第25話「オシッコが出ない」

 

父「50歳でお尻が痛くなった時、俺は、またすぐに治ると思っていた」

娘「それは治らなかったの?」


父「治らなくて、5年間も苦しんだ。だんだん良くなるならいいけれど、良くならなくて痛みがあるのは嫌なもんだ……」


娘「お父さん、頭痛とかもないの?」

父「たまに、ストレスでなることはあるが普段は無い。最近は腰とか膝とかも痛くなってきたが、基本、痛みは無い。導引でなんとかなる」

娘「丈夫なんだね」


父「体は普通だと思うよ。ただ導引で不調の治し方を知ってるからね……」


娘「おじいさんも痛みは無かったみたいよ」

父「親父は酒とタバコがひどかったから、よく元気だと感心してたよ」

娘「タバコは凄いね、ヒマになったら吸ってた」

父「昭和の時代はそういう人が多かったね。当たり前のように、どこでも吸っていた」

娘「お父さん吸わないね」

父「俺は酒もタバコもやらない、つまらない男さ……」


娘「パチンコが異様に好きでしょう!?」


父「……あれは、娯楽だ」

娘「最近はあんまり負けないみたいだけど勝ってるの?」

父「それは秘密……そういえば、一時期パチスロに夢中になった事があったんだ」

娘「パチスロもするの?」

父「今はしないけどね、北○の拳のパチスロが大ヒットした事があって、俺も夢中で打ってたことがあった、とにかく面白くて台が空いたら打っていた」


娘「今もあるんじゃない? 北○の拳のパチスロ」

父「シリーズ化してるんだパチスロもパチンコも、俺が夢中になったのは最初の北○の拳のパチスロだ」

娘「だいぶ負けたの?」


父「夢中で打ってたら……お母さんには言うなよ……××万円ほど負けた」


娘「!? ばっかじゃないの! 中古車が買えるよ!」

父「昔の話しだ……」

娘「ひど過ぎるね……」

父「今は大丈夫だよ」

娘「本当に?」


父「本当、本当、それで……パチスロを打っている時にオシッコが出なくなったんだ」


娘「なに、それ? 変な病気?」

父「変な病気ではないんだ、オシッコをしたいんだけど出せないんだ」

娘「病院行ったの?」

父「いや、行かなかった」

娘「オシッコを出せないと○んじゃうんじゃないの?」

父「まぁ、そうだけどね」

娘「で、どうしたね?」


父「立ってオシッコをしようとしても出せないんだけど、和式のトイレでしゃがんですると出せることに気が付いたんだ」


娘「男の人ってそうなの?」

父「たぶん、前立腺が腫れて尿道を圧迫したんじゃないかな?」

娘「それは大変だと思うけど……命にかかわるよ」

父「大変だよ、普通はね」

娘「治し方を知ってたの?」


父「いや、知らない。でも、原因はパチスロの椅子じゃないかと思ったんだ」


娘「椅子が原因? どういうこと?」

父「冬子はパチスロをやったことはあるか?」

娘「何回かやったよ」

父「椅子は高くなかったか?」

娘「どうだろ、覚えてない」


父「そうか……俺の打っていた店は薄暗くて椅子が高いスナックやバーにあるようなやつだった。あるだろ足が床に付かない高い椅子」


娘「なんとなくわかる。椅子の途中に足を置く金具があるやつ?」

父「そうだな、たぶんそんな感じだ。それで、俺は、椅子の角にふとももがくい込んでるのに気が付いた!」

娘「それが原因!?」

父「そうだと思う。調べたら左のふとももの奥にひどく痛む所があることに気が付いた」

娘「血管かな?」

父「詳しくはわからないけど前立腺につながる何かじゃないかな? そこをよくもんだらオシッコも徐々に出るようになったんだ」

娘「へ〜〜っ、そういうものなの?」

父「太ももを揉む行があるだろ、あれだよ」

娘「太ももを揉んでからなでるやつ? あったね、あれは何に効くんだったかな?」

父「太ももから心臓までの間だな……(本当は性器だけど)」


娘「椅子の角で血管がつぶされて血液の流れが悪くなり前立腺が腫れてオシッコが出なくなった、という事?」


父「まあ、そうだね……」

娘「それで××万円も負けたと?」

父「そうだね……でもこれが、今まで治し方がわからなかったお尻の痛みを治すヒントになったんだ」

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