第50話皆ラノベが大好きなんですね
【皆ラノベが大好きなんですね】
新木さんがすごい勢いでまんが本を漁っている。
BL本2冊を手にして、あたりを見渡し、
「忍さん、これ、すごく面白いですよ、BLでも筋肉でもないんですけど、この“さいたま”ってすっごいチートで、S級ヒーローが弟子なんですけど……」
「そう?じゃあ読んでみようかしら」
「ぜひ!」本当に2人は仲良しになっている
そんな俺も色々見ながら、その後に栞がついて回る
「栞も何か見る?」
「うん、ついでだから、私もかっくんの部屋にあったラノベのコミック本でも買おうかなって」
「そっか」
「うん、かっくんは?」
「うん、別にここじゃなくても良いんだけど、『世界をリビルト』のコミックで出ているからここで買おうかな」
「いつのまにか、皆ラノベにはまってるのね」
「うん」
「楽しい?」
「うん」
「よかった」
4人がそれぞれコミック本を買って、ブロードウェイを出てアーケード街をちょっと外れると、結構おしゃれなご飯屋さんやカフェが多く、皆でそこに入って一休みしようという事になった。
///////////////
「あの、さっき忍さんが、幼馴染さんは『柴田栞、栞でいいわ』ハイ、栞さんの許嫁役が、斎藤さん対策って言ったましたよね?」
「あれ? そうだっけ?」
「はい、そう言ってました。でも斎藤先輩って彼氏がいるじゃないですか、それがどうして斎藤先輩対策なんですか?」
「えーっと」栞が困って言葉につまっているけど、新木さんはそのまま話し出して
「本当にラノベのリアル設定なんですか?」
全部説明するとややこしくなるから、新木さんには勘違いしたままでいてくれると助かると思って
「まあ、そんな感じだよ」
「……本当はラノベと関係ないんじゃあ……」
「まあ、そのー」うっ、やっぱりそんな事ばれるよ……
「忍さんは高木先輩の彼女で栞さんは許嫁ですよね、斎藤先輩対策?何かおかしいですね」
「まあ、いいじゃない、色々事情があるのよ、それに、斎藤さんは萩原君と付き合ってるの、かっくんとはお友達よ」
「う~ん、なにかありそうですね……えっ?まさか……斎藤先輩も高木先輩のあれで、飽きたから萩原先輩に押し付けて……、高木先輩は陰ではやばい男で、女を食い者にして、従姉や幼馴染を奴隷のようにして……屑……」
新木さんが一人ブツブツ。
えっ?俺が女を食い者に?栞や忍を奴隷?屑?何もしてぞ、なんで……だんだんやばそうな雰囲気になってきたところを栞が
「新木さん?」
ビクッ
「な、な、なんですか」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
「そう?」
「何か勘違いしているみたいだけど、私達にも色々事情があるの、かっくんと斎藤さんはなにもなかったし、2人は昔から両片思いだったから、それで今は、ちゃんと付き合っているの。かっくんは見たままの陰キャのボッチ、あなたが想像しているような事がないから。だから、このまま放っておいてね」
「はあ」
(そうなんだ、見たままの陰キャのボッチ……という事は最初に印象どおりの良い人で実はイケメンだけど、忍さんや栞さんが高木先輩の正体を隠している、そういう事?やっぱり明日部室に行って、直接斎藤先輩に聞いてみた方が良いかも)
「わかりました、栞さんの言う事を信じます」
「そう、わかってくれて助かるわ」
「いえ、どういたしまして」
(さっきのままだったら俺は最低男になるところだったよ、栞、ありがとう)
「ところで、新木さんって最初に印象と全然違うけどどっちが本当の新木さんなの?」
「最初の印象ってどんな感じですか?」
「うん、最初は清楚でおとなしそうで、周りが言うように『妖精』って感じだったけど、ラノベの話とか、忍ちゃんと話している時のBLにマッチョの話とか、ブロードウェイの本屋さんの時とか、全然違うんだもの」
「そうですね? 今のこれがほんとうの私です。皆、私の事を『妖精』とか言って、勝手にイメージしているんですけど、全然そんな事なくって、興味を持ったら、のめり込んじゃって周りが見えなくなって暴走するらしいんです。知らない人がそれを見たら思いっきり引かれる事も多くって、中学の仲の良い友達は皆、それを知っているから、『残念瞳』なんて言われてたんですよ」
「そっか、『残念瞳』ね~、確かに。第一印象は清楚でおとなしくてかわいいのに、実際は、って感じよね」
「そうはっきり言われるとちょっと落ち込みますけど、でも、高校生になってイメチェンしようと思ったんです。そうしたら『妖精』って呼ばれるようになって、勝手に私の事をイメージして、それはそれで困っていたんですけど、高木先輩に階段で助けられて、それから高木先輩に興味を持って、同じ部に入ったら、どっぷりはまっちゃって、以前の素の私に戻っちゃって……やっぱりそう簡単にはイメチェンできないな~って思っていたんです」
「なるほどね、高校デビューに成功したけど、根っこは変わらないって事ね」
「はい、そうなんです」
「でも、自分を偽るよりその方がいいんじゃないの?クラスにいるより今の方が楽でしょ?」
「はい、部室にいる時の方が気分が落ち着くって言うか、とっても楽ちんです。それでラノベにはまっちゃって、コミックも読むようになっちゃって、でもそれが楽しくって、それで、最近はラノベを書いてみようかなって色々準備していたら、忍さんが恋人で、栞さんが許嫁、斎藤先輩対策の話があって、でも斎藤先輩には恋人がいて、高木先輩は陰キャでボッチだけど実はイケメンでやさしいって、ラノベのまんまじゃないですか、それってラノベの中の役作りかなって、だから皆もラノベを書いているのかな?って思たんですけど……」
2人のやり取りを聞いた、俺は
「まあ、そんな感じでいいんじゃないか? ねえラブコメ書くの?」
「そんな感じって……はい書こうかなって思ってます」
「それ、いいかも」
忍も話に乗って来て身を乗り出しながら聞いている
「うん、応援するわ、じゃあ、私たちの事、題材にしてみたら?」
「そうなんですよ」
「そっか、それじゃあ、ハッピーエンドで私がかっくんと結ばれるって話にしてね♡」
あわてて忍が
「あのね、黙って聞いていれば、栞ちゃん!なんで栞ちゃんがかっくんと結ばれてハッピーエンドなのよ!バッドエンドじゃない!」
「えーっ?ハッピーエンドじゃない」
「瞳ちゃん、あのね、かっくんは恋人の私と結ばれるの、だからラブコメも私とかっくんが結ばれてハッピーエンド」
「ちょっと、何言ってるの、私と瞳ちゃんが話していたのに、勝手に割り込んできておいて」
あー始まった、また2人、こんな場所でそんなに騒いだら迷惑だろう
「栞、忍、そんなに騒いだら、周りに迷惑だよ」
「「あっ」」
最初は新木さんと栞が話していた所に忍が参加して、それがいつの間にか栞と忍のじゃれあいに変わっているのを見ていた新木さんが俺に向かって
「高木先輩」
「何?」
「贅沢です」
「ん?」
「陰キャでボッチで鈍感ニブチン野郎の高木先輩に忍さんと栞さんはもったいないです」
「ああ、わかってるよ、2人は俺じゃなくて、もっとふさわしい人と一緒にいるべきだって」
「はあ~、ほんと鈍感ニブチン野郎ですね、どうしょうもないです」
「いや~その~」
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