゃん、1人でいるってことは、へへへ(ニヤリ)』
「ねえ、彼女?何しているの?」
「うん、ここの生徒と待ち合わせよ」
「去年、記念祭に来てたよね」
「そうよ、なんで知ってるの?」
「いや~お姉さん美人だから、忘れるわけないよ、で、待ち合わせって誰?」
「君達の知らない人」
「いや~、俺達これでもこの学校じゃあ有名だし、そういう連中はほとんど顔見知りだから 、教えてくれればわかると思うんだけど?言ってくれれば呼んでくるけど?どうせならそいつと一緒に遊ばない?」
(あ~、こいつら、この学校でカースト作ってトップにのさばって、イケメン(自称)仲間作ってオラオラやってるんだわ、ふふふ、でも無理、だってかっくん、この学校じゃあモブのボッチだもの、それにあの前髪と眼鏡にあの服装、絶対こいつらと友達じゃないわよね)
「ううん、きっとわからないと思うわ」
「いや~、そんな事はないよ、ほんと俺達って顔広いから」
「そう?じゃあ斎藤さんって女子知ってる?」
「斎藤……裕子?……ああ~彼女、知ってるよ、3大天使って言われていたのに、モブな彼氏を作っちゃったかわいそうな子ね」
「そう、じゃあ斎藤さん呼んでもらえるかしら?できれば、その彼氏も一緒にお願いしていい?」
「……ああ」
彼氏も一緒と言ったからか、ちょっと気まずそうな顔をして、校舎に戻ってしばらくすると斎藤さんとその彼氏が、あれ?後ろにかっくんがいる
あの自称イケメン軍団がニヤケながら一緒にやってきたけど、そんなの無視。
「かっく~ん」
「忍?」
「あっ、忍さん」
斎藤さんに向かってにっこり
「久しぶりね」
「はい」
「斎藤さん、おめでとう、幼馴染君とうまくいったんだって?そっちがその彼氏?」
「はい、ありがとうございます」
「はじめまして、萩原と言います。あの~高木君の従姉のお姉さんですよね」
「あら、わかる?そう、かっくんの従姉で恋人の高木忍です、よろしくね♡」
忍は、陽キャたちに向かって
「あっ、君達ありがとう、おかげで助かったわ」
「はあ」
「待っている人ってこの人、私の彼氏♡」
そう言って俺の腕に抱き着く
「はあ? 誰そいつ? 知らないな~」
別の陽キャが
「あー、そいつ、2年になって斎藤さん達と一緒にいるようになった陰キャだよ、斎藤さんの陰キャ彼氏の友達?」
「あーそうなんだ、まあいっか、ねえ、その彼氏も来たことだから一緒に遊ばない?」
「ごめんなさいね、これから彼とデートなの♡」
「いやいや、それ嘘だよね、そんな陰キャがお姉さんの彼氏?なわけないよね」
(うわ~なにこいつ、彼氏って言ってんだから彼氏なの、なんでお前が“なわけない”とか決めるんだよ!)
忍が斎藤さんに向かって小声で
「斎藤さん、この人たち、何なの?なんか妙になれなれしいって言うか、自分で『俺達有名人』とか言っちゃって……ちょっとシブすぎるんだけど」
「はあ、すみません 」
斎藤さんが忍に謝って、イケメン軍団にも、『本当の事だ』と言いながら頭を下げている。
そんな斎藤さんに忍がコソコソ
「それで『ちょっといい?』はい」
2人で校門の端の方に行って何か話をしている
「最近、3大天使の1人がかっくんに絡んでいるでしょ、それと1年の妖精?だっけ?その子ってまだ学校にいるかな~?」
「ああ、その事ですね、彼らに聞いたらわかるかも」
そう言って斎藤さんが、さっきの陽キャに向かって
「ねえ、五条君、須藤君、佐々木さんってまだ学校にいるかな? それと1年の新木さんも」
「彩?と恵?」
「うん」
「彩は、たしか掃除当番とかで教室にいると思うけど、恵ちゃんは学年が違うから……」
「そう、ありがとう」
「忍さん、(佐々木)彩ちゃんはまだ掃除当番で教室にいるみたいです、もう1人は学年が違うんでわからないそうです」
「そう、ねえ、斎藤さんと彼氏君、その彩ちゃん?がくるまで、ちょっと付き合ってくれる?」
「はい」
「いいですよ」
3人のやり取りを見ながら、忍に向かって
「忍、どうしたの?」
「かっくん♡」
そう言って忍が、校門の前で皆が見ているのにもかかわらず俺に抱きついてくる
