第40話「押し方」
娘「お尻を押すのって、どういう姿勢で押せばいいの?」
父「姿勢か、それは俺も試行錯誤して、やっと見つけたんだ。お尻って急所だろ、だから押すのは、実は難しいんだ」
娘「直接当たらないように守られているの?」
父「そう、大切な所は守られているね。犬でも危険があると尻尾を垂らして肛門は隠す。人間の体は血管や神経もむき出しじゃなくて、たいがいは骨に守られて骨の内側にあるし、肺や心臓は肋骨に守られている」
娘「首の血管はむき出しじゃない?」
父「首は本当の急所だね。ここをやられたらイチコロだ。ここを空手チョップで叩かれると効くらしい」
娘「昭和のヒーロー力○山ね!?」
父「そう、力○山の空手チョップは本当に効いたらしい。俺は、その時代じゃないけどな……」
娘「動物でも首を狙って噛むわよね」
父「首は急所の中の急所だろ、血圧や二酸化炭素なんかを調節するセンサーもあるらしい」
娘「へ〜〜っ、それで、お尻の押し方は?」
父「お尻か……あれは角度を正確にしないと効かない」
娘「角度ってなに?」
父「お尻の周りの筋肉、お尻を締める肛門括約筋、コイツに正確な角度で指で押すと活躍するんだ!」
娘「括約筋ね……」
父「お尻の押し方は、“指で押す”と書かれた物がいくつか有るが、それ以上詳しく書かれたものは知らない」
娘「昔の本って、けっこう大雑把じゃない? 現代みたいな挿し絵とかも少ないし」
父「その時代、時代で一生懸命に伝えようとしているのだろうけど、一人で文を書いて図も書いてでは両方上手とはなかなかいかないだろうね。江戸時代の押し方の文とかもあるらしいが、俺はもう読めない」
娘「せめて昭和?」
父「やっぱり、自分の育った時代の物は読めるけど、少し古くなると、もう難しい。それに時代が違うと文章を読んでもピンとこないんだ……」
娘「古ければ良いってもんでもないの?」
父「昔から伝わるやり方でも文章の中には抜けている部分がよくあるんだ。特に仙術は秘伝が多くて、わざと書いてない部分が多い」
娘「どんなところ?」
父「例えば、呼吸のしかたとか」
娘「書いてないの?」
父「書いてないよ。呼吸の分類とか基本的なことは書いてあるけど具体的には書かれていない」
娘「ふ〜〜ん、そんなものなの……」
父「実際に教わってから本を読むとなるほどとなるけど、何も知らない人が本を読んでやってみても難しいと思うよ」
娘「お父さんも本を読んで勉強してるの?」
父「俺もいまだに勉強の途中だよ。終わりはないだろうけどな。歳を取って実際に自分の体が不調になって、それをどうやったら治せるかを考えるんだけど、本に書かれているようにはなかなか上手くいかないね」
娘「やっぱり自分がならないとダメなの?」
父「なるべく自分がなって治し方を見つけるといいけど、そんな事をしていたら寿命がいくらあっても足りない。いろんな人が自分の治したやり方を公開して一つの本にすれば良い物ができるだろうが著作権とかあるから難しいだろうね」
娘「昔の方がそういうやり方を集めやすかったの?」
父「パソコンを上手く使えば、今は、昔とは比べ物にならない良いものができるだろうが、現状は昔からの有名な本を手本にしてるのが多い」
娘「昔からの物ってなかなか変えられないのかな?」
父「何か大きな事がないと難しいだろうな、今、外出する時にマスクしないとダメだろ?そんなの数年前なら考えられなかった」
娘「そうね、マスクしてる人は病気の人だったものね」
父「みんなどうすればいいのか、はっきりわからないから上が決めた事をするのだと思う」
娘「それじゃー、お父さんの考えたトイレットペーパーの使い方も国で普及させれば、皆んなやるんじゃない?」
父「そりゃー、そうだろうが……無理だろうな……でも、ある宗教ではお尻の手当てのしかたを教えているとは聞いたことはある」
娘「お父さんも宗教を起こすの?」
父「俺にそんな事ができるわけ無いだろ……」
娘「まぁ、そうだね……せめて出版が夢だね」
父「そうだな、本を出版して印税で老後を暮らしたい」
娘「無理とは言わないけど、ヒットさせるのは難しいんじゃないかな? 困っている人はいっぱいいるのに、なぜか、お尻については世間はタブーだもんね……」
父「そりゃ〜っ、人には言えないよ。特に女性は……俺も人には言わなかった。言い出したのは、これなら行けると確信を持ってからだ」
娘「それは、いつなの?」
父「あれは、俺が恐竜のテレビを見ていた時だ……」
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