第50話「直腸が膨らむ?」
父「肛門が切れて、便を出す時に出血するというのが続いた」
娘「ずっと出血していたの?」
父「5年間くらいかな? 毎回というわけじゃないが、トイレットペーパーでふいて、見ると、あ〜っ、また出血してるって感じだった。便にも赤いすじが付くんだ。まるで赤い糸のように……」
娘「その赤い糸は嫌だな。薬は塗っていたんでしょ?」
父「あぁ、塗っていた。安い市販のやつだが、出血すると塗っていたよ。肛門って放射状にヒダが有るから横に塗るとヒダに引っかかるから、放射状に塗るといいんだぞ。薬を塗る時に肛門の周りを指圧して、肛門の中に指を入れて外側に広げるようにもしていた」
娘「肛門を広げるの?」
父「そう、病院でもやるやり方みたいだよ、病院では麻酔を使ってやるみたいだけどね。肛門が切れる事が何回も続くと傷口が硬くなって開きずらくなるんだ。ひどい時は、痛くて指を入れるということが無理で、薬を塗ることもできなかった」
娘「肛門が開かないの?」
父「そうなんだ。何度も肛門が切れると傷口が硬くなるんだ、しかも、それが何箇所もあると、排便の時に上手く肛門が広がらなくなる。便が有るのに肛門が開かないから出せなくて、力を入れて便を出せば、また切れて出血だと思うとなかなか出せなかった。指一本も入れられないんだから便も出せないな……」
娘「自動車会社の寮に居た怖い人も30分くらいトイレに入っていたんでしょう?」
父「坂本さんか、あの人は長かった。あの人も便が出せなかったのかもね? 別に新聞とかは持ってなかったし……しかし、寮のトイレの個室は2つだから、30分も入っていられたら迷惑だった……」
娘「誰か文句は言わなかったの?」
父「そんな恐ろしいこと……誰も何も言わないよ。それは、地雷のある道を歩くようなものだからね……」
娘「指を入れて出すというのはやらなかったの?」
父「指か、指を入れて便を崩して出すのは、先端の便が硬くなってる便秘の時にやるようだけど、俺は指も入れられなかったが、普段は出せない事はないんだ、ただ出血が怖くてためらっていた。便秘が二日目になると便の先が硬くなって肛門が切れてしまうんだ。この硬い先をいかにして出血させないで出すかがポイントだ。硬い先が出ればあとはすんなり出るんだ」
娘「座薬を入れたら便が柔らかくなるんでしょ?」
父「そう、座薬の中に便を柔らかくする薬が入っているようだね。しかし、毎日座薬を入れるというのも嫌でなるべくは使わなかった」
娘「病院に行って便を柔らかくする薬をもらえばよかったのに……」
父「まあね……そういうのもあるが、あの頃は、まだ自分で何とかなると思って、トイレットペーパーで切れそうな所を押さえながらしていたよ」
娘「トイレットペーパーで押さえる? 何、それ」
父「何度も切れると、この辺が切れそうだとわかるので、そこをトイレットペーパーで押さえて切れないように出すんだ」
娘「どんな風にやるの? こうかな?」
冬子が股関を押さえて、いろんなかっこうをしている。
父「嫁入り前の娘がする格好じゃないな……」
娘「お父さんの前だけだよ!」
少し切れ気味の冬子。
父「……それで、トイレットペーパーで押さえながらしていたら奇妙な事に気がついたんだ」
娘「何?」
父「解剖図では、直腸は体の中を真っ直ぐ下に向かって肛門につながっているんだ。しかし、俺の直腸は肛門の右側にふくらんでいた」
娘「直腸が
父「そうなのか、俺の直腸も膨らんで横にでたのかな? 初めて触ったときは驚いたよ。『なんだ、こりゃ!!』ってね」
娘「それ、刑事ドラマのやつ?」
父「学校で流行って、よくやってた。背の高い痩せた刑事が銃で撃たれた時のセリフなんだけど、ナオちゃんも背が高くて痩せていたので、よく真似をして皆んなを笑わせていたよ」
娘「そんなことして遊んでたの……」
父「小学生の時はテレビの真似が多かった。昔はビデオが無かったから同じ時間で見るので話題になるんだ。それで、俺は、その膨らんだ直腸を触って閃いたんだ」
娘「何を?」
父「痔には内痔と外痔があるだろ、俺は外痔だったが、もし、膨らんだ直腸の外側に内痔があったら指で押せると」
娘「内痔も指圧で治るの?」
父「わからない。昔の本には肛門に指を入れて指圧で治した記録はあるが、直腸がんまで治したと書かれいるので、どこまで本当なのかはわからないな……」
娘「直腸がんまで指圧で治るの?」
父「古い本だから、どの程度のがんかもわからないし、指の届かない奥にあったので棒で押したと書かれている。信ぴょう性は疑わしいが、そのやり方は参考になるんだ」
娘「もし、本当に治るんなら凄いね」
父「話半分でも凄いけどね、それで、便を出す時に直腸が膨らんで触れるなら、直腸の中には便が入っているから、外側から指で押してやれば内痔が良くなる可能性はあると思うんだ!」
娘「直腸が触れるほど外側に出るというのは、あまりないと思うけど……」
父「そうか……俺だけなのか?」
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