「皆が見ているから」そう言って引き離そうとするがなかなか離れない、それを見た
陽キャがかなり不機嫌で不満気な顔をしている、斎藤さんはその様子を見て
「うわ~、そこまでやっちゃって、栞ちゃん、知ってるのかな~」
萩原君が斎藤さんに向かって
「本当にあの従姉のお姉さんは高木君の事が好きなんだ」
「うん、栞ちゃんに負けないくらい好きみたい」
斎藤さんが忍に向かって
『あの~』
忍が
「その2人を見てみたくなって来ちゃたのよ」
「そうなんですか、でも、そんな事でわざわざ来たんですか?」
「うん、中高ってこの隣駅に通ってたの、なんか懐かしくなってね、かっくんがここに通うようになった時に卒業しちゃたから、本当は一緒に通学したかったんだけどね、だから懐かしくなって来てみたの」
「そうなんですか」
「そう、ついでに、その2人も見てみたいしね」
「はあ」
抱きつくのはやめたものの、いつのまにか手が恋人つなぎに。
いっこうに帰らない陽キャが変な目で俺達を見ているので、忍は
「あのね、君達、本当にありがとう、何度も言うけど、本当に彼が私の彼氏なの、だからわかるでしょ」
そんな事をしていると、後ろから男子2人と女子1人がやってきた、その女子がこの塊のなかから勝典を見つけ
「あれ?高木君?そこで何してるの?」
それを見た斎藤さんが忍に向かって
「忍さん、彼女が佐々木彩ちゃんです」
「そう、ふ~ん」
それを聞いた忍が佐々木さんに向かって
「あら、どちら?」
佐々木さんが口元をキリっと上げ、ちょっと目つきが変わった。そして忍に向かって
「私? 高木君とは、とーっても親しい佐々木彩です」
「あら、そうお友達なの、はじめまして、かっくんの彼女の忍です。うちのかっくんがお世話になってます」
「はあ?そうですか?」小声で『本当かな~』
「これから斎藤さん達とダブルデートなの、お騒がせしてごめんなさいね」
俺が「えっ?」と言うや否や、忍は俺を見て、ちょっと怖い顔で「ねっ?」
俺は、その顔をみたら、もう何も言えず頷く
(俺はよく知っている、忍が真剣に何かをしようとしている時の顔だ)
忍が陽キャ達に向かって
「ねえ君達、佐々木さんたちが一緒に遊びたそうにしてるから、遊んであげたら?♡」
そう言って、斎藤さんに目くばせして俺の手を引っ張って駅に向かって歩き出す
齋藤さんと萩原君もあわてて俺達の後についてきた。
「斎藤さん、萩原君ありがとう、それで今日は4人でダブルデートしない?」
「「はい」」
忍が斎藤さん達に向かって
「これから〇〇寺駅に行こっか? 今日のお礼におごってあげる」
忍も中高6年間通っていた女子高もこの近くで、通学路の乗り換えが〇〇寺駅で、帰りによく皆で立ち寄って遊んだ事があるから、俺よりも詳しい(この前のデートの時も)。
「それじゃあ」
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校門では俺達4人が駅に向かって歩いていくのを見ながら、佐々木さんが
「何あれ、あのお姉さん、高木君の彼女?うっそ」
それを聞いた陽キャ
「ああ、なわけないよな、裕子の友達ならわかるけど、あのモブ陰キャが彼氏?なんかあるんじゃないか?」別の陽キャが
「確か、去年の記念祭に来てた時は別のモデルみたいな男と一緒だったよ、それがあんなモブ陰キャが彼氏なんて、絶対おかしい」
「だよな、ひょっとしてあの陰キャが実は大金持ちとか、親が有名人とか」
「だよね、じゃなきゃありえないよな」
「ああ」
自分達の都合の良いように勝手な妄想で話が盛り上がっている
勝典の素顔を知らない陽キャ連中はそう言っているが、素顔を知っている佐々木彩は、あの美人お姉さんが彼女と言われてもおかしいとは思わない。陽キャ連中が言っているように、去年の記念祭で勝典と一緒にいたのを思い出したから。
(そっかー、去年の記念祭に来ていた時の美人のおねえさんか……)
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