第31話「尾てい骨」
娘「お父さんの小学生の時の先生って、怖いんだね」
父「あの先生は怖い人ではないんだ。生徒達を自宅に呼んで、自分で作った食事をご馳走してくれたし、生徒と遊んだりしていた。しかし、ちょっとやり過ぎるところはあった。逆に言うと実は生徒に対して熱心だったように思う」
娘「でも、手をだすのはまずいでしょう?」
父「そうだな、母親の目の前でやるのはまずいな〜、不登校の奴も持ち上げられて木の床にお尻から落ちたからな、尾てい骨が曲ったら大変だ」
娘「尾てい骨って曲がるの?」
父「小さい骨が組み合わさっているので尻もちをついたりしたら、組み合わせの部分が曲がるらしい。尾てい骨が曲がっている人は、カラーの夢を見るって言うぞ」
娘「夢ってカラー? 色ついてたっけ?」
父「普通は白黒だろ、でもカラーで見ると言ってた奴はいた。たぶん、尾てい骨が曲がっているんじゃないかな? 俺も小学生の時は、冬にスケートをよくやっていたから尻もちは多かった」
娘「カラーの夢の方が面白いんじゃない?」
父「カラーの夢はわからんが、尾てい骨が曲がるのはまずいんだ」
娘「なにかあるの? 真っ直ぐ歩けなくなるとか」
父「尾てい骨の内側に血管と神経が走っているんだ。もし、尾てい骨が曲がって、この血管や神経を圧迫したらどうなると思う?」
娘「尾てい骨の血管と神経……たぶん、肛門と膀胱につながっているんじゃない?」
父「そうだ。よく勉強してるな、偉いぞ!」
娘「へへへへっ……」
父親に褒められて、少し嬉しい冬子。
父「尻もちをついてから10年くらいして症状がでることもあるらしい」
娘「どんな症状?」
父「詳しくはわからないが、感覚が悪くなって漏らしたりするようになるみたいだ」
娘「漏らすってオシッコ?」
父「大と小、両方あるみたいだね」
娘「それは困るね。でも原因がわかっているなら手術で治したりできるんじゃないの?」
父「病院では原因不明になるんじゃないかな? 骨の異常はレントゲンですぐわかるけど、血管の異常を見るには造影剤を入れないと見えない。神経の異常は分からないんじゃないかな?」
娘「それは大変じゃない、導引には尾てい骨を治す技はないの?」
父「それは、あるんだが、できる人にやってもらわなければならないし、だいたいやってくれないだろうな……」
娘「お父さん、やり方知ってるの?」
父「1度やってもらったことがある」
娘「どうやるの?」
父「四つんばいになって……指を……」
娘「指を入れて……?」
父「これは、秘中の秘でやり方が難しいんだ、俺もできない。ただ、少しづつ何回もやるようだ。俺はスケートで何度も尻もちをついたので見てもらったが、症状は無かったので1回だけやってもらった」
娘「治せるんなら、やって欲しい人は多いんじゃないかな?」
父「症状が出てからやっても、その時は血管や神経が傷んでいるから治るかどうかはわからんぞ。あの不登校の奴も症状が出てなければいいが……」
娘「お父さんも、その先生に怒られたことはあったの?」
父「俺もあった……階段の手すりに野球のグローブを乗せてその上に尻を乗せて滑り落ちる遊びをしてたら、担任の先生ではないんだが、新しく赴任してきた男の先生に注意されて、グローブを顔に投げつけられた」
娘「それも怖いね、今なら問題になるよ」
父「それには、まだ続きがあって、よく朝、クラスの朝礼で担任の先生が俺に昨日あったことを皆んなの前で話せと言うんだ」
娘「顔にグローブを投げつけられたことを?」
父「そうなんだ、俺は、あの先生は怖いから注意するように皆んなにいったら、担任の先生は怒りだして『廊下に立ってろ!』と言われて1時間、廊下に立っていたよ」
娘「やっぱり怖い先生だね。あたし廊下に立たされている人なんて見たことないよ」
父「俺の小学生の時は教室の中に立たせておくのはあった。教室の後に立たされてオシッコを漏らした女の子もいたよ」
娘「ひどいね、女の子は可愛そうだ」
父「小学6年生の時だ、綺麗な女の子だったな……他にも水泳の授業で女子の着替を覗いて殴られた奴とか、女子にからんでイジメていた奴も殴られていた」
娘「そういう先生がいたほうが、イジメ問題とかは無くなるのかな?」
父「たぶん、小学生はそれくらいやらないといけないのかもしれないけど、今、そんなことをしたら先生が問題になるよ」
娘「その、お父さんの担任の先生は問題にならなかったの?」
父「いゃ、職員会議で問題になったらしくて、俺の家にも担任の先生が謝りに来て、お袋に謝ったらしい。たぶん、他の家にもいっぱい行ったんだろう……俺らが小学校を卒業したら転勤で別の小学校に行ったようだ」
娘「生徒を殴ったことで左遷された?」
父「そうかもしれないが、小学校の先生は元々6年間で別の学校に移動するらしいんだ」
娘「へ〜〜っ、小学校の先生って移動するんだ」
父「それと、小学校の先生は先生がたの朝礼で昨日何か問題を起こした先生は、その事を皆んなの前で言わなければならないというのがあるんだ」
娘「それ、お父さんがやられたやつ!?」
父「そう、先生がたのやり方を生徒にもやらせたんだ。ずいぶん後になって分かったけどね」
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