第26話「座薬」


父「50歳でお尻が痛くなっても、いつものだと思って、お尻を揉んで、指でおせば1週間で治ると思っていた」


娘「それが治らなかったの?」

父「1ヶ月たっても、2ヶ月たっても治らなかった。やばいかなと思って、初めて座薬の痔の薬を買ったよ」

娘「座薬って、あの入れるやつ!?」


父「入れたことあるか?」


娘「熱が出た時に入れた……」

父「俺も熱が出た時に何回か入れたんだけど、入れ方を忘れて、どうやって入れたらいいかわからなかった」

娘「押し込んだらいいんじゃないの?」


父「それが、ほら……痛くなってるし……」

娘「入れるのも痛かったの?」

父「塗り薬は塗ってたんだよ。薬を塗る時に指を入れて広げるように内側からも塗った方がいいんだけど、指を入れるなんて痛くてとてもでもない状態だった」

娘「それは座薬を入れるのは大変だね。塗り薬は指で塗ってたの? オロ○インの人みたいに……」


父「あいつと一緒にしないでくれ。薬もオロ○インじゃないし」


娘「ごめん、ごめん。有名な薬?」

父「最初は、通信販売の有名な薬を考えてカタログをもらったんだが、値段が高い! 使う量もすごいんだ。それでテレビのコマーシャルでやってる有名な薬にしようと思ったが、これもけっこう高い。それで、結局、有名じゃない安い薬になった」

娘「そんなに高いの?」

父「テレビで有名な薬と俺の買った薬では値段が倍違う」

娘「高い方が効くんじゃないの?」

父「それも考えたが、効く薬はそれだけ体にも負担がかかりそうで、あの薬ってほとんどにステロイドが入っているんだ。それで、安い薬の方が体に負担もないかと思ってな」


娘「そういうことか、軽いものならオロ○インの方がいいかもね?」


父「痛い状態になったら、ちゃんとした薬でないと。安い薬でも、流石専門の薬で少し麻酔のような効果があるようで痛みがやわらいだ」

娘「でも、座薬を買ったんでしょ」

父「塗り薬を使っても良くならなくて、同じ種類の座薬を買って、座薬と塗り薬の両方を使ってたよ。ドラッグストアで買うのが恥ずかしくて心臓ドキドキだった」


娘「男の人でも恥ずかしいの?」


父「すごく恥ずかしいよ。近所のドラッグストアでは買えないから、町中まで行って買ったが、レジが若い女の人で、しかも外国人だったんだ。普通、ああいう物は紙袋に入れてくれるんだけど、ポリ袋が有料化になった時でそのまま渡された」


娘「あれは紙袋に入れて欲しいね」


父「そうだよな。高校生の時にエッチな本が自動販売機で売っていたんだけど、それを買う時のドキドキみたいだった」

娘「エッチな本の自動販売機なんてあるんだ!?」

父「そういえば、今は見ないな。俺が高校生の時はけっこうあって夜中にコッソリ買っていた」


娘「コンビニで売ってるやつ?」

父「もっとできが悪かったかな、俺が高校生の頃は近所にコンビニなんかなかったしな」

娘「コンビニもなかったの? 何時代?」

父「昭和だよ。24時間やってるコンビニなんて信じられない時代で、自動販売機の24時間の店がけっこうあった」

娘「それ、テレビで見た。お蕎麦やうどんが出てくるやつ」

父「あれか、俺もよくそばをたべたな。生麺で旨かった」


娘「それで、お尻は良くなったの?」


父「お尻か……いゃ、良くはならなかった。悪くもならなかったが……指にポリ袋を被せて、その上から塗り薬をお尻に塗るんだ。そして、そのまま座薬も入れていた」

娘「あの、箱に入っているポリ袋?」

父「そう、50枚で100円くらいのやつ、最初の頃は座薬を上手く入れられなくて、よく床に落としてたよ」

娘「座薬は効いたの?」


父「どうなんだろう、現状維持だな。座薬は内痔に効くんじゃないか? 俺のは外痔だったからな……便秘気味の時に入れると便を柔らかくしてくれるから便利だな。二日も便が出なかったら、出口の便が固くなって出すと肛門が切れてしまい恐怖だった」


娘「導引は効かなかったの?」

父「導引は自分の部屋でテレビをみながら横になって右15分、左15分くらいお尻を揉んでいた。今、考えるとやり過ぎだな。横になってお尻をもんでも、肛門への指の角度も悪いしな……冬子は間違っても、そんな姿を彼氏に見られるなよ」


娘「それは、誰にも見せられない姿だね。いっぱいやればいいってものではないのね?」

父「適度だね、薬も飲み過ぎたらダメだろ、導引は歯を磨くように適度にやるのがいいんだ。歯も長い時間磨いていたら、かえっていたんでしまう。お尻も繊細だから力加減や時間にも気を付けないとな」

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