第41話妖精現れる

【妖精現れる】


「あの、昨日はありがとうございました」

「いえ、あっ、あれから大丈夫でしたか」

「はい、先輩がクッションになってくれたおかげでどこも痛くないし、ケガもなかったです」

「そうですか、それはよかったです」

「あの~、名前聞いてもよいですか?」

「名前ですか?」

「はい」

怖い、一瞬そう思って、一緒にいた斎藤さんと萩原君を見ると、萩原君はにっこり笑っているし、斎藤さんは真剣な顔?をして俺を見ているから、どうしようか悩んでいたら

「私、1年3組の新木恵(あらきめぐみ)です」

「はあ、俺……僕は、2年2組の高木勝典です」

「あの~、少しお話、いいですか?」

「いや、これから3人で部室に行きますので」

「そうですか、あの、どこの部室ですか?」

「読書部です」

「そうですか、それじゃあ明日も来ます、その時お話ししてください」

そう言って、頭を下げて去って行った。

「はあ~」

また明日もと言われ、困ってしまって、思わず2人を見ると、萩原君は相変わらずニコニコ、斎藤さんは真剣な顔をして萩原君に向かって何か言っている。

部室でお昼を食べながら

「なんで『明日も』とか言ってくるんだろう」」俺がポロっと言うと、

 「新木恵ちゃんだっけ?」と斎藤さんが名前を確認するように言う、萩原君が

「あー、新入生で妖精とか言われてる子だよ」

「妖精?」思わず口に出すと

「ああ、2年の天使に対抗して、妖精とか言ってるんだろうね」

「ふ~ん、そうなんだ、でもなんでそんな事しんちゃんが知ってるのよ!?」

「いや、男子なら皆知ってるよ」

「皆?」

「うん、3年の女神、2年の天使、そして1年の妖精」

「えっ?そんな事言われてるの?」

「そうだよ、男子の間では有名な話だよ、裕子だって天使の1人じゃない」

「そうだけど……」

「まあ僕は、ただの噂レベルで知ってるだけだから、天使でなくてもいいんだ、裕子さえいてくれればそれだけで『もう、しんちゃんったら♡』」なんか2人で盛り上がってるけど……

「なあ、高木君、この事、柴田さんは知ってる?」

「うん、名前はわからなかったけど、この前の階段の事はちゃんと言った」

それを聞いた斎藤さんが

「うん、栞ちゃんから電話があったよ」

「そうか……」

「大丈夫、私から栞ちゃんに連絡しておくから」

「うん、そうだな、それがいいんじゃないか」

何故か2人で納得していた


―SIDE栞

もう、せっかく斎藤さんが、萩原君と付き合う事になって、2人がかっくんのお友達になって佐々木さんから守ってくれるって言ってくれたのに、佐々木さんさえなんとかすれば、平和な生活を送れると思っていたら、今度は妖精?

困ったわ……


―SIDE忍

ちょっとどういう事?斎藤さんに彼氏ができたって聞いてたのに、3大天使のもう1人のJKに1年の妖精?

栞ちゃん、やっぱりあなた1人じゃ無理、私もそろそろ本格的にうごきださなきゃ


///////////////////////

「栞ちゃん」

「忍ちゃん?どうしたの?」

「最近だけどかっくんの周りが騒がしいみたいね、斎藤さんに彼氏ができてめでたしめでたし、って聞いたけど他にもいるの?」

「うん……」

「そう、ねえ、かっくんの塾って何曜日なの?」

「えっ? 月、水、金だけど」

「そう」

「えっ? 何?どうしたの?」

「うん、ちょっとね」

「何なの?」

「うん、ちょっと中高時代が懐かしくなって、久しぶりに高校に行ってみようかなって思って」

「……忍ちゃんの学校って……」

「うん」

「どうしたの?」

「隣駅は久我山よね」

「そうだっけ?〇寺駅の次だから、それより向こうは行った事ないからわかんな~い」

「うそ、だってその先には下北もあるし、終点は渋谷じゃない、行った事ないなんて嘘」

「そう?」

「何企んでるのよ」

「別に~」

「かっくんでしょ」

「何言ってるのかな~、それにかっくんと私は従姉どうしなんだから、栞ちゃんに色々言われる筋合いはないんだけどー?」

「だって、私、かっくんの許嫁なんだから」

「まだそんな事言ってるの?」

「だって、お嫁さんにしてくれるって……」

「はいはい、それを言うなら、私はかっくんのキスもおちんちんもぜーんぶ初めてをもらったし、私のファーストキスもささげたかっくんにとって初めての女性でーす」

「えっ?おちんちん?」

「そうよ、洗ってあげたり、にぎにぎしたりしてたし、そうそう、パクってした事もあったけど?」

「なによ、そんな卑猥な事、何やってるの!いつ?!どこで!?かっくんはそんな事されて・・・・・・」

すごい剣幕の栞に押されてしまい、思わず正直に

「……かっくんが幼稚園の時だけど……」

「なーんだ、幼稚園の時の話じゃない」

「そっちだって小学生の話じゃない」

「ねえ、何考えてるのよ」

「別に~」

栞がしつこく忍に問い詰めるけど、ヒラヒラ交わされ、何も聞けずイライラしている栞に向かって

「あら~、もうこんな時間、明日は早いから帰るわね~、おやすみ~」

栞はイライアが収まらず次の日は寝不足のまま学校に行くことになってしまった。

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